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2年目のジンクス!? 若手教師が直面する「2年目問題」

 プロ・スポーツの世界には「2年目のジンクス」という言葉がある。これは、1年目に活躍した新人選手が、翌年に一転して不振に陥ったときに使われる言葉だ。
 成績が低下した理由としては、対戦相手に弱点を研究されてしまったことや、1年目の疲労の蓄積、本人の慢心などが考えられる。

 ところで「2年目」といえば、人材開発・組織開発が専門である中原淳教授(立教大学)が、以前にブログで「2年目のリアリティショック」について取り上げていた。

 このブログの中で中原教授は、共同研究者との間で話題になった「いまどきの新人の『リアリティショック』は『1年目』ではなく『2年目』に遅れてくるのではないか?」という説を紹介している。この説は次のような事例に基づいているのだそうだ。

内定者研修やら、OJT制度が以前よりもととのっているので、いまどきの新人は、新入社員時期の1年目は「守られてる」
  
人手不足のなか「離職」されたら最悪なので、あまり新人には負荷をかけない
     
でもマネジャーのなかには、1年目から2年目に移行するときに急に「手のひら返した」ように「もう1年目じゃねーんだ」「いつでもお客さん気分でいるんじゃない」とか言うひともいる
    
1年目から2年目になるときに急に「防御壁」がとりはらわれて、「とっとと数字出せ」となる

 同じ「2年目問題」でありながら、プロ・スポーツ選手とは様相が異なる。プロ・スポーツでは、1年目の選手も2年目以降の選手も基本的には同じ扱いである。たとえドラフト1位の大物ルーキーであっても、新人だからといって極端に優遇されることはなく、紅白戦やオープン戦で結果が出せなければ開幕を2軍で迎えることになるだろう。
 しかし、中原教授が紹介しているビジネスの世界の場合は、「1年目から2年目になるときに急に『防御壁』がとりはらわれ」ることによって問題が生じるのだ。中原教授はこのことについて、「遅れてきたリアリティショック、リアリティショック遅延でしょうかね」と述べている。

 こうしたビジネスの世界とよく似た「2年目問題」は、教師の世界にも存在する。
「1年目はクラスの子どもたちとの関係もうまくいっていて、同僚や保護者からの評判も上々だったのに、2年目になったら学級崩壊を起こしてしまった」といった話は、けっして珍しいことではない。
 ちなみに、教師の場合の1年目と2年目には、次のような違いがあると言えるだろう。

① 1年目には手厚かったサポートが、2年目にはほとんどなくなる。
② 1年目には軽減されていた校務分掌が、2年目には質・量ともに増える。
③ 周囲の目が「まだ1年目だから」から「もう2年目なのに」と厳しくなる。

 1年目の教師に対しては、学校内外での研修や、初任者指導教員の配置などの制度上のサポートがあるだけではない。通常、初任者が担任を受け持つ場合、対応が難しい子どもや保護者がいるクラスはベテランや中堅の教師が担当し、初任者は比較的「楽」なクラスを任されることが多いなど、目に見えない配慮があるものだ(ただし、これは初任者に対する配慮であるとともに、経験の浅い教師に難しいクラスを任せてトラブルが発生することを防ぐためのリスク・マネジメントでもある)。
 しかし2年目になると、こうした特別扱いはほとんどなくなってしまう。まさに、「2年目のリアリティショック」に直面するのだ。

 中原教授は、先ほどのブログの末尾に次のように書いている。

 いずれにしてもドサイアクなのは、1年目はたいしてパフォーマンスを出せず、2年目になって突然移行を行ったら、リアリティショックを感じすぎて早期離職してしまった、というケースかもしれません。

 それでなくても人手不足の学校現場にとって、若手の早期離職は企業以上に大きな打撃となる。それを避けるためにも、2年目になったからといって急に梯子を外すのではなく、周囲がサポートを継続してリアリティショックの軽減を図っていく必要があるだろう。

「いつまで甘やかせばいいんだ」
 という声が聞こえてきそうだが、若手教師に急に辞められてから慌てても手遅れなのである。

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