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詩『小さな質問』(高階杞一)

『小さな質問』という詩がある。
 作者は高階杞一さん。学校図書社の「小学校5年・国語」の教科書にも載っている作品だ。

 小さな質問   高階 杞一

すいーっ と 空から降りてきて
水辺の
草の
葉先に止まると
背筋をのばし
その子は
体ごと
神さまにきいた

  なぜ ぼくはトンボなの?

神さまは
人間にはきこえない声で
その
トンボに言った

  ここに今
  君が必要だから

 先日、教員を目指す教職大学院の院生たち数名に、この詩の感想を聞いてみた。

「結局、『置かれた場所で咲きなさい』ってことでしょ」
「でも、●ッグモーターの店の前に置かれたら枯れちゃうよね」
 早速、時事ネタで笑わせてくれる。

「もしもこのトンボが、他の生き物になりたいと真剣に考えているのだとしたら、神さまの言葉は何の慰めにもならないと思う」
「悪く言えば、欺瞞だね」
「でも、トンボ以外にはなれないんだから仕方がないでしょ」
「究極の『親ガチャ』だ」

 そして、こんな意見もあった。
「題名は『小さな質問』だけど、小さくなんかないんじゃないかな。哲学的な『大きな質問』のような気がする」


 院生たちは、大人たちが「この詩から何を感じてほしいと考えているか」をわかったうえで、話し合いを楽しんでいたのだろうと思う。

 それは、けっして悪いことではない。物事を多面的・多角的に見たり、批判的に捉えたりするのはとても大切なことだ。

 なにしろ、世の中には「神様」のようなフリをして、君たちのことを騙そうとする大人たちが大勢いるのだから。

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