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早よ、寝ろや

はなちゃんが4歳の頃だった。私の妹がはなちゃんのママである。

はなちゃんは、おしゃべりで、身体も動く子だったので、周りの大人がくたびれ果てた。

しかも、基本昼寝をしないので、大人がホッと出来る時間も無かった。

その日も、大きな公園で何時間も遊び倒し、私の家に帰ってきてからも絶好調で、テレビを見たり、おままごとをやったり、布団の上ででんぐり返しの連続技をみんなに披露していた。

もう夜の11時だ。

私の母(はなちゃんのおばあちゃん)の顔も疲れで土気色である。

「土気色になったら要注意!」はなちゃんのせいで、私の母が死んでしまう!

みんなで、「ガオ(はなちゃんの怖い怪獣みたいなもの)が来るよ!」と脅し、寝る気が全然無いはなちゃんを無理やり布団に連れ込んだ。

はなちゃんに掛布団を掛けた母がこう言った。

「早よ、寝ろや」

なんで関西弁なんだ。私の周りに関西弁を話す人はいない。言っている母もそれに気づいていない。

それを聞いたはなちゃんがニヤッとして、こう答えた。

「ばあば、あたしの掛けている布団薄いけど、これでいいんか?」

はなちゃん、君は関西弁が話せるのか?一体いつ、どこで覚えたんだ?

はなちゃんの隣で寝ていた妹がこう言った。

「やめてよう」
母は、このやり取りを聞いてても、ニコリともしない。

そして母はさっさと、その部屋の電気を消したのである。

疲労の極致になると、人はどんなに面白い事があっても笑えなくなるという良い例だ。

それから母は、フラフラしながら、何も言わずに自分の部屋に静かに消えていった。

さて、はなちゃんも今では小学生になって、夜はちゃんと寝るようになったが、下にさつきちゃんというまた昼寝をしないで、夜、家の中で走り幅跳びをするような女の子が生まれてしまった。

おばあちゃんになるのも自分の体の健康をかけた命がけの所業であると言えよう。


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