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キャンパスの中を歩いていたら

 私が放送大学の大学院に在籍していたときの指導教員は、教育行政や教育政策が専門の小川正人先生だった。

 先日、その小川先生を囲んで、勉強会と懇親会が行われた。勉強会の会場は、小川先生がかつて勤めていた東京大学である。

 会が始まる時間よりもだいぶ前に東大へ着いた私は、キャンパスの中を歩いてみることにした。

赤門

 東大のキャンパス内に足を踏み入れるのは、およそ6年ぶりである。

 当時、私が勤めていた横浜市教育委員会は、東大の中原淳先生の研究室と「教員の持続可能な働き方」に関する共同研究を行っていた。そのため、私は横浜市側のメンバーの一人として、月1回のペースで東大に通っていたのだ。

 それは、翌年度に中原先生が研究室ごと立教大学へ移籍するまで続いた。

銀杏並木

 ある夏の日、約束の時間よりも30分ほど早く東大に着いた私は、キャンパス内をぶらぶら歩いて時間をつぶすことにした。

 すると、歩いているうちにある考えが頭に浮かんできたのだ。

「もう一度、大学で勉強してみようかな」

安田講堂

 なぜ、突然にそんな考えが頭に浮かんだのか、自分でもよくわからない。

 目の前の仕事に追われ、新しいことをインプットできていない状況に焦燥感を覚えていたからなのかもしれない。

 中原先生や研究室の町支大祐さん、辻和洋さんとの共同研究をとおして、学ぶことの楽しさを実感したことも関係しているのだろう。

 だが、決め手となったのは、東大のキャンパスがもつ「空気」だったように思う。

 その年の秋、私は放送大学の大学院を受験した。

三四郎池

 あのとき「もう一度、大学で勉強してみようかな」と思わなければ、放送大学の大学院に入学することはなかっただろう。そして、こうして再び東大のキャンパスを歩くこともなかったはずだ。

 人生の一つ一つの場面は断片的なようでいて、意外とどこかでつながっているのかもしれない。

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