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春はあけぼの(写真から書いてみよう)

春の匂いがする。

いい匂いではないはない、臭い!の表現も当てはまりそうな鼻につく匂い。

桜、チューリップ、ツツジ、菜の花。。。
沢山の花が咲き乱れて匂いが混ざり合い香るだろうか。

春の匂いで思い出す記憶がある。

高校時代、自転車置き場に自転車を置いて、教室へ向かう時の気持ちだ。

自宅から高校へは自転車を漕いで30分。
平坦な田んぼ道を抜けてた先は畑。
自然がいっぱい!と表現すれば聞こえがいいが、夏は遮るものなく、強い日差しを浴びっ放し。冬は寒い風に吹かれて自転車を漕ぐ。急な坂道をよいこら越えてようやく学校へ到着、、、していない。

学校は山の上に建っていた。
自転車を押しながら山を登り、ゼイゼイ息が切れ始めた頃にようやく到着だ。

学校に行く最中の頭の中は『なぜ山の上に学校を建てた?』で占められているが、自転車置き場に自転車を置いて教室まで歩く間は別のことで頭がいっぱいだ。

新しいクラスで仲良くやっていけるかな
友達できるかな
この間のテストはどうかな

春といえば新学期。
この時期の私はクラス替えしたばかりで不安だったのだろう。

心配をよそに高校3年間は楽しく過ごした。
匂いで記憶が蘇る現象を「プルースト効果」というらしい。
今でも春の匂いを感じるとソワソワするような、目的もなく何処かへ行きたくなるような、身体の芯が少しゾッとするような気持ちを思い出す。

なぜだったか忘れたが、春の朝、いつもより早く学校に行ったことがある。
自転車を押しながら坂を登り切りふと見上げた空が明るく、いつもなんの変哲もない山に細長くかかる山が太陽の光でぼやっと輝いていて、綺麗だった。

春はあけぼの、と書いた清少納言の気持ちが分かった気がした瞬間だった。

もっとも、清少納言は自転車押しながらゼイゼイ息切れしながらではなく、従者をはべらし十二単衣で優雅に記したに違いないが。

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