集団行動



私の妹が、彼女の娘のはなちゃんを連れてきて、私の家に遊びに来ていた時の事だ。
はなちゃんは、3歳ぐらいだったと思う。
私の両親が、私の亡くなったおばあちゃん(つまり、はなちゃんのひいおばあちゃん)のお墓参りに行ってくる、と言う。
「じゃあ、行ってくるから」
そう、私の母が言うと、何故かはなちゃんが答えた。
「はなちゃんも行く。」
マジっすか?はなちゃん、あなたはお留守番組なんですけど。
「でも、外はすっごく暑いし、はなちゃんはおうちにいた方がいいよ。」
と母が慌てて説得にかかった。
本当にその日は、猛暑日だったのである。
「ううん、はなちゃんも行く。」
はなちゃんはそう言って、さっさと玄関に向かい、運動靴を履き始めた。
そして玄関先からこう叫んだのである。
「綾ちゃん(私の事)も一緒に行こうよう!」
げ!
心の底から行きたくないと私は思った。亡くなったおばあちゃんにはすまないが、外はガンガンに暑い炎天下だ。何が悲しくてクーラーがかかっているこの快適な部屋を出なきゃいけないんだ。亡くなった私のおばあちゃんは優しいから、私がお墓参りに来なくても絶対怒らないだろう。私の両親だけで充分ではないか?
「すみません、行きたくないんですけど」
私はそう言って、抵抗を試みた。
しかし、はなちゃんはキッパリとこう言い切ったのである。
「だめですよ、みんな一緒だよ、みんな一緒にやるんだよ!」
やめてくれえ!
はなちゃんは、保育園児だから、集団行動こそ命みたいな生活を毎日送っている。
多分、保育園の先生はいつも「みんな一緒にやるんだよ」と、保育園児のはなちゃん達に優しく声をかけて、子供達は足並みを揃えて、一斉に同じ行動をしているんだろう。
しかし、ここは保育園ではないし、私も保育園児ではない、はなちゃんの言う事をここで聞く必要があるのだろうか?
そんな事を玄関先で考えていたら、はなちゃんは私の片方の手を固く握り、こう言った。
「さあ、行きましょう!」
もう仕方ない。行くしかない。
誰も、はなちゃんを止められないからである。
私の愛犬のユキちゃんも行くことになった。
何故ならユキちゃんは、室内犬だが、基本お留守番が出来ないからだ。
結局、私の父、母、妹(はなちゃんのママ)、はなちゃん、ユキちゃん(犬)、私、の全員で物凄い炎天下の中、墓参りに2台の車に分かれて行くことになった。

なんでこんな大ごとになるんだろう。
集団行動、保育園児、まさに恐るべしである。


良かったらサポートして下さい、私の作品はほとんど全部無料です、とても助かります