《3/4》チャールズ3世は300年前に存在していた⁉︎
全4話中の第3話です。
↓それ以外の話はこちら↓
[1][2][4]
前回までのあらすじ
名誉革命によって国を追われた元イギリス国王のチャールズ祖父。
チャールズは王位奪還を誓い、亡命先のヨーロッパ大陸からイギリスに上陸します。
航海途中イギリスからの攻撃に遭い、イギリス上陸時はほぼ裸一貫でした。
誰もが「この蜂起は上手くいくまい」と思っていましたが、周りの予想を裏切って戦績は絶好調。
ロンドンに迫る勢いで、イングランド中部のダービーまで辿り着きます─。
ここからの続きです。
明るみに出たウソ
ダービーに入城した翌日、今後の作戦を決める会議が開かれました。
ここでチャールズと共に戦ってきたジャコバイト軍は退却を決めます。
一体なぜ?
実はこの1ヶ月半ほど前からチャールズのイケイケどんどんな振る舞いに不満を持つ者が出たり、ジャコバイトの敵対勢力が多いイングランドに踏み込み過ぎるのを良しとしない(※)声があったりしたのです。
(※ここまでしれっとまとめて「イギリス」表記をしていましたが、実はスコットランドとイングランドには大きな隔たりがありました↓)
◇
と言うかそもそも、ほぼ裸一貫状態で上陸しておきながら何故ここまで来られたのかという話なのですが…
理由は2つ。
ひとつ目は、スコットランドの北部・ハイランドに住む「ハイランダー」が味方についていたから。
ここはかつて、北からバイキングの侵略に晒された、また山がちな厳しい地形の為外部との接触が少なく 度重なる戦いによって独自の文化を守って来たという歴史から、屈強な戦士たちが数多く育っていました。
そんな彼らがジャコバイトとしてチャールズを支持していた為、絶好調で進む事ができたのです。
◇
もうひとつの理由は、ヨーロッパ大陸側で起きていたオーストリア継承戦争。
これはオーストリアの支配権継承を巡って周辺各国がやいやい言い出して争った国際戦争なのですが、当時のイギリス(グレートブリテン王国)もこれに参戦していました。
つまり、チャールズの敵であるイギリス国王は 国内のチャールズとジャコバイトの反乱に構っている場合ではなかったのです。
◇
そんな好条件が重なったこと、あとはチャールズの無鉄砲勇猛果敢ぶりに勢いづき、あっという間にロンドンは目と鼻の先。
ところが、ジャコバイトらの当初の目的は「ちょっと暴れて国王をビビらせてやろう」程度。
敵が多いイングランドへの深入りは避けたかったのです。
◇
それでもチャールズが
「ダービーまで行けば味方と合流できるから」
と主張したため渋々進軍したのですが…
実はこれ真っ赤なウソで、味方と合流できるあてなど無かったのです。
元々あったチャールズへの不満に加え、彼の嘘が発覚したのがきっかけとなり、ジャコバイト軍は退却を決めたのでした
哀しき敗走
しかし、ロンドン目前まで迫られて本気を出したイギリス政府軍も、南からジャコバイトを倒すべく追いかけてきます。
政府軍は、海側から海軍の物資サポートを得てぐんぐん進みます。
逆にジャコバイト側は、海を封鎖されて味方フランスからの支援を得られません。
(第二話でお話しした通り、チャールズはフランス王家と血縁関係にあり この蜂起にあたっても支援を受けていました)
そして両軍はスコットランド北東部のカロデンで衝突。
このとき食糧も軍事力も不足していたジャコバイト軍は、わずか1時間で大敗を喫します。
王位奪還の夢破れたチャールズは、政府軍の逮捕から逃れる為メイドに変装して逃亡。
小舟で西部の島に渡ったのちフランス船に拾われて、ヨーロッパ大陸に戻ったとされています。
夢破れて
その後 彼の父が1766年に亡くなると、チャールズは自ら「チャールズ3世」を名乗ります。
しかしイギリス本国はもちろんフランス王、スペイン王、ローマ法王からも承認されず、自身は1788年ローマで67年の生涯を閉じました。
という訳で、結局18世紀のチャールズはチャールズ3世にはなれなかったよ、という話でした。
◇
彼の生涯はここでおしまいなのですが、実は彼、死んでもなおスコットランド人の心の中に生き続けたのです。
次回はその話と、彼の異名「若僭王」について少し語ります。
あともう1話だけお付き合い下さい。
本日もご覧下さり、ありがとうございました。
続き↓
参考
・Wikipedia
《 1745年ジャコバイト蜂起 》
《 ハイランダー 》
・jacobites.org.uk
《 1745 Jacobite Rebellion - Story Map 》
・THE JACOBITE TRAIL
《 Bonnie Prince Charlie Top Ten Facts 》
・スコットランド 歴史を歩く (岩波新書) /高橋 哲雄著/2004.6.18
・肖像画で読み解く イギリス王室の物語 (光文社新書)/ 君塚直隆 著/ 2010.9.20
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?