労働判例を読む#329

今日の労働判例
【学校法人明浄学院事件】(大阪地判R2.3.26労判1246.91)

※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法)
※ 司法試験考査委員(労働法)
※ YouTubeで3分解説!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK

 この事案は、学生数の減少などの経営危機に瀕した学校Yが、教員Xらを整理解雇した事案です。裁判所は、整理解雇を無効と評価しました。

1.裁判所の判断
 判決の中で裁判所は、判断枠組みとしていわゆる「整理解雇の4要素」を上げました。すなわち、①人員削減の必要性、②解雇回避努力の履行、③人選の合理性、④手続の妥当性の各事情を総合的に考慮して判断する、としたのです。
 そのうえで、①人員削減の必要性について詳細に検討を行い、一定程度の教員削減の必要性は認められるものの、退職者も含め当初想定した人数を大幅に上回る人員削減が行われたことから、少なくともXら2名を解雇する必要性に疑問がある、としました。
 さらに、②解雇回避努力の履行と③人選の合理性については、Xらの担当する保健体育の教員が、6名から1名になり、慌てて3名を採用している点などを指摘し、②③いずれも合理性が無い、としました。
 なお、④手続の妥当性については、判断枠組みとして示したものの、具体的な事実のあてはめは行っていません。①~③の検討で十分結論が出るから、ということでしょうか。

2.実務上のポイント
 ①について、ある程度までは合理性を認められていますので、人選や方法を間違えなければ整理解雇が有効とされた可能性は十分ある事案と思われます。
 けれども、よほど混乱していたのでしょうか。退職者が想定外に多く出て、慌てて教員の新規募集を行うなど、教員の意向などを学校側が十分把握しないまま解雇が進められました。経営や現場が混乱している状況で、従業員と十分なコミュニケーションが取れておらず、その中で整理解雇を断行したことが、整理解雇を無効とされた大きな原因のようです。
 混乱した状況だからこそ、じっくりと従業員とコミュニケーションを取る必要があるのです。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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