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沖縄と埼玉のアオウミガメから考える

先日「沖縄県久米島町で、首に刺し傷などのあるアオウミガメが30匹以上も瀕死の状態で見つかった。」
「漁業者が、漁網から取り除くために傷つけたと話している。」とニュースがありました。
ご存じのようにアオウミガメは絶滅危惧種に指定されていて、保護活動も活発に行われていることからも大きく報道されたようです。

一方で、八重山地域のみに分布する希少な海草・ウミショウブがアオウミガの食害にあっているという報道も聞きました。ウミショウブは、魚やイカの産卵や小魚が育つ場所であるそうです。
アオウミガメの天敵・サメが駆除された影響でオウミガメが増え、ウミショウブを含めた海草を食べてしまうという、何とも皮肉な話です。


カメで思い出したのが、以前に埼玉で見かけた亀形土製品。
顔や手足は無いものの、カメには間違いないようです。
平な甲羅を持っているところを見ると、池や沼、海などで泳ぐクサカメ、ヌマガメ、ウミガメなどでしょうか。

亀形土製品(複製)
縄文時代晩期/東北原遺跡
さいたま市立博物館蔵

現在の埼玉県は当然海はありませんが、縄文時代には縄文海進によって東京湾の海岸線は栃木県南部付近まで入りくんでいたので、埼玉には海が広がっていました。

縄文海進とは、約7000年前頃に現在に比べて海面が2~3メートル高くなり、 日本列島の各地で海水が陸地奥深くへ浸入した現象で、 関東平野では6,500~5,500年前頃に最高に海面が上昇していたようです。

縄文海進した場所には貝塚が多く残っています。
さいたま市立博物館

縄文時代に海があった埼玉県の貝塚からは、貝や魚と共にアオウミガメの骨が見つかっています。
このことからアオウミガメが食料であったことがわかります。

ひょっとすると、亀形土製品アオウミガメがモデルである可能性も考えられるようです。


くだんの久米島の刺し傷のあるアオウミガメ、
漁業者は、「網にかかってしまったカメは取り外して海に返したが、重さのあるカメは取り外すことができず、排除するために刺した。」ということです。

このような行為は決して容認することはできませんが、生活の糧である漁での出来事。
これはその漁業者だけの問題ではないかもしれないと思いました。


昨今の燃料費の高騰などで、漁業者だけでなく様々な生産者は今まで以上に経費が多くかかるようになり、けれどもそれを卸値に転嫁することは容易ではないと聞きます。
より効率よく生産量をあげなければ、利益が得られなくなっているようです。

消費者の〝より安いものを〟との求めに、製造業者や小売り業者は値上げを感じさせないように、従来より小さくしたり、個数を減らしたり…様々な努力をしています。
一方〝値上げしない〟と宣言している小売り業者は、企業努力もあるかと思いますが、生産や流通のどこかに、そのしわ寄せがいっているのではと思います。

社会の状況などと照らし合わせて、明らかに安すぎるもの、それは誰かの犠牲のもとに成り立っているかもしれない、と思うのです。

毎日の〝食べること〟、それはとても楽しみなことであるけれど、それを少しだけ我慢したり、先延ばしにして、安すぎるものを購入しないで買い物をすることにしています。

生産者から小売り業者までがそれぞれ利益が出て生活が出来ること、そういった本来の経済活動がなされるようにと、僅かながらの意思表示をしているつもりでいます。

縄文時代の埼玉の人は〝そこにアオウミガメがいたから食料にした〟というシンプルなもの。
先人に学ぶこと…これからの生活には一層必要となるかもしれませんね。

最後まで読んでいただき有難うございました。



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