文香

写真家 / 暮らしの光を伝えるLeben / 写真集Echoing yours刊行

文香

写真家 / 暮らしの光を伝えるLeben / 写真集Echoing yours刊行

マガジン

  • Leben - ある日の栞

    「Leben」はドイツ語で生活を意味します。正解のない様々な暮らしを取材してまとめております。中でも「ある日の栞」では20代を中心に取材を行い、彼らの今の暮らしや考えているところ、目指しているところなどをまとめております。いつか誰かにとっての気づきになるように、いつかその人自身にとっての気づきになるように。そんな気持ちを込めて「栞」と名付けました。 noteでは途中までご覧になれます。続きをご希望の方は「Leben」サイトよりご覧ください。(無料)

  • 物欲少なめな私の暮らしにあるもの

    何かを所有することに苦手意識がある私。そのため昔から物欲はあまりなく、部屋も「すぐに引っ越せる」くらいのものしか手元に置いていなかった。 そんな私の暮らしのなかでも大切にしているものがいくつかある。作家さんの作品だったり、お店や旅先で出会った古道具だったり。 暮らしのなかにそのモノがあるだけで心が豊かになり、「暮らしと根付いている」という気持ちになった。 ここでは、自分の暮らしに染まるモノたちの小さな出来事だったり、生活のなかで垣間見せる愛おしさをお伝えできればと思います。

最近の記事

高橋 成樹 / takahashi naruki

春分の日。和歌山から早朝のフェリーに乗って徳島へ。そこから電車に揺られること4時間。片道6時間かけて高知の街へとやって来た。春の訪れも近かったが、その日は冬が戻ってきたような寒さで雪や雨もちらついていた。 けれど、高橋成樹くんとの時間からは、寒さをかき消すほどの情熱的な生き方やものづくりの背景を伺うことができた。 地元の高知県香南市でフリーランスの山師兼ウッドアーティストとして活動している成樹くん。凛々しい存在感を放っている彼は、まるで正々堂々と生きている木のようだった。

    • 表 萌々花 / omote momoka

      写真の撮り方は人それぞれ異なる。同じカメラを使用していても、同じ構図で撮影していても、同じレタッチ作業を行っていても、その先には決して同じ写真は生まれない。 だからこそ、彼女の瞳を通した世界はどのように映っているのだろう、という素朴な疑問がずっと頭の片隅に残っていた。写真家として活動する彼女の写真は世界を変えるかもしれない。その希望をずっと心に抱いていた。 東京暮らし7年目を迎えようとしている表萌々花ちゃん。(以下、ももちゃんと呼びます) 彼女の言葉の輪郭ははっきりとし

      • 中島 英世 / nakashima hideyo

        まるで陽だまりに育まれた南国の風を運ぶように彼女はやって来た。彼女が将来目指しているものや人柄などは出会う前から話に聞いていた。だからこそ、出会う前から勝手に出会った気になっており、初対面の時にも再会の懐かしさを感じたのだ。中島英世(以降、英世ちゃんと呼びます)の落ち着いた穏やかな笑顔は今でも私の心を満たしてくれる。 英世ちゃんは鹿児島県の奄美大島で生まれ育った。伝統的な織物である〈大島紬〉が身近にあり、幼い頃から織物やものづくりに興味を抱いていた。高校卒業後は鹿児島にある

        • 林 沙也加 / hayashi sayaka

          なだらかに連なる山々とゆるやかに広がる田んぼの風景。どこまでも車で走ることができそうな穏やかな道中では、時折、黄金色に輝くイチョウがそっと秋の訪れを告げてくれる。柔らかい日差しに包まれて黄昏色に染まる景色には、どこか懐かしさを感じるようだった。 林沙也加さんにお会いするのは実はまだ2度目のことだった。初めてお会いしたのは約3年前。当時、丹波篠山の城下町で器を作りながらお店を営んでいる彼女の姿が、初対面以降ずっと忘れられずにいた。自身の歩むべき道を歩んでいる同年代の沙也加さん

        高橋 成樹 / takahashi naruki

        マガジン

        • Leben - ある日の栞
          13本
        • 物欲少なめな私の暮らしにあるもの
          3本

        記事

          booklet「shandi nivas café」

          Lebenより冊子を刊行致します。 冬の季節にこそ読みたい一冊。 ぜひ、お手にとっていただけますと幸いです。 ― ― ― あなたの安らぎの場所はどこですか。 それは暮らしの中に、旅の景色の中に、人との出会いの中にあるのかもしれません。 北海道長沼の大地が真っ白な雪で輝くとある冬の日。 「平和と安らぎの場所」を意味する「shandi nivas café」では、優しいおとぎ話のようなひとときが訪れる人の心をあたためてくれます。 カレーやお菓子でお客さんを

          booklet「shandi nivas café」

          るか / luca

          学校のクラスメイトに彼女がいたら、私の青春はもっと濃厚で自由なものになっていたのかもしれない。そう思ってしまうほど、彼女の思考は広く深く研ぎ澄まされている。それが〈るか〉である。10代の頃から社会問題や環境問題に向き合い、行動し続けてきた彼女の姿勢は自分にはないものだった。 音楽活動では〈LUCA〉として作曲やライブなどを行っている。私も初めての出会いは彼女のライブがきっかけだった。そこから、彼女との時間を重ねることで、その人柄や考え方に触れて、LUCAさんだけではない〈る

          るか / luca

          小野友寛 / 紙

          9月から10月にかけてのこと。今年最後の展示を終え、遠方から帰宅した私は、気づけばもう10月だった!と真っ先にカレンダーをめくった。 普段なら、明日から来月だとワクワクしながらカレンダーをめくるのだが、今回ばかりは、少し慌て気味な私。 けれど、そのカレンダーは私の慌てっぷりさえ包み込むような優しい存在で、時の流れを受け入れているようだった。 小野友寛さんは大分県の山香を拠点として、印刷物のデザインや、紙を使用した造形物を手掛けている。 小野さんの手にかかれば、紙は器にもなる

          小野友寛 / 紙

          植月大輔 / 木工

          「毎日使うものだからこそ、信頼できるものが良い。」 以前、とあるお店で店主の方が仰っていた言葉。 カトラリーはその言葉にあたるものではなかろうか。 お料理と自分自身をつなぐその架け橋は、毎日の食卓における必需品だ。 だからこそ、お箸でもスプーンでも、自分自身が大切にできるものを選ぶ。 植月大輔さんは岡山を拠点に、木工の作品を手掛けている。テーブルや椅子などのファニチャーのほか、フォークやナイフ、スプーンのカトラリーなど、ひとつひとつ生活に寄り添った作品が多い。 硬さが

          植月大輔 / 木工

          キクチジュンコ / 布

          大通り沿いよりも、ちょっと小道に入った路地裏のほうが心地よいカフェがあったり、隠れ家のようなお店があったりするものだ。 キクチさんの展示でお見かけした一枚の布は、まさにそのような出会いだった。 周囲には大きめの布が展示されている中で、 帯のようなテーブルランナーのような細めの布からは、通りすがりの小道のような軽やかさを感じた。 札幌を拠点として、国内外の古い布を集めて柿渋染によって制作を行うキクチジュンコさん。暮らしに寄り添った、カバンやエプロンなどを手掛けられており、

          キクチジュンコ / 布

          好きな場所 / 和歌山

          有吉佐和子という和歌山出身の小説家をご存知でしょうか。 昭和生まれの彼女はデビューしてから「才女」として、歴史や古典芸能、社会問題など幅広いテーマを扱った作品を数多く残しています。 彼女は、幼少期から父親の仕事の都合で海外を転々としていました。 だからこそ、ふるさとである和歌山の紀の川を目にしたときに、日本にしかない自然の風景に心奪われたのだとか。 その情景は、物語の舞台として彼女の小説に度々登場しています。 代表作である『紀ノ川』は、近代という時代の流れ、価値観の変化

          好きな場所 / 和歌山

          伊藤 舞 / itou mai

          幼さの残る自分とは反対に、大人っぽくて洗練されたような彼女との出会い。それが伊藤舞ちゃんだった。初めての出会いは東京の〈白日〉というお店。当時スタッフとして働いていた彼女はモデルのような凛々しい存在感で、私の心に圧倒的な憧れを抱かせた。 まさかの同じ年ということで、どのような道を歩めば強く美しい存在になれるのかと心底気になった。だから、舞ちゃんが長崎に引っ越してから彼女の話を聞いてみようと思ったのだ。 「そんな印象を持っていてくれていて嬉しい!けれど、最初はもっと自分に対

          伊藤 舞 / itou mai

          〈野原〉の財布

          ゆるりとお守りのように一本の紐で結んである。 しっかり結ばなくてもいい。 程よく、適度にリラックスしていてほしい。 本当に大切なものはお金そのものではないから。 誰かを想ったり、ちいさな喜びのために私らしくお金を使うとき、あなたは厚くなったり薄くなったりしながら深呼吸を繰り返す。 同じ生命として、同じ地球で生きていたかつての命がそのまま宿っている。 その生きている柔らかさが心地よい。 まるで大好きな本の1ページをめくるように紐をほどく。 同じものでも使う人の利

          〈野原〉の財布

          森髙 まき / moritaka maki

          編集者として活動している同じ年齢の女の子がいるらしい。その言葉を聞いてから、彼女に会ってみたいと思った。それから一年以上が経ち、雪深い冬の季節に、ようやく彼女が暮らしている洞爺を訪れることができた。 北海道に行ったら洞爺には行くべきだよ。と、身の回りのアーティストや知人から伺っていたこともあり、洞爺への関心はとても高かった。洞爺湖の白鳥に会えるかもしれない。胸をドキドキさせながら洞爺に到着すると、暮れゆく中で、夕焼け色を水面に映した神秘的な洞爺湖が迎えてくれた。 「私の家

          森髙 まき / moritaka maki

          萩原 睦 / hagiwara mutsumi

          「文香さんに写真を撮っていただきたくて」。 その嬉しい一言が彼女との出会いのはじまりだった。パート・ド・ヴェールという手法でガラス作品を手掛ける彼女からの依頼は、作品展のためのDM用の写真を撮影してほしいというものだった。普段は東京で暮らしている睦ちゃん(以降むっちゃんと呼びます)。以前、四国を旅行した時に瀬戸内海の穏やかさに惹かれたことと、私の淡い写真から自身のガラス作品との共鳴を感じて問い合わせてくれたのだった。 オンラインでの打ち合わせ後、1月中旬に岡山でむっちゃん

          萩原 睦 / hagiwara mutsumi

          若木 希林 / wakaki kirin

          兵庫県篠山のとあるイベントで初めて希林ちゃんに出会ったのが三年前のこと。名前に木と林が入っている自然豊かな響きだと思ったことを今でも覚えている。「樹木希林さんの希林です」と彼女が自己紹介をしていたのも印象深い。当時、希林ちゃんは岡山の瀬戸内海を臨む児島という場所で暮らしていた。 一緒に話している時間が心地よくて、その後も岡山に足を運んでは自然と彼女と会う機会が増えたのがとても嬉しかった。 会う度に明るい無邪気な笑顔を見せてくれる希林ちゃん。そんな彼女に素敵な運命の人が現れ

          若木 希林 / wakaki kirin

          小林 千晴 / kobayashi chiharu

          和歌山に引っ越して間もない頃、ひどく京都の土地が恋しい時期があった。京都の気品さや古風さ、そしてアンダーグラウンドなカオスな感覚はやはり京都にしかなく、私はずっとそこに恋しさを募らせていた。 そんな時、ゴールデンウィークに和歌山の〈ens〉で開催された〈山の植物屋〉がきっかけで出会った〈白燕石〉というお店。古物と芳香を取り扱っており、店主の小林千晴(以降ちーちゃんと呼びます)は数年前まで京都で暮らしていたという。私は〈京都〉というキーワードだけで気持ちが高揚して、彼女の京都

          小林 千晴 / kobayashi chiharu