Ⅰ．エリ・エリ・レマ・サバクタニ　　二十四句

カレー煮る時の底よりあみだくじ

しゃぼんだま今はちきれるサバクタニ

わが神の死後にドリームキャスト頌

陽のもとに村上龍の点字ふれ

面堂の黒点日記とぎれたり

双羽黒無数にたてり夢まくら

天と地と山梨県の雅楽学

白昼に山村美紗の蟹うばう

キャラクターソングのなかの維摩経

ジャズメンを春日野部屋に収容し

鎖もつレスラーがみたはずの巴里

捨身してかえるマルセル・プルースト

赤羽の筆禍教室しずみゆく

鉄の字をこわがるあにといもうとと

南雲屋にエクスタシーの鰐かりて

ドサ健と奨学生の同時の死

渋谷から魚類図鑑を買って寝る

腐女子らにまくらがえしの零時くる

アメリカの西日暮里にひとさけぶ

サイコパス音頭に妊婦むらがらせ

また酒保に宇宙くじらのいない初夏

南極の会議室からほころぶ世

マタニティ・ドレスに大蛇縫いこまれ

城の崎が生命体によごれれば

Ⅱ．みづうみの品質管理室　　十二句

ナベサダのひとりが眠る九品仏

劣品のボーヴォワールの傘を出て

蕨市の埋蔵品に山の音

みづうみにしずむ品質管理室

桃おちて気品のセサミストリート

康成のせりふをつける陀羅尼品

画中画に品詞をかえるあるまじろ

テレピンの季ちがっている珍品屋

しながわに世界の終わるいるかショー

踊子を納品させるテーマ曲

らせん描く粗品のなかのこどもたち

からあげて品品品のゲシュタルト

Ⅲ．鮎川哲也賞作家のショートソング　　六十五句

長崎のラッパしたたる黄金比

言語化をされる和尚に首がない

手妻師が地底へもぐる四月尽

御園区の千のプラトーひとつへり

朕の字をヘリウムガスに書きかえる

なぞり書きキングコングに弓を引く

蘭鋳の大化改新された檻

磁石手にキテレツ斎が牢をでる

なぞなぞで語られている清浄機

オカルトの球団に吸盤を貼る

はちみつを階段に塗る一発屋

当たり屋が当たり空想する家族

ぬるゲーの地球にあかい月かかる

もずく酢を劇場版の鍵として

濁世に球種をえらぶねぎ農家

サージェント・ペパーズが撮る弁当屋

ロボコンが壊れ今昔物語

宇宙語を無言にうつすはぐれ刑事

長嶋が頂き女子にまつわれば

焼そばがない許可局をでてゆこう

怪獣の自死を漢詩であらわせば

皮を貼る円盤おりてくる朝に

きりもなく後醍醐帝がなげる餅

式場にカリフラワーのひどくあれ

あかく塗る源静香らのさなぎ

エミネムが木馬またがるちからわざ

園芸家ＡからＺ道着買う

母の死をしるして犬の生活者

天皇のすがた崩れる桜鍋

猿肉をうその冷凍保存する

しんきろう昭和天皇猿を飼う

はつなつのスコットランド・ヤードの儀

函つぶれ昭和天皇大図鑑

映画館ひとつの蟹がためされる

奇声あげレタスクラブを床に置く

サンタ城暮れて夏への扉あく

麩がうかぶバラバラマンの美意識に

懸命の谷おりをするぎゃんぶらあ

亀を焼く鮎川哲也賞作家

海抜がひくすぎているでうす画家

豹の名でうまった源氏物語

ベルリンと麻婆茄子のなすりあい

鱶がみる地球内部の異性愛

回想にしょくひんマンの固めわざ

夏を待つ遺伝子図鑑みくらべて

水戸藩のかくまで遠きコルサコフ

護謨のばす街に隕石ふってくる

轟の言語遊戯の夏将棋

四月尽植田まさしの描く凶器

バフチンの飼育係りにあまたの死

三点の倒立をする苦の世界

魔術師がみずから消えるうるう秒

首塚にロマンス詐欺のはじまりぬ

倍達が現象学の都市にたつ

パパイヤをかごめかごめのなかに棄て

宣教師一家のけずるけずりぶし

時間の矢あび染之助染太郎

水のない月面都市の水餃子

どんぶりがウラシマ効果後にかえる

十二支に田端義夫をねじこめば

影絵果つウォークマンの猿の目に

ババロアに新米刑事おびきよせ

卵ゆでバンザイ・クリフさらにゆで

分裂の星にそれぞれかりんとう

オードリー・ヘップバーンの娑婆にでる

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