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ある1人の女の手紙

拝啓 和彦 様

初めまして、こんにちは。
見識もないのにこのような不躾な手紙をしたためましたことを、どうぞお許しください。
あなたにどうしても、お礼が言いたかったのです。

以前町を歩いていた時、あなたさまの御本を拝見いたしました。お恥ずかしいことに最近まであなたのことを深く存じ上げませんでした。
どれもこれも素敵なものばかりで、その才能とあなたの作り出すものに圧倒されてしまいました。
同郷の才人として、世間でご活躍されているお姿に心を奪われてしまったのです。

ここで和彦様に申し上げるのも恥ずかしいのですが、私も好きで文章をしたためることがございます。人様にお見せできるようなものではない駄文ですが、どうにも好きで、時間が許す時にはこうして書き連ねております。今まで自分の文章など、誰にも読んでもらえない、ただの女の下らないお遊びだと思っておりました。
そんな時、己の心のままに成される和彦様のお姿を拝見し、なんとも言えない高揚と悦びが込み上げ、包み込まれてしまいました。あの時の不思議な、言葉にできない温かさを、忘れることはないでしょう。ああ、私は何て馬鹿だったの。恥ずかしがって、あげく自分で自分を踏みつけてしまうなんて。好きなら好きで、そうしてしまっていいじゃないって。

このような私めの手紙に、和彦様の大切なお時間を奪ってしまったことをどうか御許しください。あなた様の気まぐれで封を開けていただけたことを想像するだけで、私の心は華やいでしまいました。

最後にひとつだけ。
いつか一目、お会いできますことを夢見て。

真子

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