「国会のクイズ王」を楽しむ

 ここ1週間ほど、「国会のクイズ王」が話題だ。ちなみに私は彼が所属する政党が大嫌いだし、彼自身も政治家としては全く評価していない。仮に私の家族が、彼に命を救われたとしても、大事な一票を彼に投じることはないだろうと思えるほどだ(もしそうなれば感謝はしますよ、人として)。

 それでも彼は面白い。今回の高市早苗大臣に対する追及で、国会が事実上空転気味なことを思えば、「楽しい」などと言ってはいけないと思いつつも、彼の一挙手一投足が気になってしまう。
 なぜそこまで彼に食いつくかと言えば、「底の浅さ」ゆえだ。政治家としては致命傷な気もするが、それを無視して突き進む不気味なパワーを、彼は持っている。

 彼がこの10年ほどの間に国会を賑わせたことと言えば、安倍晋三首相に対して憲法に関するクイズを出したこと。集団的自衛権の解釈を巡る騒動の中で、予算員会の委員長にとびかかろうとして、「ヒゲの隊長」に撃墜されたこと。自分を罵った自衛隊員に謝罪させたこと。質問する自党の議員に「嘘でもいいから言っておけ」と囁き、その音声が拾われたこと。そして今回の微妙に怪しい文書を振りかざし、日を追うごとに「?」という人を増やしていったことくらいしか思い出せない。このどれもが、私にとっては失笑を伴う楽しさを提供してくれている。

 彼の特徴を考えてみると、概ね2つだと思う。それは
・自分への強烈な自信
・ヒロイズム(大袈裟とも換言できる)だ。

 1つ目の「強烈な自信」を表していると思われるのが、彼のもう1つの主戦場とも言うべきTwitterだ。集団的自衛権の解釈を巡って、彼はそれが違憲であるという説を述べた。それはいい。問題はその表記だ。「私が初めてこれを証明した人間だ」ということを、堂々と書いてしまうのだ。それは事実なのかもしれないが、最初に証明した、っていうくだりは不要だろう。

 そして2つ目のヒロイズムだが、これに関しては面白い動画を見た。「NHKをぶっ壊す」だけが公約の議員(これはこれで問題な気もするが)が投稿した動画だったが、彼の特徴が、これまたよく表れていた。
 彼がNHK破壊者に対して「憲法違反だ」的なtweetをしたことが発端だ。これを見たNHK破壊者は議員会館にある彼の部屋を訪ね、話し合いを要求する。最初は秘書が出てきて「公務中のため対応できません」というのだが、NHK破壊者は帰ろうとしない。大声をあげた。すると彼が登場し、その前日に発生した千葉の水害の対策を地元の首長や議員と考えているため、今は時間が取れないと答える。しかしNHK破壊者は怯まない。「じゃあ何時だったら話しができるのか」と食い下がる。ここで彼は「今、こうしている間にも、水害で苦しんでいる人がいる。私は水害発生以降、全ての時間をそこに費やしている。こうして立ち話をしている時間も勿体ない」と答えた。するとNHK破壊者は「でも貴方、水害発生後、私のことtweetしてますよね。時間を使ってるじゃないですか」と切り返した。彼は若干狼狽えたように見えたが、「国会議員として看過できなかった」みたいなことを言う。
 地元で発生した水害の対策を講じるのは、政治家として当然でもあり、彼の対応は正しい。どちらが間違えているかと言えば、NHK破壊者なのだが、なぜか「全ての時間を対策に費やしている」みたいな、余計な一言を言ってしまうのだ。
 同様のことは「ヒゲの隊長」に撃墜された時にも起きた。撃墜されたことに関して「私は空手をやっていたから、あの程度は屁でもない」みたいなことを言っていた。その一言、要らなくないですか?それでは喧嘩に負けた小学生の捨て台詞ですよ。

 そんな彼だが、常に隙が多い。強がったり、自己賛美するのだが、かなりの高確率で突っ込まれポイントを見つけられてしまう。だからこそ、彼の政治的主張に対する評価とは別に、彼に面白さを感じてしまう。

 今回の高市大臣に対する追及だが、文章の出どころが怪しくなりつつある。第三者として見ている限り、分の悪い戦いに嵌りつつある。出てきた応援団が、全く戦力になっていないどころか、足を引っ張っていることも、彼の厳しさに拍車をかけている。しかし、彼はまだファイティングポーズを止めていない。それどころか、意気軒昂に「高市大臣を辞職させる」とtweetを繰り返している。そこで勢い余ったのか、保守論壇に人にも「このままではまた告訴しなければ」と噛みつき、彼のtweetにリプライを飛ばす反対派に「今のうちに削除しなければ、法的手段も辞さない」といった具合に、戦線を拡大させている。「公平な報道」(これは最も大事なものであるという認識には同意する」を取り戻すと訴えながら、反対意見を封殺しようとしてしまう。そしてそれが次のツッコミどころとして、ネットの中で消化されていく。

こんなに面白い国会議員なぞ、なかなかいるものではない。

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