姉の墓あばいて雪の解けるおと

受難日の納豆いまだ糸引かず

脳の日とおかず刑事が噴きでる日

鉄筋でピラニアを追う絵巻物

和の国に新間寿の影絵みて

狂わずに西太后のひもを切る

波紋都市家鴨の母が死にながら

人造湖鵞鳥のかたちふりかえり

縮尺を変えるとここにお庭番

鼻毛抜くやつが戦車でやって来た

式守がいないメキシコへの夕陽

市立ってスパイの性器もちよれば

ゼロの点・点・点・予審つづく・点

房総を忘れたころのさかがたき

紀文からボーヴォワールのひげ根抜く

玉ねぎの下に刺される峰不二子

ぶんか社がラドン温泉場たもつ

法然のタップダンスの真っ昼間

あかんたれ伊勢物語区切られて

訳すれば呉田軽穂のやぶしらず

弁髪を落とすポケットモンスター

琴を組む桂文枝の浜辺にて

海中のドン・キホーテを潜り読む

司令室ライナス毛布焼きすてて

倒叙して縛られている珍句集

手ブレして潜水艇の部品ブレ

ルノワール類比戦争におわせる

噴火後の阿川佐和子の垢を模し

豚テキをわすれたはずの太郎冠者

茫然とキムチを漬ける猿の島

もろもろの音素から成る成田山

仮名で書くこれがミャンマーかくとうぎ

布袋屋が光クラブの光似せ

波寄せてたったひとつのあんまん屋

平原に簿記の作者をつかまえる

亀虫の点対称に或る運河

ミロンガにむすめふさほせ待ちつづけ

天文に駱駝の神の後頭部

まだ父がいなかった日の方丈記

脱臼をあそぶトーマス・マンの孫

焼肉のたれがまったく流星雨

虔十の人造言語にて海女は

止まり木に加害妄想する春か

魚醤なき犬神家から乗る列車

メイドカフェ金丸信が憑依して

うつくしい豚に会いたい石遊び

怪獣のまま溶けてゆく時の崖

季語でなくレースを編んだ崖の下

わさび抜くアンクル・トムの北枕

塩田の名前のなかに郷ひろみ

血腫換え中野学校文化祭

えぼ鯛がニトリ以上の脳のなか

メリエスの月にアマレス三銃士

化政期の壺の名をつけ犬を飼う

皇帝の脱魂中の潮汁

ひとり聴く安田忠夫のひも理論

お茶漬の味のヒクソン・グレイシー

海苔を買う世界ほろぼす海苔屋にて

レーザーが糺の森に反射して

パブロフの犬のなるとをみていたい

惑星にひとりひとりのコラーゲン

三月の遮光器土偶ふえてゆく

メンデルと豆に集中する木村

野獣派が描くサイキック紙芝居

荘重の市歌が流れるくじ現場

崩落後君と長州力をのせ

白樺派この世にπがあるかぎり

ロボットの独語つづける朝歌舞伎

緯度の上ジル・ドゥルーズのとろろ摺る

ブーメランパンツに消えてゆくじぶん

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