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箱根八里

 二泊三日で箱根に行ってきました。普段は上野や東京発の旅行が多いため、箱根に行くのは二十年ぶりです。二十年前に泊まったのは旅館内にケーブルカーがある対星館という老舗でしたが、数年前に廃業し、別の新しい旅館に生まれ変わりました。箱根全体でも老舗風の旅館は減って、スタイリッシュな旅館が増えているみたいですね。ロープウェイも六人ぐらいしか乗れない小さなものから、十八人乗りに変わっていました。冬のこんな時期でも海外からの観光客が大勢訪れていたので、昔の小さなロープウェイでは、とてもさばき切れないでしょう。

 初日に見学した岡田美術館も、2013年に開業した新しい施設です。

 特別展「金屏風の祭典」を見るのが目的でしたが、常設展の展示数がすごい。東洋(日本・中国・韓国)の陶磁器や絵画、仏像などが四百点以上展示されていました(最初は熱心に見ていましたが、疲れ果てて途中で断念)。
 美術館のオーナーである岡田和生氏はパチスロ機で財を成したそうですが、戦前や戦後の混乱期ならともかく、昭和後期〜平成期にこれほど多くの美術品を集めるとは…。展示されていた以外にも浮世絵や日本画のコレクションがあるので、展示替えも行われるようです。解説文もとてもわかりやすく、学芸員の方々の熱意が伝わってきました。
 
 特別展では、以前記事に書いた酒井抱一の弟子、鈴木其一の絵を二つ鑑賞することができました。

鈴木其一『富士図屏風』(絵葉書)
円山応挙『群犬図』と『子犬に綿図』のクリアファイル。展示にはなかったが、あまりのかわいさに購入。

    *

 二日目は、ロープウェイで芦ノ湖に行きました。

 早雲山からロープウェイに乗ります。風が強くて、ロープがビュンビュン鳴っていました。気温も低く、一緒に乗った女性が「寒い〜」と叫び続けるほどでしたが、その分、綺麗に晴れて、遠くまで見渡せます。海の向こうに房総半島が見えました。

眼下に広がる大涌谷。火山ガスがたなびいています
これは20年前の大涌谷。鈍く曇っていました

 宿泊した旅館で二十年ぶりの箱根だと話すと、「二十年前も黒たまごはありましたか?」と訊かれました。もちろん、ありました! 今回も、途中で降りて黒たまごを購入。大涌谷の温泉池で茹でた名物です。

宿で食べた黒たまご。パッケージも昔のままでした。
黒たまごキティ

 谷崎潤一郎の『細雪』には、関西に住む人たちが富士山を見て喜ぶ話があります。私も東京に来た当初は、富士山を見るたびにテンションが上がったものです。その後、千葉で富士山が見えるマンションに住んだので、富士山熱も落ち着きましたが、千葉の富士山は小さいんですよね(二センチぐらい?)。なので、大涌谷で大きな富士山を見た時は、昔の感動がよみがえりました。
 

富士山とは反対側の眺め。左側に東京の高層ビル群やスカイツリーが

 大涌谷から再びロープウェイに乗りました。

芦ノ湖と向こうには駿河湾も。絶景のロープウェイですね!

 ロープウェイの終点は桃源台。そこからバスで箱根神社に行きました。『信長の野望』マニアが多い我が家では、箱根神社といえば北条早雲の末子、幻庵が別当(長官)をつとめた神社です。当時、箱根は箱根神社の所領だったので、幻庵を別当に据えることで、北条氏は箱根の支配を確実なものにしたのです。…という具合に、織田氏や武田氏に比べて地味な北条氏ゆかりの神社ですが、今は芦ノ湖畔にある九頭龍神社と併せてパワースポットとされているらしく、参詣の人で賑わっていました。

箱根神社の参道


湖畔にある九頭龍神社。例祭の時は船が出るらしい

 箱根神社から復元された箱根関所まで芦ノ湖沿いに歩きました。
 

一の鳥居の間から駒ヶ岳が綺麗に見えます
少し歩くと、山の間から再び富士山が現れました
箱根の関所は建物・場所とも史実に忠実に復元されており、見応えがありました

 温泉と富士山の眺めを楽しみ、東洋美術と歴史を学ぶ旅でした。

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