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VRやメタバースを活用した「学び」の可能性(中編)

 ・・・早速、O校長にヘッドセットを渡し、「VR卓球」でAIのアバターとのラリーを体験してもらうことになった。

 O校長は「これまでにヘッドセットを使ってVRやメタバースの体験をしたことはない」ということで、もちろん「VR卓球」をするのも初めてである。

 しかし、(大変失礼な言い方かもしれないが)これがなかなかに上手い。左側のコントローラーでボールを出し、右側の物をラケットとして使う、という簡単な説明をしただけだったのにもかかわらず、何球かの練習をしただけでアバターとのラリーが続くようになっていた。

 それもそのはずで、O校長は元々が保健体育科の教員である。これまでに授業で卓球を教えた経験はあるだろうし、スポーツ全般に関して「コツ」を掴むことに長けているのだろう。

 O校長の後、何人かの先生方にも同じように体験をしてもらったが、その中で別格の技術を見せていたのは、やはり保健体育科の現役教諭の方だった。

 短い時間の中で、ラケットの角度や向き、腕の振り方などを微修正しながら、球種やコースを打ち分けていたのが印象的だった(VRの画面をモニタリングしていたわけではないが、周りで見ていてもアバターと互角の勝負をしていることは伝わってきた)。

 ・・・「VR卓球」の場合には、「実際の卓球の動き」と「両手に持ったコントローラーを操る動き」とが類似していることで、過去に卓球をやった経験が「VR」でもそのまま生かされるのだろう。逆に「VR卓球」での経験を実際の卓球に活かすこともできるに違いない。

 おそらく、テニス・バドミントン・ゴルフ・剣道などは、卓球と同じように左右のコントローラーを使って「実際の種目の動き」に近い動作を再現することが可能だろう。

 逆に、柔道やレスリングなどのように相手と組み合う種目や、サッカーのように脚を使うスポーツについては、コントローラーによる再現が困難だといえる。

 ・・・この保健体育科の先生からは、
「雨天等で外での体育ができないときなどに、代替の活動として使える」
「保健の学習で、たとえば応急手当の体験に使えるのではないか」
 といったアイデアもいただいた。

 このうち、VRで「応急手当」について習得する方法については、すでに医療や防災の分野でも取り入れられており、すぐにでも学校教育に応用することができそうである。
(つづく)

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