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譲世界充満吉利(世界を吉利で埋め尽くせ)【ハイライト編】

(画像はスウェーデンのヨーテボリに新設される吉利のデザインセンター外観)

こんにちは!Silasです。
はじめてnoteを書きます📝
よろしくお願いします!

これまで個人的なメモの延長としてTwitterを利用してきましたが、ツイート数が増えるにつれ、情報を整理する必要性を強く感じるようになってきました。そうした背景があり、過去のツイート内容をnoteにまとめることにしました。

そのため、以下の内容はあくまでも私の個人的なメモの域を出ない代物であり、私の理解が間違っている部分もあるかもしれません。また、未検証の仮説にすぎない部分も多く、今後様々な事実が明らかになるにつれて、内容が否定されていくこともあると思います。
上記の点については十分ご留意の上、あくまで参考までにご参照くださいね。

【凡例】

◆noteの構成について
現時点での構想ですが、書きたいことが多すぎてひとつのnoteでは字数が多くなりすぎるため、いくつかのテーマごとにnoteを作成したいと考えています(完成はいつになるか分かりませんが…)。

現時点で考えているのは…
【ハイライト編】:会社の動き、ニュースなどのまとめ情報
【外部環境編】:EV市場を取り巻く環境や競合状況のまとめ
【データ編】:販売実績や決算情報(Annual Report)のまとめ
【考察編】:総合的な企業の戦略についての仮説・考察のまとめ
などなど。

どこまで noteを公開するかは未定です。
とりあえず、今回はそのうちの【ハイライト編】ということで、最近の会社の動きやニュースについて、簡単にまとめておきたいと思います。

◆リンク情報について
私自身が後から検証したり確認したりするために、ツイートや各種サイトへのリンクを数多く貼っております。
その都度リンク先に飛んでしまうと、情報が錯綜して全体感が見えにくくなる可能性がありますので、まずはこのnoteの内容を一通りご覧いただいた後に、各リンク先に飛んでいただくことを強くオススメします!

◆会社名の表記について
吉利グループは資本関係が複雑で、親会社が直接支配するグループ会社や、その他資本関係のある会社(孫会社、出資会社、JV等)、さらに李書福会長が個人的に出資する会社もあり、実質的な関係会社は非常に多岐に渡ります。

ここでその点を詳細に論じることは避けたいと思いますが、基本的な記載ルールとして、グループ全体を指す場合は「吉利グループ」と表記し、親会社の浙江吉利控股集団を指す場合は「吉利」と表記し、それ以外の会社を指す場合は個別の会社名で表記します。
基本的に親会社である「吉利」を中心に話を進めることが多いと思います。

【参考】吉利のグループストラクチャー
(※ここに未記載の関係会社も数多くあります)

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それではまず、最近の吉利グループの動きを中心に見ていきたいと思います。

1.グループ再編と今後の方向性

2021年2月20日に吉利の李書福会長が社内向けの声明(”Blue Geely Initiative”(藍色吉利行動))を発表しました。

最近の活発な動きもそうですが、この声明発表は、吉利グループの歴史において画期をなす象徴的な出来事だと私は感じています。


この声明についてはakさんが全文のDeepL翻訳をnoteで共有されています。
とても助かります!

この声明は文字数が1万字を超えており、この紹介だけでもひとつの記事ができてしまいそうですので、ここでは一旦軽く触れる程度にとどめたいと思います。

さしあたり、一点だけ。
私が読んでまず感じたのは、近年台頭しつつある新興EV勢力(テスラ、NIO等)を強く意識した内容だな、というところですね。
こちらについては、また機会があればツイートしてみたいと思います。
書くとしたら【外部環境編】になると思います。

さて、この声明の内容のうち特に注目したいのは、以下の2つの大きな方向性です。

① 自動車販売の90%をハイブリッド車(PHEV、HEV)とすること
② 上記とは別に新たなEVブランド(新会社)を立ち上げること


✔ 新EV会社の設立
特に、上記②については、従来の業界の慣例とは一線を画し、EVの製品計画、マーケティング、販売において全く新たなモデルを提示するという方向性が示されています。

先ほど李書福会長が新興EV勢力(テスラ、NIO等)を強く意識していると書きましたが、吉利がこのまま既存の自動車と同じプロデュースや販売方法を続けていては新興勢力に太刀打ちできない、そういう危機感が働いているように見受けられます。

新設される会社の名前は、
「リンリン・テクノロジーズ(Lingling Technologies)」

この新設会社がどのような事業を展開するのか、その詳細はまだ不明ですが、開発・生産拠点は安徽省合肥に置くことになりそうです。
ちなみに、吉利は2020年9月に安徽省政府と自動車の電動化、スマート化などで協力する旨の戦略的提携関係を結んでいますので、その流れに乗った動きですね。

おそらく、この新会社は吉利がボルボと共同で展開する高級車ブランド「Lynk & Co」や「Polestar」、吉利のオリジナルEVブランド「幾何 (Geometry)」を取り扱うことになるのではないかと考えられます(下画像はPolestar)。

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その中でも、"Lynk&Co ゼロコンセプト"は今年の目玉のひとつ(タイトル画像はその内装部分です)。

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このゼロコンセプトは、吉利が巨額の投資と数年の歳月を費やして完成させた最新プラットフォームSEA(Sustainable Experience Architecture)を初めて採用する高級EVとして、大きな注目を集めるはずです。

SEA(Sustainable Experience Architecture)
この車台が今後、自社ブランド・受託生産の両面においてフル稼働することになると思います。

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もちろん自動車単体としての売れ行きにも期待したいところですが、さらに、後ほど説明する受託生産の観点からも、最新プラットフォームの性能を市場にアピールする絶好の機会となるでしょう。

✔ 吉利汽車とボルボカーズの事業合併
今年の最重要事項として控えていたのが、昨年から予定されていた吉利汽車とボルボカーズの合併でした。
もともと吉利汽車は2020年2月に、ボルボカーズとの合併に向けた初歩的な検討に入ったと表明していました。

しかし、1年後の2021年2月24日に発表された最新の情報によると、当初予定されていた合併ではなく、それぞれの独立性を維持したまま、協業関係をさらに深めていく方向性(事業合併)のようです。

具体的には、電動化や自動運転技術に関する協力関係の強化部品等の共同調達を通じたコスト削減などが予定されています。

注目したい動きとしては、ボルボカーズが進めている次世代型プラットフォームのモジュラー・アーキテクチャー「SPA 2」の開発や、これを基盤にした新たなプラットフォームの開発ですね。
先ほど挙げた吉利の「SEA(Sustainable Experience Architecture)」とこの「SPA 2」の知見・ノウハウを共有することにより、ハードウェアとソフトウェアの開発速度と効率を高めることで、今後も革新的なプラットフォームの開発が可能になるのでは、と期待できます。

また、ボルボカーズは2022年にルミナーのLiDARを搭載した次世代車を投入予定で、一部条件付きではありますが、高速道路の完全な自動運転を可能にする「ハイウェイ・パイロット機能」が有効になると言われています。


さらに、自動運転技術に関しては、ボルボ子会社の自動運転ソフトウエア開発企業「Zenseact(ゼンスアクト)」の主導で、開発が進められるとのことです。


個人的に気になるのは、この事業合併の案件と、先ほど紹介した新設子会社(リンリン・テクノロジーズ(Lingling Technologies))がどのように関係してくるのかという点です。
ただ、吉利汽車とボルボカーズの協業深化による効果が、この新設子会社のプレゼンスや業績に反映されてくることは間違いないでしょう。
この点は今後も注目しておきたいですね。


✔ パワートレイン事業の新規子会社設立
また、上記に加えて、パワートレイン事業の新規子会社設立も予定されていると発表されています。
このパワートレインについては、吉利とボルボカーズがそれぞれ製品を提供しあうほか、新たな製品の開発も共同で行う方針とのことです。
設立される新会社は2021年内に操業を開始し、他の自動車メーカー向けにも製品を供給する予定と公表されています。
これは、吉利汽車のハイブリッド車(PHEV、HEV)の競争力向上に資するほか、他の自動車メーカーへの製品供給による収益化も期待できます。


✔ 上海「科創板」への重複上場
また、吉利汽車とボルボカーズの組織再編に関連した動きとして、上海科創板(上海のハイテク・スタートアップ企業向科創板け市場)への上場に向けた動向も気になるところ。
当初は吉利汽車とボルボカーズの合併に伴う事業資金として、この調達資金を活用するとも言われていました。
すでに上場については2020年9月に上海証券取引所の承認を得ており、組織再編の方向性も示されましたので、上海「科創板」への上場案件の動きも加速するのではないか、と思われます。


2.EV受託生産への大きな方針転換

上述の新会社設立とほぼ時を同じくして、吉利はEV事業を巡って大幅な戦略の見直しを行う方針を固めています。
それが、自社でのNEV研究開発を大幅に見直し、他社ブランドの受託生産事業に注力するというものです。

これは、李書福会長が他の経営陣の懸念を押し切る形で断行した方針と言われていて、今後の吉利グループの命運を左右するとても重要な方針転換だと思います。

ただ、受託生産がどの程度の規模になるのかについては現段階では不透明で、具体的な数値目標も示されていません。
これは私の推測ですが、EV新会社「リンリン・テクノロジーズ(Lingling Technologies)」は、この受託生産事業も担うことになるのではないか、さらに言えば、事業の主軸はこちらの受託生産事業になるのではないかと私は考えています。

今回示された大きな方針転換を考える上で、特に重要な最近の動きは以下の2つかと思います。

✔️ 百度(Baidu)との戦略提携(2021年1月)
吉利は、中国インターネット検索最大手の百度と戦略提携し、自動運転技術を搭載した電気自動車(EV)の製造販売に乗り出す方針を打ち出しました。
この提携に基づき、両社は共同で電動スマートカー会社を設立することになります。
百度ブランドのEVを吉利が製造することになります。
この提携は超弩級のビッグニュースであり、すでに大きな話題になっていますので、あらためて詳細をここで説明する必要はないかと思います。

なお、この新会社が製造するスマートカーには、先ほど紹介したSEAプラットフォームが使用されることが決まっています。

ちなみに、吉利と百度の提携については、アキさんが詳細に論じられていて、とても多くの学びを得られる内容です。
百度と吉利に興味がある方には大変オススメです!


また、百度の"アポロ計画"については、yuさんのブログで分かりやすくまとめていただいており、とても参考になりました。


✔️ 台湾のフォックスコン(Foxconn)との提携(2021年1月)
これまたとても重要な提携です。
吉利とフォックスコンが合弁企業(JV)を設立し、世界的な自動車関連企業に製造及びコンサルティングサービスを提供する方針を打ち出しました。
受託生産の拡大に向けた大きな布石ですね。


また、すでに米ファラデー・フューチャーのEVを受託生産も決まっているようです。

なお、フォックスコンは上記以外にもEV生産の受託提携を発表しています。

・中国バイトンのEV量産で提携

・米新興フィスカーのEVを2023年に量産へ


また、フォックスコンはアップルの主要サプライヤーでもあるため、今後、アップル向けに自動車を生産する受託製造企業として、吉利との合弁企業が有力候補となる可能性は十分にあると思います。
さらに言えば、そもそも吉利とフォックスコンの今回の提携は、このアップル向けの受託生産を狙いとしたもののようにすら見受けられます。

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こうした受託生産についてはいくつかのメリットが考えられますが、直接的なメリットとしては、工場の稼働率を上げられることでしょう。
吉利は現在、20以上の国内生産拠点を持ち、年間の生産能力は約300万台です。
2020年の生産台数は132万台ですので、稼働率としては50%を切っています。この稼働率を上げられれば、利益率向上にも寄与するでしょう。
その他のメリットについては、別途、【考察編】にて詳細に書いてみたいと考えています。

3.加速するテクノロジー投資

吉利グループのテクノロジー投資については、私が特に重要だと考えるものだけでも相当数多く挙げることができます。

最近はニュースが特に多く、情報整理の必要性を感じていました。


✔ フィンテック事業(サクソバンク買収)(2018年9月)
フィンテック事業で有名なデンマークのサクソバンクは、2018年9月に吉利傘下となっています。
2020年にはデンマークの銀行5行との間で技術サービス契約を締結し、電子取引プラットフォームを提供するオランダのBinckBankとの事業統合に向けても提携を結んでいます。
また、2020年4月には吉利とサクソバンクの合弁会社が重慶市に設立されています。
この合弁会社はサクソバンクのフィンテック事業をベースとして、金融クラウドサービス、ビッグデータ、人工知能(AI)などの最先端技術を活用し、最テクノロジーソリューションを提供する予定とのことです。


✔ 衛星打ち上げ事業
(2020年3月)
「吉利衛星プロジェクト」は吉利グループが推進する宇宙事業です。
吉利は「低軌道衛星」を自ら打ち上げ、自動運転・コネクテッドカーに必要な高速通信網を整備する方針を掲げています。
直近では、2021年2月に吉利グループ企業の「吉利科技」が衛星製造ライセンスを取得(中国では2社目)して、10月に生産を開始予定です。
年間500機以上の衛星を生産する計画ということです。

吉利の宇宙事業については書きたいことが山ほどありますが、まずはアドホックさんのツイートにあるように、低軌道人工衛星を活用することにより、"Mobility ecosystem"を構築するのが吉利の狙いだと考えられます。

さらに、衛星から収集したデータに基づくオープンAIプラットフォーム「OmniCloud」構想が掲げられています。
こちらも要注目です。

なお、吉利の宇宙事業については、以下のツイートもご参照ください。
(イーロン・マスクの"スペースX"との簡単な比較をしています。)
宇宙事業については、【外部環境編】でテスラとの比較について書いてみたいですね。


アドホックさんのとても魅力的で示唆に富む分析は必見です!
低軌道人工衛星のデータによる「高精度定位サービス」とオープンAIプラットフォーム「OmniCloud」による「自動運転支援サービス」の提供
この方向性は、今後の吉利グループを考える上で非常に重要な点だと考えています。
この点については【考察編】でも詳細に触れたいと思います。


ちなみに小ネタですが、吉利グループの天文チームが新発見した小惑星の名前を冠した自動車もあったりしますよ。頑張ります!宇宙まで!!


✔ 英半導体アームとスマートカー半導体チップ合弁会社設立
(2020年10月)
吉利と英アームは2020年10月に合弁会社を中国の武漢に設置しています。
この合弁会社は、自動運転やスマートコックピットなどの分野の半導体について、長期間にわたるR&Dと量産の計画を固めています。
この車載半導体は、吉利汽車やボルボカーズ、そして新設される「リンリン」に優先的に供給されることは間違いないでしょう。

車載半導体は自動運転車の性能を左右する極めて重要なデバイスです。


個人的には、華為の「Harmony (鴻蒙)OS」(コントロールOS)が搭載された自動運転車が導入されると大きな脅威になると考えています。

と思っていたら、早速参入のニュースが入ってきました!
EV業界は本当に恐ろしいレッドオーシャンと化しています…。
このあたりの競合他社の動きは【外部環境編】で記載したいと思います。


✔ テンセントとスマートーカーや自動運転技術で提携(2021年1月)
これもビッグニュース!
両社はスマートコックピットや自動運転、マーケティングを始めとする事業のデジタル化及び低炭素化の推進などにおいて全面的に提携していく方針。
そして、両社の巨大なエコシステムを融合させ、車載コンテンツとサービスエコシステムを構築し、あらゆる場面でユーザー目線に立った体験を提供することを目指すとのことです。

なお、吉利とテンセントは、2018年にも高速列車のWi-Fiプラットフォーム構築へ向けた戦略提携を結んでいます。


✔ 重慶市にAI関連技術の合弁会社を設立
(2021年1月)
合弁会社はブロックチェーン・テクノロジー関連ソフトウェアの開発・販売などを手掛ける予定です。


✔ 蘇州に自動運転のグローバル研究開発センターを設立
(2021年2月)
吉利汽車と吉利グループ企業「ECARX」が江蘇省蘇州市に合弁会社を設立し、インテリジェントドライビングシステム、自動運転タクシー用車両及びそのシステム、クラウドプラットフォーム、データセンターなど、自動運転分野の製品・システムを提供する予定です。


✔ スイスのConcordiumとのブロックチェーン合弁事業(2021年2月)
この合弁事業は、自動車業界を含むすべての業界に向けて、ブロックチェーンプラットフォームをベースとした新しいビジネスモデルやアプリケーションへのアクセスを提供する予定です。
吉利は、中国におけるブロックチェーン技術とサービスのリーディングプロバイダーになることも見据えています。
ブロックチェーン技術は次世代モビリティには不可欠な技術と言われていますので、この分野でも吉利は自ら開発を進めていくということですね。


✔ スマートエコシステム "Geely Smart Ecosystem(GKUI)"
このGKUIの開発は、吉利グループのテクノロジー企業である「ECARX(億咖通科技)」が担当しています。

以下、GKUIの概要です。

GKUIは、インフォテインメント、コネクティビティ、車両管理をひとつのスマートな車載システムに統合した革新的なデジタルコックピットシステムです。
業界で最もオープンなアプリケーションエコシステムの作成を目指して、AlibabaのAutoNaviナビゲーション、iFlytekの音声認識、5GネットワークへのZTE接続、Ximalaya Radio、Tencentソーシャルネットワーク、JD Smart Home、高速データクエリ、Guahao WeDoctor医療サポート、Babytree児童教育、及びその他の革新的なアプリをサポートしています。

GKUIをめぐっては、百度との関係性が特に重要だと思います。
吉利と百度は、2019年7月に自動車やモビリティ分野での人工知能(AI)技術応用で戦略提携を結んでおり、百度のAIロボット「小度」を融合したGKUIの搭載車を全面的に打ち出していく方針を掲げていました。

そして、2021年1月に発表された吉利と百度の合弁会社設立により、この提携関係はさらに強化されることになります。


GKUIについては以下のサイトも参考になります。

・GKUIに参画する企業群

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ちなみに、GKUIを開発するECARXは、昨年12月に本社をスウェーデンのヨーテボリに置くことを発表しています。

ECARXは、蘇州での自動運転のグローバル研究開発センター設立においても、吉利汽車とともに参画しています。

なお、ECARXの開発するGKUIについては、【考察編】であらためてテック企業との提携を中心に解説したいと思います。


4.ハイブリッド部門の動き

ここ最近はEVばかりが注目されがちですが、ハイブリッド車の動向も非常に大切です。
短・中期的にはハイブリッド車の販売動向が業績に直接反映される部分が圧倒的に大きいため、むしろこちらの方が重要と言えるかもしれません。


また、今後の自動車市場においては、EVだけが伸びていくわけではなく、PHVやHVも大きく伸びていくことが想定されます。
以下は日経新聞(2021年2月26日)の記事からの抜粋ですが、上記の傾向が視覚的によく分かる内容ですね。

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さらに、世界の国や地域ごとに見ても電動化のトレンドは異なります。
例えば、近年欧州メーカーはMHEVに注力している傾向にあり、吉利汽車でもその動きに追随すべく、既存モデルのマイルドハイブリッドバージョンを搭載するなど、世界各国・各地域に合わせた戦略を採っています。


✔ ハイブリッドエンジンの研究開発

2020年12月に、吉利汽車が次世代ハイブリッドエンジンの研究開発に取り組んでいることが報道されていました。これが完成すれば、現在市場に出回っているすべての製品を熱効率で上回るという内容でした。
この新エンジンについては、上海「科創板」への上場に向けた目論見書の中でも言及されています。
熱効率45%以上の高効率均質超薄型燃焼エンジンで、今後開発される新車種に搭載される予定です。


✔ ダイムラーとの共同開発
これも重要なニュースですね。
2018年に吉利がダイムラーの筆頭株主になったことは有名は話ですね。
当初は交渉を持ち掛けても相手にされなかったダイムラーに対し、吉利の李書福会長は、香港の複数のペーパーカンパニー、デリバティブ、銀行融資、株式オプション等を駆使することにより、秘密裏に株式の購入を進めたと言われています。
この辺りの実行力は、並大抵のものではありません。

そんなダイムラーとの提携ですが、2020年11月に、次世代ハイブリッド車向けのガソリンエンジンを共同開発すると発表しています。
共同開発によりコスト競争力を高め、それを吉利の車両だけでなくボルボの自動車にも活用することで、大きなシナジーを発揮できると考えられます。


✔ 吉利とボルボの協業深化による開発力向上
上述しましたが、両社が共同でパワートレイン事業の新規子会社を設立することになっています。ガソリンエンジンやハイブリッドシステムなどの部分を切り出して、機能ごとの融合を優先する狙いです。
ダイムラーとの共同開発に加え、ボルボカーズとの協業によるエンジン開発も進めることで、更なるコスト競争力のアップを目指します。


以上、今は猫も杓子もEV、EVで、まるで明日にでもエンジン車が全廃されるかのような報道が相次いでいますが、内実はそれほど単純な話ではありません。

吉利は、HVとEVの技術開発を同時並行で進める戦略を採っています。
新エネルギー車に関する中国政府の政策は長期的にはEVやFCVの普及を重視していることは間違いないのですが、まだまだ当面の期間は、HVのほうが排ガス規制への対応やコスト効率などで総合的に優位と見ているようです。

5.その他の自動車

✔ 燃料電池自動車(FCV)
FCVは、燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを使って、モーターを回して走る自動車です。水素ステーションで燃料となる水素を補給します。
中国政府は2020年10月に発表された政府のNEV発展のロードマップにおいては、2035年までにFCVの台数を100万台前後まで引き上げるとの目標が示されています(FCVは重点国家戦略の1つ)。
また、充電ステーションの普及も政府主導で着実に進みそうです。

吉利の李書福会長は、以前からFCVを新エネルギー戦略の重点と考えていて、2019年にはFCVバスの開発も行っています。世界トップレベルの燃料電池スタック技術を採用し、すでに走行実験では水素フル充填状態で1日分の営業走行需要を満たしています。
高速道路の長距離走行に向いていると言われるFCVは、長距離バスと相性が良いのかもしれません。

こうした経緯もあり、吉利のFCV戦略には注目していましたが、先日面白い提携が実現しました。
ここに百度も絡んでくると、ますます面白くなりそうです。
FCVの分野についても引き続き注目ですね。


✔ 空飛ぶ自動車、空飛ぶタクシー
吉利が「空飛ぶ自動車」の設計・開発を手がけるテレフギア(Terrafugia)を買収したのは2017年。
すでに、テレフギアの空陸両用の軽飛行機「トランジション(Transition)」は、FAA(米連邦航空局)による軽スポーツ航空機(LSA)耐空証明書を受け、安全性及び環境適合性の基準に適合するものと認められました。
吉利は、2023年ごろに垂直離着陸(VTOL)タイプを市場に投入する予定としています。
渋滞が起きやすい市街地の新たな移動手段として、地下鉄やタクシーに一部代替できるとの期待が高まっています。


空飛ぶ車としては、もう一つ!
2021年3月に、吉利傘下の次世代型エアモビリティ開発企業、沃飛長空科技が、ドイツのボロコプター社と「空飛ぶタクシー」を共同開発し、2024年にサービスを開始することを発表しました。
さらに、中国での「空飛ぶタクシー」の運営企業をボロコプター社と合弁で設立する計画もあるようです。
2023年には欧州航空安全庁(EASA)の認証を取得し、これと並行して中国でも認証取得を進め、サービスを開始する予定です。


ボロコプター(Volocopter)の自律型の電動垂直離着陸(VTOL)機

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以上、
中国は従来から低空域の開放を進めていて、2016年には低空域の開放対象をそれまでの高度1,000メートルから3,000メートルへと徐々に引き上げていくなど、空域の開放を進めています。
今後もこの流れは着実に進むとみられ、それにつれて市場規模も大きくなることが想定されます。

6.おわりに

最後までお読みいただきありがとうございます!

今回は【ハイライト編】ということで、最近の吉利に関するニュースを中心に、簡単にまとめてご紹介しました。

今後、気が向けば【考察編】なども書いてみようと思います。
【考察編】では、今回紹介した提携ニュースやこれまでのグループの歩みを踏まえながら、吉利の経営戦略について書いてみたいと思います。
吉利がどこに向かおうとしているのか吉利の本当の強みはどこにあるのか、そんなことを書いてみたいと思います。

ただ、この【考察編】はかなり踏み込んだ内容となり、仮説も多く含まれることになると思います。
そのため、実際にnoteを公開するかどうか、その辺りは今のところ微妙ですが、noteにまとめる作業は進めていきたいと思います。

それでは、また!

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