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雨の日に起きた実話についてわかりやすく解説

ある日の夜、雨の中を傘差しながら歩いていると
ズブ濡れの若い男が近寄ってきた。

近頃、物騒やからナイフで刺されるんちゃうか?
と正直ビビりながら身構えると……

『難波は、どう行くんですか?』
と訪ねてきた。

『ここを、びゅー……って』
そんな事言ってる間に、ブスッと刺されたらたまったもんじゃないので適当に流す。

が……どうやら凶器は所持してなさそうだ。

『実は引っ越して来たばっかりなんですが、カバンを盗まれて鍵も財布もないんです』

『ほう……で?』

『警察に行ったんですが、自分でどうにかしろって言われちゃって』

とりあえず、面白そうな展開が期待されたので……雨の当たらない場所へ誘導する。

『ってかさぁ、なんで数ある通行人の中から俺なん?一番チョイスしない相手やろ?』

急に黙り込む男……

今でこそ、爽やかになったものの……胡散臭い感じはプンプンするだろうし。
怖い人には見えないだろうけど、一般の方の雰囲気ではないのは自覚している。
そんな私に声をかけたのも何かの縁かも知れんし、騙してる様には思えない……たぶん。

『これで電車で帰って、ご飯でも食べ』
私は財布から、1000円を取り出し男に渡した。

『そ…そんな、あ…ありがとうございます。必ず返すので連絡先を教えて下さい』
1000円札を顔の前で握り、嬉しそうに男が言う。

どう見ても金持ちそうに見えないので、10倍になって返ってくる確率は皆無に近い。
それより、こんな男に連絡先を教える方が最大のリスクだ。

『いいよ、頑張りや』

そう言って立ち去ろうとすると、思いもよらない言葉が返ってきた。




『絶対返すから、あと1000円貸して下さい』

私は、クルッと踵を返すと


『アホか、返せ!』
そう言って、目の前の1000円を取り上げて目的地へと急いだw

(完)

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