立田 順一

横浜市在住。教育関連のことを中心に書いていきます。

立田 順一

横浜市在住。教育関連のことを中心に書いていきます。

最近の記事

  • 固定された記事

45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

突然の電話「立田さんには、4月からの1年間、企業等への派遣研修に行っていただきます」  教育委員会の担当者から学校に電話がかかってきたのは、3月中旬のことだった。  私は大学を卒業後、すぐに横浜市立小学校の教諭として働きはじめた。それから20数年間、何度か市内での異動はあったものの、小学校以外の職場で働いたことはない。私にとって、その連絡は晴天の霹靂だった。  と言いたいところだが、予感がまったくなかったわけではない。当時の横浜市教育委員会では、毎年、副校長昇任試験の合格者の

    • 「遊び」「学び」「仕事」の一体化?

       教職大学院の授業では、新入生に対して「研究の進め方」をレクチャーする際などに、この『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎著・光文社新書)がよく用いられている。  著者である前野ウルド浩太郎氏は、1980年に秋田県で生まれた昆虫学者である。前野氏は31歳のときにアフリカのモーリタニアへ渡り、農作物を食い荒らすサバクトビバッタの生態を約3年間にわたって研究した。  その成果が認められ、現在は国際農林水産業研究センターの主任研究員を務めている。なお、ミドルネームの「ウ

      • 「主体的・対話的」な学びを支える環境

         東京学芸大学教職大学院の総合教育実践プログラムが運用している X(Twitter)に、4月24日付で次のような投稿があった。  ある2年目の学卒院生(学部を卒業後に進学してきた教員未経験の院生)が、1年次の学びを振り返って綴ったものである。  4回に分けて投稿された内容を繋ぎ合わせると、次のような文章になる。 (「グループで一人一人順番に考えを出し合うのが話し合いではなく」という部分は、先日の中教審・特別部会の審議を思い起こさせるが、今回はそれには触れないでおく。)

        • 「会議は踊る。されど進まず」(後編)

           前々回と前回の記事では、給特法の維持に一貫して反対してきた立教大学・中原淳教授による X(Twitter)の投稿を紹介し、その指摘について補足をしてきた。  もちろん、この投稿は給特法の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)の内容を踏まえたものである。  かつて私が勤めていた教育委員会の事務局には、文部科学省との人事交流制度があった。同省からの出向者は、それぞれが高い能力と意欲をもつ方々ばかりで、一緒に仕事をしていて学ぶことが多かったものだ。  また、

        • 固定された記事

        45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

          「会議は踊る。されど進まず」(中編) 

           給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が、4月19日に開催された。その審議の内容については、すでに多くのメディアが報道しているとおりである。  この会議の翌日、給特法の維持に一貫して反対してきた立教大学・中原淳教授は、X(Twitter)に次のような投稿をしている。  中原教授自身、中教審の「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」で委員を務めていた時期がある。この投稿の前半の4行は、そのときの体験を踏まえての感想だ

          「会議は踊る。されど進まず」(中編) 

          「会議は踊る。されど進まず」(前編)

           1814年~15年にかけて、オーストリアの首都で「ウィーン会議」が開催された。その目的は、フランス革命とナポレオンの対外進出によって混乱したヨーロッパ社会の秩序を再建することにあった。  だが、参加国の元首や大使たちは舞踏会への出席と水面下での駆け引きに明け暮れ、会議は一向に進まない。 「会議は踊る。されど進まず」  という言葉は、その様子に業を煮やしたフランスの代表タレーランが、皮肉を込めて放った言葉だといわれている。  給特法に基づく教職調整額の在り方などについて

          「会議は踊る。されど進まず」(前編)

          「◯◯大賞」の決め方

          「〇〇大賞」という言葉からパッと思い浮かぶのは、「日本レコード大賞」「全日本仮装大賞」「流行語大賞」などだろう。この3つに共通しているのは、いずれもその人気に陰りが見えることである。  一番目の「日本レコード大賞」は、かつては大晦日にテレビで放送されていた。子どものころは、 (誰が大賞に選ばれるのだろう?)  と、テレビの前で緊張しながら観ていたものだ。  けれども、歌手の所属事務所やレコード会社などの意向が選考に少なからぬ影響を与えているようだ、ということが素人目にも明ら

          「◯◯大賞」の決め方

          「おじいちゃんは、どうして?」

           今から30年ほど前に、こんな話を聞いたことがある。  給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が、4月19日に開催された。  その結果、注目の「教員の処遇改善」については、  給特法の教職調整額を「少なくとも10%以上」とする  という方向で決着をすることが確実になった。  しかし、これは「教員の長時間労働の是正」を図るための方策にはなり得ない。むしろ、「定額働かせ放題」と揶揄される働き方を定着させることになってしまうだろう。

          「おじいちゃんは、どうして?」

          ここは「パラレルワールド」ですか?

           給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議している中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」が、4月19日に第12回の会議を開いた。  今回の会議では、これまでの検討内容を踏まえた「審議のまとめ」の素案が事務局から示され、その内容について各委員が意見を述べた。  その結果、注目の「教員の処遇改善」については、素案に示されたとおりに、  給特法の教職調整額を「少なくとも10%以上」とする  という方向で決着することが確実となった。  素案では、「教員の業務は自主

          ここは「パラレルワールド」ですか?

          【重要】本日(4/19)、中教審・特別部会が開催されます!

           これまで、給特法に基づく「教職調整額」の在り方などについて審議してきた中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」が、本日(4月19日)の16時から第12回の会議を開きます。  これまでのところ、同特別部会の委員の間では「『教職調整額』を維持する。ただし、その増額はする」という意見が大勢を占めています。  しかし、それでは絶対に「教員の長時間労働」は是正されません。この問題については、立教大学の中原淳教授がブログで論点を整理していますので、ぜひご覧ください。   同特

          【重要】本日(4/19)、中教審・特別部会が開催されます!

          【至急・重要】中教審・特別部会(4/19)の「Web傍聴」の申込みは、本日(4/18)の12時が〆切です!

           これまで、給特法に基づく「教職調整額」の在り方などについて審議してきた中央教育審議会の「質の高い教師の確保特別部会」が、明日(4月19日)の16時から第12回の会議を行います。  これまでのところ、同特別部会の委員の間では「『教職調整額』を維持する。ただし、その増額はする」という意見が大勢を占めています。  しかし、それでは絶対に「教員の長時間労働」は是正されません。  同特別部会の今回の議題は「教師を取り巻く環境整備について」です。  おそらく、これまで議論されて

          【至急・重要】中教審・特別部会(4/19)の「Web傍聴」の申込みは、本日(4/18)の12時が〆切です!

          「賠償金」ではなく「見舞金」?

           3日前から3回にわたって、中央教育審議会の部会で議論されている「教職調整額」の問題について書いてきた。  この問題は、学校関係者の間でも大きな話題になっている。本日・4月17日付の毎日新聞にも、次のような記事が載っていた。 「給料は今のままでいいので業務を減らして」  というのは、教育現場で働く教員たちの切実な願いだろう。知人からは、 「お金について議論をする前に、業務を減らすことについて真剣に話し合ってもらいたい」  という声も聞く。  ただし、同特別部会では業務削

          「賠償金」ではなく「見舞金」?

          「教職調整額」を増額しても「教員の働き方」は改善されない(後編)

           前回の記事では、 ・中教審特別部会における検討のなかで、委員の多くから「時間外勤務手当(残業代)を支給することは、公立学校教員の業務になじまない」という意見が出された。 ・たしかに、教員の時間外勤務を管理することには難しさがある。しかし、それができないと言ってしまえば労務管理を放棄することになる。 ・公立学校教員以外の専門性がある職種では「残業代」が支払われている。  ということを書いた。  ・・・委員の多くが「残業代」の支給に否定的な意見を述べるなかで、妹尾昌俊委員の主

          「教職調整額」を増額しても「教員の働き方」は改善されない(後編)

          【校長の本音】「私は『働き方改革』が嫌いだ」

           私は「働き方改革」が嫌いだ。  もちろん、ウチの職員が長時間勤務をしているのはわかっている。  それを何とかしたいとも思っている。  だが、勤務時間外にも働いてもらわなければ、学校は回らないのだ。  私は「働き方改革」が嫌いだ。  育児や介護で定時退勤をしなければならないという事情は理解している。  けれども、もしも職員全員が定時退勤をしてしまったら、学校は崩壊してしまうだろう。  学校の安定は、時間外勤務によって支えられているのだから。  私は「働き方改革」が嫌いだ。

          【校長の本音】「私は『働き方改革』が嫌いだ」

          「教職調整額」を増額しても「教員の働き方」は改善されない(中編)

           前回の記事では、 ・「教職調整額」を増額しても「教員の働き方」は改善されない ・むしろ、増額によって「教員の働き方改革」の問題に決着がついたかのような印象を与えたり、増額したのだからこれまで以上に働けという空気が生まれたりすることを懸念する  ということを書いた。  教員にも民間企業などと同様に「残業代」を支給するのか、それとも「教職調整額」の仕組みを維持しながらその改善を図るのかについては、「教員の働き方」を考えるうえで避けては通れない問題である。  だが、それはゴー

          「教職調整額」を増額しても「教員の働き方」は改善されない(中編)

          「教職調整額」を増額しても「教員の働き方」は改善されない(前編)

           4月12日付の日本経済新聞に次のような見出しの記事が載った。  教員「残業代」2.5倍以上に  50年ぶり増額へ、中教審案  極めてツッコミどころの多い見出しである。  まず、公立学校の教員に「残業代」は出ない。一応、記事の本文に、 「公立学校教員の残業代の代わりに基本給の4%を上乗せする『教職調整額』について」  と書いてはあるが、読者のなかには見出しだけを読んで、 「残業代の基準額が2.5倍以上になるのか⁈ それはスゴイ!」  と誤解をした人も少なくないだろう。

          「教職調整額」を増額しても「教員の働き方」は改善されない(前編)