見出し画像

こんな映像を観てきた(ナショナル・シアター・ライブ 2023上半期)

これまでも時々見ていたNTL。
せっかくなので、今年から鑑賞の記録をつけてみるとします。
(既にけっこう記憶は曖昧だけれど…)


レオポルトシュタット

トム・ストッパードの最新作。
昨年秋に上演されていた新国のプロダクションは未見だったので、作品を観るのはこれが初めて。

トム・ストッパードの戯曲の中では易しいという前評判を聞いていたものの、やっぱり一筋縄で理解できるものではなかった。
私自身が、ユダヤ人の歴史・文化に明るくないこともあり、もう少し知識があれば、より解像度が高く見れたのかなと思う。
(スクリーン上の観客は笑っているのに、ジョークの意味がわからないことが多々あり、悔しかった)

基本的には家族の話なので、国や文化が異なっても感じ取れるメッセージはある作品だとは思うけれど、安易に「わかった」と言いたくない戯曲だなとも思う。

鑑賞した日は、上映前に小川絵梨子さんと那須佐代子さんのトークイベントが実施された。
小川絵梨子さんが「自分の演出が合っているか不安で、NTL版を見るのが怖かった」(*あくまでもニュアンス)とおしゃっていたのが、印象的だった。
小川さんは、アメリカの大学院で演劇を学ばれた方だけど、そんな方でもそういう風に心配されるんだなと思った。


るつぼ

アーサー・ミラーの戯曲。
昨年はPARCO劇場で「セールスマンの死」を観て、この秋には「橋からの眺め」も観ようとしているし、アーサー・ミラー作品とは最近何かとご縁がある。

この作品の基となったセイラム魔女裁判は知らなかったけれど、「Wicked」に衝撃を受けて、魔女狩りについて調べたことがあったので、題材や背景については理解しやすかった。

ネットで「ジョンの不倫が招いた悲劇なのに、ヒーロー然として死んでいくのは違和感がある」というような意見を拝見して、「なるほど、そういう見方もあるのか」と思った。
私は魔女裁判という事件にばかり着目して見てしまっていたけれど、確かに中年男が若い女性に手を出した話でもあるよな、と納得した。
(主人公がくたびれた中年親父風の風貌で、逆に生々しさがあった)

演出では、冒頭に雨を降らして、止んだ途端に教会のシーンが始まる一連の流れが印象的だった。
NTLを観ていると、シンプルながらもセットが有機的に機能していて、いいなぁと思う。

この日も鑑賞時に、広田敦郎さんと柏木しょうこさんのトークショーも併せて拝見した。
広田敦郎さんが「アメリカの学校で最も上演される戯曲の一つ」とおっしゃっていた。こういった骨太な作品を学校で取り上げるなんて、演劇教育が日本よりずいぶん進んでいるんだろうなと思った。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?