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記憶の欠片の物語 12

ロンドンのタウンハウスは当然だが父親の所有物で年に一回貴族院の会議期間中の時に滞在したりロンドンに用事があるときに使ったり。

俺は寄宿学校にずっといて大学に入ってそれからヨーロッパをゆるっと周るグランドツアーにでかけそのままフランスの大学に一年留学して戻ってきた。タウンハウスは家族や他人との共同生活をしなくて済むから楽だったけどうっかり拾いものしてしまい、また誰かとの共同生活がはじまった。

部屋はあるし、個人の部屋もそれぞれあるし寮や寄宿学校のまっずいめし食わなくていいからいいんだけど。冷めた豆料理とか冷めたベーコンとかなんでこんな味付けになるんだ?のやつとか。男の子だから食べるでしょ?量だけはやたらあるじゃがいもとか。

しぶしぶ父親に手紙を書いた。 かくかく云々の経緯で学友をタウンハウスに当分の間住まわせるが了承ください。みたいなやつ。父親といえども領主だし階級違うしで「お父さん」なんて呼んだりすることはほぼ無いに等しいけれど。

もう一通はあいつの両親宛。
これもまたわたしはどこそこの何なにと申します。彼とは同じ大学の学部違いの友人ですが
諸事情ありまして彼が住んでいた下宿を変えることになり新しい住まいが決まるまで当分の間彼をわたしの家でお預かりすることになりました。ご心配なきよう。

みたいなやつ。

この2通を急ぎでトマスとフットマンに届けてもらう。トマスはあいつの家に。フットマンは領地に。

なんで俺こんなめんどくさいことに巻き込まれたんだろう。

しかも当事者のあいつは館の中をあれこれキョロキョロしてはあれはなんだ?これはなんだ?
おまえもしかしたら貴族なのか?とかいやそんなわけないよな。言葉や喋りがあれだしな。ブルジョワに違いないとか…階級とか爵位とか言わない方が良さそう。話言葉はくだけて話てるだけでそれ相応の場合にはきちんて使い分けられるから喋らないだけだ。次男だし継承権ないし。卒業したら家でてフランス行くつもりだし。
だいたいこいつともずっと付き合うわけでもないかもしれないし。実家のこと話す必要もないだろうし。

ゆるっと適当に話流してお互い干渉しあわずにうまく生活できたらそれでいいんだ。
必要以上に他人に踏み込むとろくな目に合わない。


他人とのいざこざなんて実家だけで十分だ。
あんなめんどくせー家にいつまでもいられるかよ。

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