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街の鼓動

朝、街が動き出す。

一日の始まりを告げるようにさえずる小鳥たち。

腕時計を見ながら、せかせかと駅へ向かうサラリーマン。
カツカツと、アスファルトにヒールを打ち鳴らしながら歩く女性。
黄帽をかぶって、友達とはしゃぎながら学校へ向かう子供たち。

どっと交通量が増した大通りの両端で、積荷を下ろしている何台ものトラック。

ありとあらゆる"音"が重なり合い、朝の街に色をつけてゆく。
何重にも重なった音がおりなす、静寂を打ちやぶる生(せい)の鼓動。

ポケットに文庫本を入れて、大好きなコーヒーをすすりながら、
朝の雑踏がひしめく、"生の鼓動"に耳を澄ます。

季節がほんの少し進み、嗅覚が微かな空気の匂いをとらえる。
その瞬間、深い眠りについていた古い記憶が呼び起こされる。
輪郭がぼやけていて、つかむことができないほど古い記憶が。でも確かに懐かしい気持ちにさせてくれる、そんな愛おしい記憶が。

全身で街の鼓動を感じながら、思考をめぐらせる。
とめどないほどの考えが浮かんでは消えてゆく。

どう生きたいのか。
まだ答えは見つかっていない。




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