見出し画像

うれしくうれしくうれしい


 息子の通信制高校、入学式の日。

 息子とともに入学する子は、200人以上。学校には、入りきらないため、別施設のホールで、入学式が執り行われた。保護者の参加は1名のみ。

 これが、わたしが出る、最後の入学式だろう。そう思うと、ふつふつと胸の奥から、湧いてくるものがある。もし、息子がこの先、進学するとしても、わたしは参加しないつもりだ。もう、本人に全てを任せたい。

 校長先生や、来賓の方、保護者代表の方の言葉を聞き、あぁ、息子は入学するのだ、高校生になるのだと、あらためてうれしくなった。

 ふと、右の人の肩が、細かく震えていることに気づく。泣いている…

 この高校に入る子の多くは、いろんな事情で、不登校を経験しているそうだ。息子だけじゃないんだ、こんなにもいたんだと思う。そして、これまでのそれぞれの歩みを想うと、それだけで、胸がいっぱいになってしまう。

 ここはスタートで、通過点、だけれど、ゴールみたいに思う人だって、いるかもしれない。全く知らない人たちだけど、勝手に、同志みたいに感じている。よかったね。よかったね。

 いろいろな想いがあふれそうになるけれど、今日はやっぱり泣きたくなくて、ぐっとこらえる。

 式は、短くまとめられていて、30分ほどで終わった。

 息子は、ちょっと疲れた様子。さっさと帰りたいと、顔にかいてある。とてもわかりやすい。

 会場を出て、駅に向かう間に、制服のブレザーを脱ぎ、ネクタイも外してしまった。はやい。もうちょっと、写真を撮りたかったんだけど。まぁ、いいか。



 入学式の数日前、末の妹と姪っ子が、遊びに来てくれた。息子は、叔母と祖母のリクエストにこたえ、真新しい制服に着替える。

 思ったよりも、すんなりで、わたしが驚く。お披露目をしたら、みんなから、「似合う似合う」と褒められて、息子は得意げに笑っていた。

 妹たちと、近所の氏神さまのある、お宮さんまで行き、お礼を言った後、桜の木の下で記念撮影をした。

 素直に、写真に収まってくれたのは、末の妹のおかげだろうか。この妹と息子は、大の仲良し。LINEでもやり取りをしているらしい。

 満開を少し過ぎた、桜の下で、満足気に微笑む息子。やはり、またでかくなっている。ちょっと、ぶかっとしている制服が、初々しい。

 なんだか、うれしく、うれしく、うれしい。

 この春を、きっとわたしは、忘れることはないだろう。


この記事が参加している募集

子どもの成長記録

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?