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中学生の頃6~嫌な奴~

どうしようもない思い

彼を失ってからは、もうどうしようもない消失感
いつもそこで微笑んでくれていたのに
同級生の好きな人たちはそこにいてくれて、いつものように会話して。
でもそれは彼じゃない
誰かが誰かの代わりになるものじゃない
私は1人1人がそれぞれ好きなんだって改めて思った

だからKくんは私の中でKくんでしかない
彼はたった一人の存在で、私の初めての全てを貰ってくれた人
本当に全力で私を包んでくれた
優しさも励ましも温かさも安心も幸せも気持ちよさも全て与えてくれた人

私は彼に何かを与えることが出来たんだろうか
今はそんな風に考えられるけど当時は何も思えなかった
忘れた方が楽になるんじゃないか、彼がいないなら自分も消えてしまいたい
いろんな考えが巡ったけど、ただただ毎日が過ぎていくだけだった

なんで幸せそうにしてるの?

3年生、受験も迫ってきたけど恋愛にもみんな忙しい
毎年夏まつりで告白をする人が多く、秋にはカップルが大勢
去年はあのお祭りで彼と初めてのキスしたんだ
何を見ても涙が出る
もちろんお祭りにはいかなかった
数組のカップルが誕生したっていう噂はすぐに駆け巡った
引退のない部活に入っていた私は放課後の教室で一人SAXの練習
廊下ではイチャイチャしてる二人がいた
普段の私ならそんなこと思わないのに、心が凍ってたのかな
(なんでそんな幸せそうな姿を見せてくるの?嫌味?)
向こうは私の存在なんて見えてないし、気にもしてない
演奏する音色はきっとバックグラウンドミュージック
でも私の気持ちはイライラして爆発しそうだった
人の幸せを妬む汚い気持ちしか残ってなかった

悪女になり下がる

まだ一緒に帰ったりするのは恥ずかしいのか彼女だけ友達と帰っていった
彼氏は私のいた教室に入ってきた
鞄が置きっぱなしだったから
ただそれだけ
『このか部活まだ引退しないんだ』
「うち卒業式より後に最後の演奏会があるから。引退ないんだよ。まぁみんな受験勉強あるからこの時期から高校決まるまでは来ないんだけどね。私推薦だし。」
そんな他愛もない会話
なんかとてつもなく意地悪したくなった
幸せそうな顔が憎らしかった
別にこの二人に恨みなんてないけど

私が練習する一つ前の席に座って話していたHくんをじっと見つめる
無言で
『なに?』
無言に耐えられなくなったのか聞いてくる
「なんでもないよ」
それでも視線を外さない
楽器を机に置き立ち上がり彼の前に立った
帰ろうと彼も立ち上がる
距離が近い
彼は私を避けて帰ろうとする
腕をぎゅっと掴んだ
突然のことに驚いて立ち止まってこちらを振り返る
顔と顔の距離がめちゃくちゃ近い
少し背伸びをしたら彼の頬に唇が触れた
『え????』
彼はびっくりしてた
「あ、ごめん・・・」
それだけ言って私は楽器を手に音楽室へ戻った

どうして?

次の日Hくんと何度も目が合う
そりゃそうか
いきなりあんなことしたんだもんな
ごめんよ
昼休み廊下で話しかけてきた
『あのさ、昨日のあれ、なに?』
「なんでもない」
『いや、なんでもなくないだろ』
「怒った?」
『・・・・怒ってるわけじゃない』
「良かった」
彼女の姿が見えたので私は教室へ戻った
楽しそうな声が聞こえてくる
ほんとムカつく

それから数日して帰り道にHくんがいた
男子数人でしゃべっていたようだ
素通りしようと思ったら解散になったらしいHくんが並んで歩き始めた
「こんなところ彼女に見られたらまずいんじゃない?」
『このかだし大丈夫だろ』
どういうことだ(怒)
ド田舎ではないけど畑の間の細い道
両脇には身長くらいの垣根がある
彼の右腕に両腕を絡めて見上げてみた
目を逸らされた
照れているらしい
しばらくするとゆっくりこっちを向いた
甘えた顔で見上げてみる
また少し背伸び
そっと目を瞑る
キスしてきたら私の勝ち
突き放されたら負け
ゲーム感覚

チュっと唇に感触が
勝った
向こうからしてきたんだからね
別に好きでもないHくんだったけど、彼女ができるくらいだからそれなりにかっこいい
タイプではないけど
首に両手を回してもう一度おねだり顔
Kくんに教わった甘え方
今度は長めのキス
完全勝利

「誰にも言わないでね。私も言わないから」
『言えるわけない』
真っ赤な顔して言う
かわいいじゃん(笑)

最低なわたし

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