2023年10月23日の日記

 先週、舞台「ETERNAL GHOST FISH」見た。本当につまらなくて上演中5回くらい泣きそうになった。どうしてこんなにこの時代の話をつまらなくできるんだ。
 私は元来、ベルナルド・ベルトルッチの「ラストエンペラー」が大好きで二桁回数見ているし、愛新覚羅溥儀の生涯についても予習なしでまあまあ頭に入っているので、その場がどういう時代背景なのかとか、登場人物たちはどうしてそこに集まっているのかとか、人並みには理解できているつもりだったのだが、理解できているからつまらないのか、いや理解していないともっとつまらないのか……多分だけど、西田大輔は溥儀も婉容も川島芳子も甘粕正彦も李香蘭も、あんまり好きじゃないよね? 幕末モノをやってる時と比べて熱量が違う感じがするっつーか、いや、これもお気持ちですけど。
 西田大輔の書く、「真面目な話をしてるときに突然スンッとなってギャグを挟むヤツ」ってうまく波に乗ってるとクスっと笑えるときがあるんだけど、なんかもう今回は全部終わっていた。ちょっと加速した途端に急ブレーキをかけて客を全員車酔いにするタクシーのような趣がある。
 というか、そもそも天津租界に溥儀がいた時代って、変にギャグを挟んでこねくり回してみたり、変にSFっぽい設定を加えたりしなくても、史実を史実のまま演劇にしたら普通におもしろいと思うのだけど、西田大輔はあの史実の登場人物たちに味付けをしないと気がすまなかったということだろうか。うーん、なんか解釈不一致な感じがして、気持ち悪い。
 西田大輔作品はけっこう嫌いじゃないし、「まほろばかなた」も面白かったし、そもそも私はちゃんと舞台に初めて通ったのが「もののふ白き虎」(2015)なので西田大輔が致命的に合わないというわけではないと思うのだけれど、もしかすると今までは幕末モノばっかり見せられていたので、自分が「幕末警察」ではないゆえに気にならず、なんとなく波に乗って感動できていて、今回その自分の無神経さが得意ジャンルで浮き彫りになってきただけという可能性もあり、複雑な心境……。
 思えば私は舞台版「バイオハザード・ジ・エクスペリエンス」(2017)を見たときも、鈴木勝秀演出のことめっちゃ好きなつもりだったけど、好きじゃないのかも!?と疑心暗鬼になり、不安に陥ったな。なんか、たまに「今回の◯◯は寝ながら脚本を書いたのか?」みたいな時があると、わりと素直に気持ちが揺らいでしまう。
 しかし、鈴木勝吾さんの演じる溥儀のあの感じはめちゃくちゃよかったな。抑揚のない感じも視線が常に平行垂直な感じも……。是非、鈴木勝吾さんのあの感じの溥儀で「東京裁判編」やってほしいぞ! 演出家は変えて……。

 インターネットで、女子高女子大に入れて大事に育てた娘がホストにハマって……みたいな話を見るたびに、おととい話した元フォロワーのお母さんを思い出します。なぜ元フォロワーのお母さんと電話をしているのかという謎はある。元フォロワーに鬼電したらなぜかお母さんが出た。なぜロックを解除してLINEを見ている。そしてなぜお母さんは電話に出る。
 お母さんは本当に自分の子供の育て方を信奉している、というかまったく疑っていないみたいで、とにかく私がいかにその元フォロワーに迷惑をかけられたか、という話を冷静にしても「私は……◯◯のこと大事に大事に育てたんですっ!!そんなことするはずありませんっ!!」と絶叫してくる。いや、ちょっと待ってください。お母さんが娘さんを大事に育てたかと、結果としてそんなことをするかどうかというのは、関係ありません、という感じなのだが、関係あると信じているみたいで、不思議な感覚になった。
 なぜ不思議になるかというと、自分の家庭にそういう感覚がないからかもしれない。母が極端に自他境界のはっきりした人なので、自分が子育てをしてきたことと、子供の中に破滅した人がいるということを恐らく完全に別個の問題として捉えていて、破滅側としてはそれはそれでロジカルで助かるのだが、世の中的には、子供が破滅していると「自分の育て方が関与していたのではっ!?」と、ある種被害妄想&加害妄想&自意識過剰的な思考に陥る母親が多いっぽく、子供に対する自信って怖いぜ。
 お母さんは、「私はっ、◯◯には勉強してほしい!!会社員になってほしいんですっ!!」と、電話口でなぜか熱く私に語ってきた。そ、そうか。私もその方がいいと思うけど、なんでそれを私に高らかに宣言するんだよ。面白いぜ。私は親に、◯◯になってほしいと言われたことが一度もないので新鮮な感じがした。学園ドラマに出てくる問題行動を起こす生徒の親じゃん。あれって誇張してると思ってたけど誇張しないでこのテンションの人がいるんだな。勉強になりました。
 その後、元フォロワーとは音信不通のままである。お母さんに「電話番号教えてくださいよ」と言ったら、「やだよぉ、だってあたし交友関係狭いもん、スマホもよくわかんないもん」と断られた。そういう理由なんだ。
<おわり>

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