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夏プレイリスト

茹だる炎天下がまだまだ続いているが、8月ももう少しで終わる。気温は一向に下がらないまま季節は秋に向かっている、はず。

というわけで夏も終わりそうな頃合いに夏プレイリストの話をしたい。

まず私は夏が好きなわけではない。暑がりな体質も相まって、外に出て少し歩いただけでも汗をかくのは正直不快だ。とは言えこの暑さが無いと、涼しい風が吹いた時の心地良さや、冷たい飲み物を飲んだ時の爽快感は味わえないのだろうなと思う。そうすると、真っ向から嫌悪感を抱くのは少し過激な気もする。そんなわけで夏と上手く付き合うために、好きな音楽でも聴いてゆっくりできれば良いかなと思いながらプレイリストを作ってみた。

明確なコンセプトはないが、インドア派の自分にとってはバーベキューとか海水浴はあまり似合わないため、比較的穏やかな夏を過ごすための曲が並んでいる気がする。


まず冒頭は、近年の夏キラーチューンを並べてビビらせたい流れ。インドア派の夏を代表するかのような、BPMは遅めでヒップホップ色強めのラインナップ。

特に1曲目のLucky Kilimanjaro「ファジーサマー」は、単体でこのプレイリストを説明し切っていると言っても過言ではないほど、私が思う夏の雰囲気にピッタリの曲。カラッとした暑さではなく湿った暑さを想起させる。

世代的にはceroが浮いている気がするが、ここで王者の貫禄をいったん見せておく感じ。

ここから更にヒップホップ色強め。RIP SLYMEの「楽園ベイベー」で歌われるような文句のないシチュエーションは私の人生とはほぼ縁がなく、この曲はもはやカラオケで歌うための曲だ。これだけあからさまに"陽側の者の夏"を描いておきながら、気怠さと脱力感も味わえるところはさすがの名曲。

続くYeYeとGinger Rootのコラボで小休止。この曲間のように前の曲のアウトロと次の曲のイントロのキーが繋がると気持ち良い。

次のお気に入りゾーンは、Laura day romance 「潮風の人」 ~ サニーデイ・サービス 「冷し中華」までの、フォーキーなサウンドでじっくりと流れる時間。ここの7曲だけ切り取ってコンピレーションアルバムにしたらバカ売れするんじゃないかと思うくらいの傑作選である。

どの曲にも共通しているのがメロディーの良さである。独特なコード感や言葉の選び方にも定評がある面々だからこそ、純粋に美しいメロディーラインが聴こえてきたときに感動する。

Laura day romance 「潮風の人」、羊文学「夏のよう」、UlulU「君と過ごした夏」などを聴くと、子どもの頃を思い出すようで郷愁に駆られて苦しくなることすらある。子どもの頃には確実に存在していなかったはずの現代の音楽なのに、なぜか昔のことを思い出して寂しくなる感覚は生涯謎のままだ。

ミニアルバムを聴き終えたらYUIの「SUMMER SONG」で流れを変える。この曲も、MVのような甘酸っぱい青春は経験してないが、間違いなく青春を共に過ごした一曲である。イントロの1音で夏に引き込まれる感覚が素晴らしい。

ケツメイシ 「夏の思い出」 → the band apart 「酩酊花火」 → 赤い公園 「Highway Cabriolet」の流れもお気に入り。あからさまにヒップホップを並べたゾーンとギターロックを並べたゾーンをシームレスに繋ぐのがバンアパ。「酩酊花火」を聴きながら夏の夜長にビールを飲んで花火を見る組み合わせを試してみたら、完璧だった。

そして「夏の思い出」こそ夏の思い出の曲。小学生の頃にとにかく聴き込んだ。「楽園ベイベー」と同じく歌詞を見ずに空で歌える自信がある。

「Highway Cabriolet」以降の盟友セットもお気に入り。夏の爽やかさだけでなく、ドロッとした湿気に満ちた3曲。「サマーナイトタウン」のリレー形式の歌唱パターン、アイドルグループではよく見るがバンドでやるとここまでカッコいいのかと衝撃を受けた。

この夏に赤い公園の解散ライブのBlu-rayを見返したが、サポートギターのキダさんがコーラスで歌っている瞬間が映る度に目頭が熱くなった。

ここからフレッシュな面々と大御所を適度に並べていくゾーン。

Kroi「熱海」は彼らにしては珍しく疾走感に溢れつつも、根底のファンク愛がグルーヴに見え隠れする名曲。この曲を初めて聴いた時に真っ先に頭に浮かんだのが、桑田佳祐「波乗りジョニー」だった。後から調べて知ったのだが、「波乗りジョニー」のMV撮影地は熱海ではないものの静岡県の下田市、実は土地もリンクしているのだった。20年もの年月を経てもなお、昔の曲と現代の曲の情景や音楽性の繋がりが見えてくるとどこか感動する。

桑田佳祐の鎌倉イメージで繋がるのはレミオロメンの「花火」。冬のイメージが強烈な彼らだが、この曲は彼らの中でも特に大好きな曲。コード進行の美しさと、どこかとぼけた言葉の選び方の不均衡さが絶妙。

鎌倉に触れたならこの夏の傑作にも触れておきたい。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『サーフ ブンガク カマクラ (完全版)』から1曲入れとこうと思い、サザンや桑田佳祐への愛が特に溢れているこの曲をピックアップ。

終盤は胃もたれするくらいJ-POPの名曲が続く。間に入れ込もうと思ったが隙間が無かった。ストレイテナーと秦基博は繋げておこうかなという感じ。プレイリストには入れなかったがテナー版「鱗(うろこ)」も一聴の価値あり。

ところでこの曲って何故読み仮名がついているのだろうか。例えばスキマスイッチの「奏(かなで)」は「そう」と読む可能性もまあ半分くらいはあるのでまだ分かるが、「鱗」はさすがに初見でも「うろこ」と読むよなと。有識者の方がいたら背景を教えてほしい。

終盤の Tempalay「そなちね」 → iri「染」 → 宇多田ヒカル「大空で抱きしめて」は、現生から離れて時間や空間を超えるような、どこか別の世界線にワープした気になれる流れ。過ぎ去った夏の景色に思いを馳せながら、体が宙に浮くような感覚を味わえる。

ちなみに、iriの「染」は「しみ」と読む。この曲こそ読み仮名が必要ではないだろうか。

ラストに並べた星野源 「ミスユー」 → YUKI「夏のヒーロー」 → Awesome City Club「8月とモラトリー」のストリームは、まさに夏の終わり。これから過ぎ行く季節のことを思い出しながら、あれだけ暑くて苦しんだ今年の夏との別れを惜しむ。

記事の冒頭でも書いたが、たとえ暑いのが嫌だとしても、暑い季節が無くなってしまうことを想像するとやはり物足りない。あの鬱陶しさを思い出しながら温い夜風に浸る時間が、人生には必要なのだ。

また来年の夏が来たら、プレイリストをアップデートしなければ。

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