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【合作】不変のアポトーシス

題:変わらない人

※この作品は茶屋さん(X:@tyaya_vc)との合作です
題・「ゆるぎ」の台詞…… EtO
タイトル・「エフ」の台詞……茶屋さん

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ゆるぎ:ねぇ、いつも外に何を見てるの

エフ:……銀河鉄道。

ゆるぎ:そんな答えはずるいよ。ほんとは?

エフ:ふふ……半分はほんとだよ。探してるんだ、銀河鉄道。

ゆるぎ:さがしたら、みつかんないに決まってるじゃん。あんな夢みたいなのはさ。さがさない人には見えるけど、さがしてる人の目には見えないんだよ、きっと。

エフ:明晰夢、僕には見れなかったなぁ。
ねぇ、探しちゃ駄目なら、どうすれば探さないでいられるかな。

ゆるぎ:愛してるから探すんだよ。愛してるくせして信じてないから探すんだよ。もうきっぱり諦めちまえば?

エフ:諦めるって、どっちを?
探すこと?愛すること?
どちらにしろそれは無理だよ。

ゆるぎ:どっちもだよ、きまってるじゃん。銀河鉄道なんてなくて、カムパネルラは脈無しだよ。頑固だよね君って。寂しがりだね。……ボクはそんなに愛さないからわからないや

エフ:脈無し……ふふっ。
確かに僕は『カムパネルラ』を愛してるけど、なにも愛してもらおうとは思ってないよ。
ゆるぎはなんでも知ってるようで、愛には詳しくないんだね。

ゆるぎ:愛するのと愛されるのとは違うの?愛って鏡合わせじゃないの?こちらのボクが愛すれば、鏡越しのキミがおんなじにボクを愛するんじゃないの?

エフ:愛は扱う人で形も意味も変わるんだ。鏡合わせの愛もあれば、全く違う愛もあるんだよ。

ゆるぎ:信じらんない。ボクはそんなのに投資したくない。ボクの何物も賭けたくない

エフ:あははっ、そうだね。
偉そうなこと言ったけど、僕らは結局愛なんて知ることは出来ない。どれもこれも聞いた事があるだけの御伽噺さ。

ゆるぎ:…ねぇ、目を閉じればいいじゃん。
こんな暗い夜なんだから。こんな暗い夜くらい。愛も銀河鉄道も見えない目を開けていなくていいよ。キミが目を閉じても誰も責めないよ。
目を閉じたらきっとさ、…

エフ:そうかな?
……そうかも。
でも、目を閉じたらきっと。
次に目を開くのを酷く怖がってしまうから。
やっぱり僕は、こうして外を見ることしか出来ないよ。
カンパネルラが乗ってる……「乗れているはず」の夜汽車を探すよ

ゆるぎ:キミはずっとそうやって目を開けて窓の外ばかりみて。それがおとなになることなの?
キミはずっとボクをおいていくんだ。
(囁くように)何を探すんだよ。目を閉じたら、そこにいるよ。夜汽車も、カムパネルラも。
成長し損なったボクはキミの瞼に閉じ込められて、ずっと一人だよ。あの時から。

エフ:ゆるぎを置いてくなんて、そんなことするわけないじゃないか。
第一、僕達はここから出られない。
(ゆるぎの方を見て)そうやって子供じみた嫉妬を向けてくれるゆるぎが大好きだよ。
成長なんてしなくていい。誰かと一緒になんかならなくていい。
だから僕は、カンパネルラを探すんだ。君と僕以外、全員が乗った夜汽車を。

ゆるぎ:ボク、キミのカンパネルラになりたかった。キミとどこまでも汽車に乗って、ボクもキミも降りなくて、誰も乗ってこなくて。キミの寂しそうな目が窓の外じゃなくて、ボクの方を向いて。
あのね、大人になっていくキミが怖い。でもどれだけ大人になっても、キミって人は変わらないから、不思議だね。

エフ:……ゆるぎはまだ変わりたいんだね。「なりたい」なんて。
変わる必要は無いんだよ。ここにはもう君と僕以外誰も居ないし、きっともう誰も現れやしない。窓の向こうは真っ暗で、ガラスには君しか映らない。
ゆるぎもずっと変わらないで。
大人を恐れて、憧れて、期待と不安に満ちた好奇に染めて。
その眼差しで僕は、そうあれるんだから。

ゆるぎ:ボクずっとキミを見ていても良いかしら。いいのかなぁ。キミがいいっていうんだからいいのか。
じゃあボクここで見ているね。窓の外をずっと見ているキミが、もしかしてボクの影を見ているかもしれないから、ずっとここで見ているね。キミが窓の外を見ていられない日はボク、キミの代わりに見ていてあげる。いいんだよね。これでいいんだ。

エフ:ありがとう、ゆるぎ。ありがとう。そうして2人で毎夜を過ごそう。汽笛の音も車窓の明かりも。ずっとずっと、無くていいよね。
さぁ今日はもう眠ろう?お歌を唄ってあげる。今日はどんなお話がいいかな。

ゆるぎ:うん。星巡りのうたがいいな。…おやすみ、エフ

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