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記憶の欠片の物語9

※書き下ろし

結局あいつは家にまた泊まってそのまま朝ふたりで大学に行った。

夕食を食べたあとお互い好き勝手に本を読んだりバイオリンを弾いたり酒飲んだり色々してたりしていたら深夜になっていた。

寝ればいいのに何かの拍子で香料とか貿易とかの話になってあーだこーだといっていたら朝になっていた…。



ほとんど寝てない。講義中に気を失いかけ、教授から睨まれ大量の課題出された。講義が終わり教室を出るとあいつが待ってた。

「フレッド!聞いてくれよ!」とまくしたてるように今日の講義の話を話はじめるが、こっちは眠くてたまらないから話についていけない。

「あ?なに?」

家にこの本あるか?てメモした紙を渡される。

「…確かあるはず。」
「ちょっと読みたいんだよ。調べものがあるんだ。」

「いいけど…オレ今日課題するから。論文も書かないといけないし」

「わかってるよ!邪魔しないからさ。」

「好きにしろ」

構内でジロジロ見られる。身長差が15センチ位あるし
学部違うしなにより人とつるまないオレが
一人でべらべら話してるやつと一緒に歩いてるので
昔からオレを知ってるヤツとすれ違うとびっくりされる。

誰だあいつ?学部にあんなやついたっけ?
あれフレデリックだろ?一緒にいるやつ誰だ?

自分だってあんまりよくわかってない。なんでこうなってるのか。

廊下でパブで大喧嘩したやつらとすれ違った。
自宅に訪ねてきたやつもいた。
あいつはちょっと身を固くしてた。向こうはビクっとした。

「こんどはそっちに鞍替えか?」と一人が冷やかすと自宅に来たやつが止めろ。もう構うな。と止めた

すれ違ったあと

「おまえあいつらといなくていいのか?」と聞くと

「もういいんだ。それになんだかわからないけど
一番からかってたやつがえらく親切な口調で僕に話かけてくるんだ。気持ち悪いだろ?フレッドなんかした?」

「いや、なにも?」

「ふうんそっか」

「あ、下宿寄っていいかな?すぐ近くだから。」

「ああ」

あいつの下宿に行くと大家が待ち構えていた

オレがいるのにお構いなしで怒ってる

みんなこんな感じなの?下宿住んだことないからわからないけど。

部屋にはいると部屋はしっちゃかめっちゃかだった。
床に置きっぱなしの本と脱ぎっぱなしのシャツと
開けっ放しのクローゼット
ベッドメイキングされてないぐちゃぐちゃなベッドと
机に散乱した紙とペンとカチカチになった食べかけなパン。

「…おまえ掃除とかしないの?」

「は?」

「メイドとかいないの?この下宿」

「あるわけないだろそんなもん」

留学するまでいたボーディングスクールの寄宿舎よりひどい。よくこんな盛大にちらかせるな。

あ、これだこれ。一冊のノートを引っ張り出してきた
じゃいこう。用事済んだから。

あんだけ本あるから基本的には貧乏てわけでもないんだろうけど。やっぱこいつ面白いな。

歩いて自宅に帰る。スタスタ歩いていくオレを追っかけるように小走りでついてくる。

「フレッド!後ろから見てたらさ、すごいな
背中が一本ビシってものさし入ってるみたいにまっすぐで姿勢崩れないけどなんで?」

「さあな」

「おまえ姿勢悪いぞ気をつけろ。気になってたんだ。ベースラインがなってない。だからなめられんだよ」

「そうなの?」

「ひとつの判断材料ではある」

「気をつけるよ」

「そうだな」

自宅に帰るとまたしてもあいつと一緒だからトマスは
笑いを噛み殺していた。

ほら。これだろ?メモ用紙に書かれていた本を渡した。

おお!これだよこれ。何やら紙に書き付けてる

トマスがお茶を運んできた

今日はどうなさいますか?
あー、二人分で準備してやって。
かしこまりました。
あいつ毎日家でタダ飯食ってる、別にいいけど

トマスが紅茶茶碗渡してくれるときに
よいご友人ができたようですね。と小さな声でいった

ご友人ね。ご友人か…

まあ。その一ヶ月後にこいつは下宿追い出されて家に転がりこんでくることになるんだけどさ。












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