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ドナネマブ(イーライ・リリー)

今回は近く承認が想定されるイーライ・リリーのアルツハイマー型認知症治療薬ドナネマブ…これをほっていきたいと思います!


作用機序

ドナネマブ(Donanemab、LY3002813)は、イーライリリー社によって開発されたヒト化IgG1モノクローナル抗体です。

アルツハイマー病(AD)に関連する脳アミロイドプラークに特有なアミロイドベータ(Aβ)の一種である「ピログルタミン酸AβのN末端にある特定のエピトープを標的」としています。

ドナネマブの作用機序は、脳内の廃棄物や破片を除去する責任を持つマイクログリアによるこれらのAβプラークの除去を促進することにより、ADにおける認知機能の進行を遅らせることを目的としています。

ちょっと難しい…順番に噛み砕いていきたいと思います。

ピログルタミン酸アミロイドβ(pGlu-Aβ)

まずはターゲットタンパクの確認です。
ピログルタミン酸アミロイドβ…噛みそうめっちゃ噛みそう…

アルツハイマー病に関連するアミロイドプラークに見られる、変形したアミロイドβの一種です。アミロイドβにもいろいろな種類があるんですね!

プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)に対する抵抗性があり、迅速に凝集し、神経毒性を持つためアルツハイマーと関連していると考えられています。

このpGlu-Aβは、アミロイドのN末端に特有のエピトープ(抗原の一部分)を持っています。

ドナネマブのターゲット

ドナネマブは、このpGlu-AβのN末端にあるエピトープを標的とします。 つまり、ドナネマブは、ADの進行に特に関連していると考えられる、特定のアミロイドプラークに特化して作用します。(レカネマブとの差別化ポイントだったりします)

ドナネマブが結合すると、脳内の免疫細胞であるマイクログリアの活性が促進されます。抗体であるドナネマブが結合したことで、異物がいるよ~というサインが周囲に出る訳ですね。

マイクログリアは脳内の廃棄物や破片を除去する役割を担っており、ドナネマブによってpGlu-Aβの除去が促進されます。結果このプロセスによって、アミロイドプラークが減少し、ADの進行が遅延することが期待されます。

レカネマブとドナネマブの違い(作用機序)

レカネマブとドナネマブは、同様にアルツハイマー病に関連するアミロイドプラークを標的とする抗体ですが、そのアプローチには重要な違いがあります。

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