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年末に世界遺産に行ってきた話



「まだ赴任したばかりで、年末年始に日本に帰るのは印象が良くないから、やめとけ」という理由で帰国を断念することに。

何でやねんという思いは強いものの

まぁ、郷に入れば郷に従えということで

インドネシアで新年を迎えることになったのだが

会社はカレンダー通りで12/31と1/1しか休みがなく

その前後でどれくらい有給休暇が取れるのかも直前までわからなかったので、結局ボッチで過ごすことになった


上司から「どっか行くの?」と言われて

ジャカルタすらまだ見て回れてないので、ジャカルタ近辺観光しようかと思ってます、と言ったところ


「せっかくやねんから、バリかジョグジャカルタくらい行けよww」と言われ


まぁ、それもそうだと早速調べてみた

バリ島は早く行ってみたいものの、オッサンが一人旅で行ったところで寂しさ募るだけだなと思い

古都のジョグジャカルタに決定

ジョグジャカルタとは、首都ジャカルタのあるジャワ島の東部にあり


世界遺産のボロブドゥール寺院遺跡群などがある観光地である

ジャカルタからの往復航空券を買い、ボロブドゥール寺院遺跡+プランバナン寺院遺跡のツアーガイドを申し込んだ

ホテルまでの車送迎+ガイド(英語)、トータル105km、8時間の行程で約15,000円

それぞれの寺院入場料約3,500円は別途

まぁ、そんなもんかと思いながら、29日夜のフライトでジャカルタからジョグジャカルタへ向かう

フライト時間は1時間程度

ジョグジャカルタ国際空港についてgrabでタクシー捕まえると、なんとホテルまでの片道約3,000円

この国のgrabにしては高っ!

と思ったら、市街地中心部のホテルまで50kmくらい離れてました

まぁ、そらそうなるわな

無事ホテルに着いたくらいで、WhatsAppに知らない人からメッセージが。

メッセージは、翌日のガイドからで、「何時にピックアップが良い?」と聞かれたので、ネットに載っていたボロブドゥール寺院のてっぺんで日の出を見るというのをしたいと伝えると



「あかんねん、コロナ以降、それ無くなってん」


なんですと


まぁ、確かにツアーは単純に回るだけの内容のやつしかなかったけど、そういうことだったのね


ほな何時がええの?と聞くと


「渋滞避けたいなら、6時がええよ」

というので、6時に来てもらうことになった

翌朝、6時前に「もうロビーにおるから、また連絡して〜」とメッセージが入り

インドネシア人なのに5分前行動とは、やるやないかと関心

ホテルのロビーで対面を果たし、軽く雑談してると

「日本人やのに英語上手いな!」

という、もう食傷気味のコメントを頂いた

「いや、実は昨日も日本人をガイドしてたんやけど、なかなか通じなくて苦労したんよ」

まぁ、想像に易い


日本という国は国の成熟度と国民の英語能力に大きな乖離がある世界でも珍しい国だからねぇ

なんて話しながら、車に乗り込んだ


「渋滞無かったら1時間ちょいで着くわ」


なるほど、1時間もトークタイムがあるのか

ということで、チャンスとばかりに最近勉強し始めたインドネシア語のことを聞きまくる

うちのスタッフに聞くと「それらは同じ意味で違いはないよ」と返されるような質問にも

英語流暢な彼は、しっかり文法的に何が違うのか的確に答えてくれる。


これは得やがな!インドネシア語の授業まで兼ねとる!!


ということで道中インドネシア語授業を受けながら


あっという間にボロブドゥール寺院遺跡に到着


エントランスに向かっている時に彼から「インドネシア人と外国人で料金が違うのよ。外国人は約4,000円ね」と言われた

まぁ、ネットで見てた通りの値段だったので言う通りに外国人用の券売所に行くと、向こうのスタッフから

「KITAS(居住許可証)持ってますか?」

と聞かれた

駐在員は当然持っているので、見せると

「インドネシア人と同じ値段になります」ということで

500円になった。

お得ぅ!!!


ガイドの彼も目を丸くしながら

「知らんかった!めっちゃ得やん!」


今度からガイドする時はKITASの話をしたってくれ、と

エントランスを通り抜け、5分ほど歩くとすぐにボロブドゥール寺院遺跡が目の前に



これがインドネシア最古の仏教寺院か

ガイドの彼に、ボロブドゥール寺院にまつわる話を聞いていると

「日本も仏教やんな?日本もこんな感じの寺あるの?」

いや、日本の寺は基本、木造やな。こういう石造は無いから、見てて面白いわ、と

「え?なんで木?石があんまり豊富に無いとか?」

いやいや、木のほうが遥かに加工性高いからやで。日本は気候的に木造でも腐らんのよ。インドネシアみたいな南国やと木造なんかで作ろうもんなら、速攻で腐るやろ。その違い。


「へぇ〜なるほど。ちなみに日本で一番多いのは仏教やと思うけど、二番目は何なん?」

いや、日本で一番多いとされてるのは仏教で次は神道やと思うけど、外国人が思うような宗教の棲み分け感覚ではないで。

「そうなの?」

たぶん、日本人に宗教聞いたら、9割以上が仏教と答えるやろうけど、仏教徒としての行動は一切とってない。というか、知らん。
盆に先祖の霊を迎えるために実家帰るくらい。

「先祖の霊を迎えるとかいう儀式あんの!?初耳!!」

あるよ。それはまぁみんな何となく知ってるし、やってる。それでも昨今は減ってるんちゃうか。

「へぇ」

で、棲み分けの話は、そもそも日本は宗教感が混ざってるところがあって、盆は寺に行って、大晦日は除夜の鐘を聞きながら、正月には初詣に神社に行く。神社は神道やからな


「除夜の鐘って、何なん?」

年末に108回叩くねん。煩悩の数と同じだけ叩くことで、煩悩を消して新年を迎えるという儀式。

「凄い!!仏教の煩悩の話は聞いたことあるわ!このボロブドゥールも3層に分かれてて、1層目、2層目まで装飾があるのに、一番上の3層目は天国とされてて、そこには装飾が無いのよね。煩悩が無いからって聞いた」


そもそも仏教は輪廻転生が基本で、生まれ変わるのはペナルティとされてるねん。
煩悩を捨て去り、無我の境地に行くことで、この輪廻から抜け出せるとされてて、それが仏教の目指した先でもある

個人的には輪廻転生は別に悪くないと思うけどな(笑)

「なるほど。ちなみに神道が信じる神って、何なん?」

良い質問やね(笑)

基本的には八百万の神という概念で、万物に神は宿るとされてるから、神社によって祀る神は違う。
その中に天照大神ってのがおって、天皇はその子孫とされてる。

「へー!天皇は神の子孫って日本人は信じてるんや?」

信じてない(笑)

「どういうこと!?(笑)」

そういう設定があることを理解してる(笑)

「何やねん(笑)」

ちなみに八百万の神の中には他の宗教の神も含まれてる

キリスト教もイスラム教も。

「へー!でもイスラム教の神はアラーだけやけどな」

普通はそうよね。

「ちなみに願い事を書いて竹に吊るす、七夕はどっちなん?神道?仏教?」

どっちでもない(笑)ただの慣習。

「何やねん(笑)」

いや、ちゃうわ。Googleによると神道っぽい。でも、ソースがないから怪しい。
まぁ、諸説あると言うことで(笑)
あ、でも絵馬は神道やで。
今度、日本人旅行者のガイドに当たったら、同じようなこと聞いてみたらええんちゃうか。また違うこと言うかもしらんし、そもそも説明できる英語力がない可能性高いけども。

「それな(笑)てか、日本人の発音って独特やん?あれって、アルファベットを一回カタカナに直すかららしいね」

そうそう、よく知ってんな!

「だから、例えばinviteをインバイトって書くから、音としてはinbaitoになって、まるで違う単語になるよね」

そうなのよ。日本の英語教育の敗因やね。まぁ、別にそうやって教育はしてへんねんけど、カタカナ変換を広告とかでも普通に使い過ぎた弊害やな。
そもそも日本語は表意文字で、表音文字文化じゃないから、音に対して鈍感なところもある。

てか、ガイド続けてくれてええで

「あ、もう終わりよ。ボロブドゥールの説明」

終わってたんかい

「ほな次行く?」


ということで、プランバナン寺院へ90分かけて移動

プランバナンはヒンドゥー教の寺院としてこちらも世界遺産に登録されている


プランバナン寺院のガイドもそこそこにまた彼から質問が来る

「日本ってさ、国土も狭いし、別に資源も無いし、人口もインドネシアの半分やん?でも、トヨタを筆頭に世界トップレベルの企業が山ほどあるやん?何でそんなことなんの?しかも、核爆弾落とされてるやん。そっからどうやって這い上がったの?」

おいおい、質問が濃いな

ほんでなんや?君は日本のファンか?


まぁ、まず日本の企業が世界トップレベルを占めてたのは20年以上前の話で、今残ってんのはトヨタくらい

トヨタが潰れたら日本の沈没は免れないレベルにまでなっとる

「マジ!?でも、インドネシアの車を見たら、トヨタを筆頭に日産、三菱、ホンダ、スズキ、ダイハツと日本の車しか見いひんやん。後はミニテスラと言われてるヒュンダイくらいか。」

あぁ、まぁインドネシア市場の車に限るとそうかな。でも家電はもう中韓にやられとるやろ。

「確かにそうかもしらん」

で、何故日本が強かったかという話ね

さっきの宗教観とも繋がるとこあるんやけど、日本人は宗教感覚が薄いって話したやん?
あれには理由がありまして

「ほうほう」

その昔、江戸が終わって明治になったころに、海外に行った日本人が、今と同じような質問をされたのよね

「どんな?」

日本人は宗教が無いのに、どうやって道徳教育をしてるんだ?と

「それめっちゃわかる!で、何て答えたの?」

で、武士道がその役割を担ってると答えた


「武士?なんか聞いたことある。確か、armyだよね?」

そうそう、侍だな

「サムライ!!ニンジャ!」

それそれ。武士道は言わば、SAMURAI SOULってとこや。
武士としてどうあるべきかという規範に沿って、滅私奉公を基本として教育されてたのよね。日本において宗教の代わりになって人々のあるべき姿を説いてた。

で、この滅私奉公の精神が、日本企業及び日本を世界最高峰まで押し上げた主要因なのよね

だって個人の幸せよりも、企業としての成功のために人生を捧げたんやから

父親なんて家庭を顧みず、永遠に仕事、仕事仲間との飲み、ゴルフ

家事育児は全て母親

「それ知ってる!なんか日本で週休が二日になった時に、父親が休みの日に何したら良いかわからんとか言うて話題になってたよな!?理解出来な過ぎる発言!!(笑)」

そうそう、そういう個人、各家庭の幸せを放棄する代わりに、国のために頑張ったと。
そら、世界一になるやろ。1億人がそれやってんねんぞ。

「確かに!(笑)インドネシアじゃ考えられん」

ただまぁ、色んな原因があって今は軒並みあかんなってるよね。

「トヨタが潰れたら日本潰れるって言うてたやん?何でなん?」

トヨタが潰れたら、数多の関係会社が連鎖で潰れるからやな。

「でもさ、トヨタって、EVで完全に遅れとってるやん?ノキアの例見ろよって思ったんやけど、あれなんでなん?」

ノキアの例とはちょっと違うと思うよ

「どこが違うの?」

ノキアは単純に己を過信して舵取り見誤った典型例やけど、トヨタはEVに舵切りたくても切られへんかったのよ

「なんでよ?」

さっきも言うたように、トヨタは数多のサプライヤーがおってやな、大体エンジン関連なのよ。EVに舵切ってもうたら、ほとんどが倒産して、多くの人々が路頭に迷うし、日本経済も大ダメージを食らう

それらを守るためにエンジンを活かした道を模索せざるを得んかった

で、今になって、トヨタは判断を誤ったと言うてやるのは流石に可哀想

「ほぇー、そんな事情があったんや。しかし、何でも知ってんな!何でなん!?」

いや、知ってることしか知らんし、俺の話が正しいとも限らんで。てか、君の方が日本のことよう知っててビックリするわ(笑)

「実は日本で仕事も探してるんやけど、日本で働くのってどう思う?」

マジ?ええんちゃう?でも、日本語喋られへんかったら、正直仕事見つけるの難しいで。後は、わけわからん、技能実習生という奴隷制度には騙されないように。

「何それ!?現代の話?」

今なお進行中やがな、アジア人を騙して日本連れて行って、パスポート取り上げて、賃金もろくに払わず奴隷のように働かせるっていうて、問題になってるんやから


「怖っ!じゃあこの採用募集情報とかもそうなん?」

彼の差し出したスマホ画面を見てみると、普通の転職サイト情報が載っていた

「このmarimo global tecnologyっていう東京の会社知ってる?プログラマーで月収30万円くらいって書いてるんやけど」

なんや君、プログラミングも出来るんかいな!?

「いや、今まさに勉強中やねんけども」


この会社を知らなかったのでオープンワークで調べてみると、同じような情報が載っていた。ブラック企業ということでも無さそうだったので、給料が額面なのか手取りなのかだけ、事前に確認しておくように伝えた


もし、marimo global tecnologyの採用の人がこの記事見てたら、インドネシアからの応募は彼だと思ってください(笑)

日本語は喋れませんが、博識で良いやつでした。


という感じで、世界遺産巡りは終了


世界遺産の話より、他の話で盛り上がりましたとさ。まぁ、いつもこうなる。


歴史って何の為に勉強する必要あるの?みたいなこと、言う人いるけど

こういう時のためなので、世界に羽ばたく学生諸君はちゃんと興味を持って学問するように!!

#学問しぃや #インドネシア

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