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パンツの裾上げ〜ダブル・シングル・まつり縫い  (洋服の修理をうける際に気をつけること❷)

前回の続きです。
あくまで自分で勝手に決めた自分用の確認・注意事項ではありますが

○洋服の直し・修理を受ける際は修理内容と修理箇所について

1、つくり上(構造上)可能か
2、もとのデザイン、形状が再現できるか
3、見た目が綺麗にできるか
4、バランスは許容範囲か


を考慮しなければいけません。

について具体的に説明していきます。

1、つくり上(構造上)可能か

これはすごくザックリ言ってしまうとその服がやりたい修理が可能なようにできてるか(つくってあるか)ということです。

【例①】フラシのパンツを丈上げして裾をダブルの形状で仕上げる場合

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フラシ(フラシは仕上げしてない状態です。裾はロックでほつれどめだけしてあります。)

これを

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(ダブル仕上げ;幅は4.5cmくらい)

こういうダブル(折り返しあり)で仕上げたい。
これはもちろん何も問題ありません。フラシというのは仕上げの形状が選択できるようにわざと仕上げしてない状態なので。

ユーチューブの力を借りましょう。いいキャラの方が作業しながら解説してくれてます。ちょい長いですがこれでダブルの構造はバッチリわかるようになります。


『股下の長さとダブル幅の3等分をはかってチャコで印つけて→テーパードしてる分の裾幅調整して→靴擦れテープつけて→裾ロックかけて→ルイスミシンでまつって→ダブルをアイロンで仕上げて→折り返しにスナップボタンつけて』
という工程でした。
意外と大変です。うちでは800円です。(スナップ釦なしです)
工程考えると安いです。(ちなみにミシン3種類使ってます)

“フラシ→ダブル“はつくり上(構造上)なんの問題もないです。

ですが実際にはこういう要望もあったりします。

【例②】シングルで仕上げしてあるパンツの裾をダブル仕上げにかえたい(丈の長さはかえない場合)

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こういうシングル(折り返しなし)仕上げしてあるものを上の画像のようなダブルに変更したいという要望です。
これどうでしょう?

せっかくなのでまず、シングル仕上げも見ましょう。

このシンプルなシングル仕上げを理解してもらうため、ダブルに引続きあまりにも丁寧な解説のこの動画をどうぞ。
ちょっと長いですが頑張ってみてください。

この"基本をわかってることが大事そう"なのと、
意外と馴染みがない“まつり縫い(業務用ではルイスミシンとよばれるすくい縫いミシンを使います)“もみてもらったほうがいいかなと思います。

※【一旦、本題おいておいて「すくい縫いミシン」の説明です】

女子のドレスっぽい服では "すくい縫い"   メチャクチャ使います。
もう、ほとんどまつってあります。(ちょっと言い過ぎました。メンズもちろん使います。)

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こんなパンツももちろん

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(シングル仕上げ:裏)

裏。シングルでまつってます。浮き気味の糸がすくい縫いの糸。

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(シングル仕上げ:表)

表。点々ステッチがすくい縫いの特徴。すくい縫いミシンの解説はこちら

http://blog.livedoor.jp/arkjeans/archives/491842.html

ルイス(すくい縫い)ミシン動画です。

なんとなくわかりましたでしょうか。
特殊な針の特殊な動きの特殊な目的のミシンです。
シングルはこれで留めてあるので、他の縫製より簡単にはほどけてしまいがちです。でも生地は痛めずに目立たない仕上げが可能です。

※ 本題へ戻ります。

こういうシングルで仕上がっている裾からダブルへの仕様変更が可能かどうか?

答えは

「ヘム(内側の折り返しの長さ)ととりたいダブルの幅次第で可能」

です。

シングルは内側に生地を折り返してる分(ヘム)が結構ありますので、それを使ってダブルがつくれれば一応可能です。

シングルのまつり縫いほどくとほぼフラシの状態になるのでその後、ダブルの動画と同じ作業ができればOKです。

逆にいうと「ヘムの長さが足りなかったら無理」です。

上の画像のパンツの裏側こうなってます。

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ヘム(内側折り返し部分)測ってみたら7cm。
こりゃダメです。ダブル幅全然取れそうにありません。

ダブルは幅の約3倍弱分の生地の長さが必要なんですが、(動画でわかりましたか?)ダブル幅は一般的に4cm前後が多いので10〜12cm分のヘムの生地が欲しいわけです。

このパンツのスソ仕様変更は“つくり上(構造上)できない“ということになります。

が、“寸法足りないだけ“でもあるので、股下の丈の長さを3〜4cm短くした上でダブルに変更だったら実はできちゃいます。
(丈を短くすればその分生地が余るので単純にダブルつくる分の長さが足りるようになるからです。)

というようにシングルからダブルへの仕様変更の修理は“もとの状態・条件次第でできたりできなかったり“します。
(動画の通りシングル、ダブルとも構造はシンプルなので“できる・できない“が生地の長さ次第だからですが、、)

つくり上(構造上)できる、できないという判断はこういうケースももちろん含めてのこととなります。

お直し・修理はまず “つくり上(構造上)可能か“ そこからスタートです。

お客様の要望通りになんでもうっかり受けてしまうとできないこともあるので気をつけてください。

【例③】これが画像のようなジッパーがついてるパンツがあって、
「ダブル(折り返し)仕上げにしたい」みたいなとんでもない要望なら
“イヤイヤ、無理ですよ“ と、誰でも無理だと判断します。
なぜかというと、そういう風につくってない(できてない)と見た目でわかります。

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(裾、ゴムでジッパー付きジャージみたいな仕様)


これだけわかりやすければつくり上(構造上)できないと判断できますが、
【例②】の「シングル→ダブル」のように判断が難しい(条件次第でできたりできなかったり)ようなものもあるとまずはわかっておくのが大事です。

いろんな仕上げの形状がわかってくると、シンプルな構造のものなら徐々に修理の可否も判断できるようになってきます。

長くなりましたので今回はここまでに。次回も引続きもう少し説明します。
まさか1項目も終わらないとは、、。


<まとめ>

・既製服の修理はまず「つくり上(構造上)可能か」がスタート。
・できる、できないはその都度、修理のケース次第なのでよく発生するシンプルな仕上げはつくり(構造)を知っておくのは大事。

注意:この内容はあくまで既製品の洋服を販売するにあたって日常的に発生する修理内容を前提にしています。その範疇を大きく超えるような内容は想定していません。(リサイズ、デザイン変更、改造レベルの修理など)



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