機械少女表紙完成2

アイデアが生まれて、連載に至るまでの漫画家の頭の中を細かく書いてみた話


アイデアを出して、それを形にして、連載になるまでの漫画家の脳内ってどうなってるんだろうなーって思うので、とりあえず自分の脳内がどんなだったか書いてみます。


最初のアイデアが出たきっかけから、そのアイデアがストーリーになる過程、連載が決まるまでにやった事と考えていた事を時系列順に細かく書いていこうと思います。

漫画を描く人にはアイデアや行動のヒントに、読む人には漫画家ってこんなこと考えてんだなーって楽しんでもらえたらいいなと思います。


先に経歴だけ少し話すと、
これまで少年漫画で受賞3回
読切掲載1回
隔月連載が1回、週刊連載が2回
単行本5冊
広告漫画をちょくちょくやる

あとこれからとある小説の表紙を描かせていただけることになりました!ありがたい…
来年は2本くらい連載してるんじゃないかなと勝手に思ってます
最近はツイッターとかをうまく使えないかなと色々試してるけど難しい…

それと小学生の時に水道週間イラストコンテストで2回受賞しました。
図書カードもらえて嬉しかったです。

描いてるマンガはだいたいラブコメ。


今回は3回目に連載した、マガジンポケット週間連載絶対秘密の機械少女の話です。
編集部の裏側!とかではなく、普通に平和な漫画家の行動や思考の話です。アイデアの練り方がメインです

まず、前の連載「心配ちゃんは今日も汗だく」が終わったところから話を始めます。
その頃連載していたマガジンポケットはエロ要素が強い漫画が人気で(今は少し違うような印象)
出だしの悪かった心配ちゃんの後半にもそういう要素を入れて、少しだけ人気があがりました。

そんなこともあって、その時期の僕は「ラブコメはエロがないと売れない!!」という錯乱状態でした。アスランは既に錯乱している!!
ちなみに誰かに強要されたわけではなく自発的にそう思ってました。
基本的に僕は今まで、ありがたいことに編集部に無理矢理何かやらされたとかはないので、ここに書くことも全て自分の意思で最終決定しています。


とりあえず色んなアイデアをひねり出すわけですが、自分がよくアイデアが出るタイミングは
・目を瞑ってるけどギリギリ寝ない時
・他の作品を観てる時
です。

今回は後者でした。
実は「絶対秘密の機械少女」のアイデアのきっかけは、当時観てたガンプラアニメガンダムビルドファイターズでした。
アイデアのきっかけってあまり覚えてない事が多いんですが、この作品に関しては明確に覚えてます。

先に「機械少女」の内容を少しだけ話すと、
温泉旅館が話題作りの為に「美少女アンドロイド従業員」を買ったら、実は人間の女の子(しかも仕事出来ないポンコツ)だった…という話です。それに主人公の男の子だけが気付き、人間であることを隠してアンドロイドとして生活する…
というラブコメです。

ですが最初は設定が違いました。
そこに至る経緯を話します。


まず「ビルドファイターズ」を観てて良いなーと思ったのが「アイラ」というキャラです。

このキャラはガンプラのバトルの天才で、無表情で白髪で無口な、戦闘マシンみたいな女の子なんですが戦闘してない時、プライベートで一人の時は美味しい食べ物を探して歩き回ってめちゃくちゃ笑顔で食べる可愛い一面があります。

この「無表情でロボットみたいな子が、ちょっとした事をめちゃくちゃ楽しむ」みたいなキャラを見たときに、アンドロイドの設定を思いつきました。
「基本は冷たいアンドロイドなのに、めちゃくちゃ人間らしい可愛い一面があったらギャップでいい感じのキャラが出来るんじゃないか?」


そして最初に描いたのは、
「アンドロイドなのに実は感情があるけどそれをご主人さまに隠してるメイド」という設定でした。
この時点では「実は人間」という設定は無く、「実は感情がある」でした。
いつもアンドロイドらしく振る舞うけど、実は感情がある。

でもネームを担当編集に見せて、それだと少し弱いという話になりました。

アンドロイドに感情が芽生えてる、というのはよくありますからね。
そこからさらに掘り下げていった結果、
「アンドロイドのフリする人間」になりました。

しかしそうなると「なんでわざわざアンドロイドのふりしてるの?」という設定が必要になります。漫画作りはこういう辻褄合わせみたいな作業がよくあります。

そこから借金設定が生まれました。16歳の女の子には到底返せない額の借金。
バイトしても稼げるお金なんてたかがしれてる、そこで偶然にも自分そっくりな「高額のアンドロイド」のふりして、大金を得ようと考える。という感じです。

そして次に、主人公(男)側の設定作りです。
アンドロイドが必要な設定がないといけないのです。

最初はただのお手伝い係、メイドという設定でしたが、それだとアンドロイドの正体が人間だと気付いたら「人間ならいらないわ、クビにしよう」となってしまいます。
クビに出来ない理由が必要なんですが…ここで詰まりました。
アンドロイドが必要で、なおかつクビに出来ない設定。クビにすると主人公も困る、という設定…なかなか難しく、時間がかかりました。

「今週中に思いつかなかったら、残念だけどこのネタは諦めてもっと良いネタを考えよう」と担当編集に言われました。そしてそれは僕も同意でした。
ここまで考えてダメなら、ダメなアイデアだったんだな、という思いでした。

アイデアの基本は「異なる2つのものの組み合わせ」とよく言われます。例えばガルパンなら「戦車✕女子高生」「戦車✕部活」みたいな感じでしょうか。
「戦艦✕少女」とか「グルメ✕バトル」とか「金持ち✕ヒーロー」とか、組み合わせるとアイデアは広がっていきます。
仮面ライダーなんか毎回色んな職業とヒーローを掛け合わせてるイメージです。


なので詰まったときは色々なものと掛け合わせていきます。アンドロイド✕何か…
家庭教師とかヤクザとか色んなものを考えた結果、期限ギリギリに思いついたものが連載会議に通りました。

結果掛け合わせたものは「温泉旅館」でした。

「経営難の温泉旅館が、話題作りの為にアンドロイドを雇う。しかし本当は人間だった!でももう宣伝して客が集まってしまっている…今更人間だなんてバレたら女の子はもちろん、旅館の評判がガタ落ち…!こうなったら正体を隠してアンドロイドのフリをし続けるしかない!」
こうして「従業員」「秘密の共有」の設定が出来た事で話がまとまりました。
温泉って要素もラブコメ的な期待が膨らみますしね!

というわけでこんな感じでアイデアを練り上げて連載まで至りました。
順にまとめると

・行動してネタを探す
・アイデアを一つ思いつく,見つける
・アイデアを生かせる設定を作る
・より設定を強くする・矛盾点を探す
・上手くいかない時は根っこの設定からいじる


今回の「機械少」の場合に当てはめると
・他の作品を観る
・「大人しい子が裏では明るい」の面白いなと思う
・アンドロイドの設定に当てはめる
・アンドロイドを「実は人間」にする
・舞台設定から作り直し、温泉旅館にすることでストーリーがスムーズになる

このような感じです。


なるべくアイデアが形になるまでを細かく書きました。
はじまりはアイデアが生まれるところからですね。

多分、この中で一番万人に活かせる話は
「アイデアは組み合わせ」という部分だと思います。
これに関しては僕の経験ではなく、多くの書籍や先人が語っている事なのです。
アイデアを勉強しようと思ったらだいたい組み合わせの話が出てきます。興味があれば調べてみてください。


感想いただけたら嬉しいです!
よろしくお願いします

一応、機械少女のリンクを貼っておきます
この記事を読んだあとに見たら違う視点で楽しめるかもしれません。
絶対秘密の機械少女 (講談社コミックス月刊マガジン)
全3巻 https://www.amazon.co.jp/dp/4065146313/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_-tWIDb02SBDD7


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ここまで読んで頂きありがとうございました。

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