魔法のようなずっと消えない歌を、僕らなら歌っていけるよ

LAMP IN TERREN ワンマンライブ「Bloom」
2020年1月27日
(※2022年3月31日をもってサービス終了した「音楽文」に投稿した文章の再掲です)


2020年1月13日、マイナビBLITZ赤坂。ショパンのピアノ曲が会場内を満たし、ステージの中央でスポットライトの光を浴びて佇むオンシジウムの花束。この日のライブハウスは、想像していたよりもずっと静謐な空気を纏っていた。
ゆっくりと消えていく客席の照明に反比例するように、さっきまでのピアノの音と入れ替わるように、ボリュームを増すSEの中にモールス信号の音を聴いた。
少し俯くようにして、静かに入場してきた4人。Vo.Gt&Pfの松本のピアノから始まった"花と詩人"は、「開花」と名付けられたワンマンライブ「Bloom」の幕開けにぴったりだと思った。

このライブの10日前くらいに、松本がツイキャス配信で「Bloomはこれまでの自信のある曲をぶつけたセットリストにしたい」と話していた。その言葉通り、この日のセットリストは全部盛りみたいな豪華さの曲たちが並んでいた。
"Beautiful"でステージに崩れるように膝をついて歌う松本の姿は、何かを演じているかのような迫力があった。この曲に圧倒されたのは私だけではなかったようで、次の曲までやや空白の時間があったにも関わらず、誰一人として拍手することはなかった。おそらく「動けなかった」と言う方が正しい。あの瞬間は彼らが静寂を司っていた。
その十分な静寂の後に続けて演奏されたのは、"緑閃光"と"BABY STEP"。この2曲を連続して聴くのは初めてだったが、個人的にはなんだかすごく腑に落ちる感覚があった。なんとなくこの2曲が纏う空気に、似たものを感じる気がしている。

ここで松本のMCが入るのかと思いきや、彼は「心が迷子」とメンバーにMCを投げて、タオルを顔に押し当てた。Gt.大屋、Ba.中原、Dr.川口がいつものようなゆるいお喋りで間を繋ぎながらも、少し心配そうに松本の様子を窺っている。しゃがんで涙を抑え込んだ松本がマイクの前に直って話し始めるも、「今も喋ってて泣きそう」と言った。
「"緑閃光"から今自分たちが大事にしている"BABY STEP"に繋がった時に、走馬灯が見えて俺死ぬのかな?って思った」
と、彼は涙声で笑った。

「先のことが気になって、いつも『もっともっと!』って言ってきた」
「未来ばっかり知りたくて、心がそう言うから、振り返ることもなかったし、振り返りたいとも思わなかった」

この日はテレンのメジャーデビュー5周年記念の前日。松本は記念日みたいなものにあまり拘りがないと言うが、こんな素敵な日くらいは、今日まで歩いてきた道のりを思い返して、抱きしめてみるのもいいと思うんだ。

そんなしんみりとした空気を"ほむらの果て"の一音目で一掃して、後半戦へと突入していく。曲の途中で狂ったように笑う姿は、さっきまで泣いていた人とはまるで別人のようだ。

「ここまでやってきたんだなと思った」

本編ラストのMCで、もう一度これまでを噛み締めるように、松本はしみじみと話した。やっぱりこの日は、バンドにとって一つの区切りとなるような、特別な夜だったと思う。これまで磨き上げてきた力を持った曲たちが、今が一番かっこいい最新のテレンに鳴らされて、とても輝いていたから。

「毎日幸せですか?俺はどちらかというとつらいことの方が多い。でもそれすら楽しみたい」
「音楽でしか繋がれないけど、音楽を通していつも見ています。背中を押すし、押されます。自分の歌が届いて、その心がどう動いたのか知りたい。誰と生きているのか知りたい」
「生きていたい。生きていてほしい。笑うために泣くし怒る。泣かせるし、わざと笑わせる」

"いつものこと"の歌詞で私がとても好きな部分がある。

—何故 自分で命を捨てちゃいけないって皆言うんだろう
黙っていても奪われるだけなのにって僕は思うよ—

こんな風に歌っている彼が、自分で選んで「生きていたい」と言ってくれたことが嬉しかった。
貴方の言葉は、貴方たちの音楽は、私のところまでちゃんと届いています。ちゃんと受け取っているよ。応えたくて拳を掲げた。
でもやっぱり言葉にしなきゃ伝わらないから、今こうしてこの文章を綴っています。できれば届くといいな、と願いながら。

最近テレンのライブに行く度に考えることがある。
「どうすれば私の愛を彼らの元まで届けることができるのか」
陰ながら応援しています、ではもう満足できない。届ける努力を諦めたくない。彼らは愛されたくて待っているから。
私にとってのその手段は、ライブレポートを書くことです。自分の好きなこと、自分にできること、みんなに褒めてもらえたこれで、何度でも叫びたい。「愛してる」と叫びたい。

これまでの全部を観てこられたわけではない。でも、これからはずっと一緒に生きていこうね。側に居るので、側に居てください。
LAMP IN TERREN、メジャーデビュー5周年本当におめでとうございます。