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規則正しく夜更かしをする

これは失恋をした時のある日の日記だ。


失恋ってなんでこんなに死にたくなるんだろう。

風邪をひくたびに健康に感謝するように、治し方が分からなくなるように、毎度失恋の直し方が分からない。

そもそもわたしはめちゃくちゃ健康だし、それでいて恋愛体質だ。

風邪をひくより失恋をしている回数のほうが大人になってからは多いかもしれない。
それでも毎回分からない。
特効薬が欲しいくらいだ。

失恋がつらすぎて上司に相談した。

「正直しんどくて消えたくてたまらないです」

今思えばなんていい職場なんだろうか。

上司は馬鹿にするわけでもなくこう言った。

「まあゆっくり風呂に浸かることだな。
フーッと息をつくのが大切だ。
ぼーっとする時間をつくりなさい。

あとは規則正しい生活…が大切だけど、
俺らは夜勤だし無理だから、

規則正しく夜更かしをしなさい」


その日は素直にお湯に浸かった。

規則正しく夜更かし。

上司が言った言葉を思い返す。

ものすごく矛盾している。
毎日夜更かしをすればいいんだろうか。

言われた通り息を吐きだす。

吐き出した息の分だけ新しく体に空気が入れ替わるのを感じた。

プライベートがうまくいかなくても、仕事中はそれを表に出さない自分のことが好きだ。
社会人として当たり前かもしれないけど。

なんでもない顔をして過ごすうちに、本当に日々を取り戻せる気がした。

失恋を癒す特効薬はやっぱりない。

でも、いつの間にか風邪が治っているように、立ち直っていく。

失恋をしなくて済む、終わらない恋愛にいつの日か出会えるのかどうかは分からない。

まだまだ恋愛を繰り返し、その度にわたしはグズグズするのかもしれない。

つぎ失恋した時には相談ができる上司はもうそばにいないかもしれない。

規則正しく夜更かし。

なんだか気に入ってしまった言葉だ。
大切にしていきたい。