新型コロナウイルス

新型コロナウイルス(COVID-19)の乳幼児に関する情報

エビデンスを求めて三千里、着太郎 (@192study) です。

新型コロナウイルス (COVID-19) が連日報道されており、心配になりますね。子を持つ親としては何より子どもが心配になりますが、いかんせん情報が錯綜しており追うのも一苦労です。
この記事では乳幼児に関する情報に絞って収集整理し、要約していこうと思います。

注意事項
当記事は、信頼性の高い公的な情報や一次情報源を参照の上、要点を整理して情報を把握しやすくすることを目的としています。
お読みいただくにあたって、情報の取捨選択にバイアスがかかっている可能性や誤読の可能性、誤字脱字がありえることを考慮してください。
国内外の発生の状況や感染者数の推移はYahoo!JAPAN特設ページ「新型コロナウイルス感染症まとめ」が分かりやすくまとまっています。

厚生労働省 (2月27日時点)

厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」の要約です。

妊娠中に感染した場合の症状や胎児への影響
一般的に、妊娠中に肺炎を起こした場合、妊娠していない時に比べて重症化する可能性がある。
風邪の症状や37.5度以上の発熱2日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合には、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせる。
現時点で胎児障害の報告はない

保育園での対策
マスク着用を含む咳エチケットや石けんやアルコール消毒液などによる手洗いといった感染防止対策の徹底、湖北省・浙江省からの帰国者14日間登園を控えるなどを要請。

子どもの感染防止
文部科学省の協力のもと、各教育委員会を通じ、保育園・幼稚園などや各学校に対して、発生時の出席停止の措置や、臨時休業の判断についての対応を示している。
小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業については文部科学省より通知が示された。

休園の有無
休園は陽性患者の有無、都道府県での感染対策の状況を踏まえて市町村が判断
個別の園が休園するかどうかは市町村の保育担当部署に確認

休園を要請する際の基準
園児や職員から陽性反応が出たら速やかに厚生労働省に一報を入れる。

日本小児科学会 (2月12日時点)

日本小児科学会の「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」の要約です。

子どもが感染した場合の症状
発熱乾いた咳倦怠感を訴える一方で、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ない。一部の患者では嘔吐腹痛下痢などの消化器症状を認めた。ほとんどが1〜2週で回復している。

子どもの重症化
現時点で小児患者に重症化の報告はない
成人同様に感染後1週間ごろより呼吸状態が急速に悪化する可能性も指摘されている。

小児ぜんそくなどの合併症の注意事項
一般的に小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもの呼吸器感染症は重症化する可能性がある。

母乳の是非
母親が感染している場合、接触や咳を介して感染するリスクがあるので直接の授乳は避ける必要がある。
日本産科婦人科学会は授乳を控えることを推奨。授乳開始は解熱後4日目が目安。

マスクをさせられない場合の対処
感染者から1〜2メートル以上の距離を保つこと、保護者が感染しないことが予防につながる。
ウイルスに汚染されたおもちゃなどに触れたを触ることでも感染するので、手洗い消毒も大事。

子どもの感染が気になったら医療機関を受診した方がいいか
新型コロナウイルス感染を疑って一般の医療機関や休日夜間急病診療所等へ受診しても診断を確定するための検査はできない。
新型コロナウイルス感染の軽症者に対する特異的な治療法はない。
現段階では入院加療が必要と考えられる場合を除いて新型コロナウイルス感染を心配して医療機関を受診することは勧められない

日本感染症学会 (2月21日時点)

日本感染症学会が2月21日公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―水際対策から感染蔓延期に向けて―」の「一般市民の皆様へ ―クイック・チェックポイントー 」の要約です。

注意すべき事項
体調が優れないときは朝・夕の体温測定する。
病院や施設での面会を控える。
人が多く集まる室内での集会等の参加は必要なものに限る。
つり革、手すりなどの他人が触れる場所に触れた後は、鼻、口、目などを触らない。
会社、学校、自宅に着いてから手洗いをしっかり行う。
時差通勤によりラッシュアワーを避ける。テレワークによる自宅勤務も活用する。
37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感がある場合には、出来るだけ会社、学校は休み、自宅での安静・静養を行う。
37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感がある場合に人と接触する場合、咳エチケット(マスク着用)を行い、手で鼻、口を触った場合は手洗いを行う。
体調不良者(発熱、咳など)に接する場合には、マスクを着用する。

注意すべき症状
37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感に加え、呼吸苦、息切れの症状がある場合
37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感の症状が5日以上持続する場合

受診行動
37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感に加え、呼吸苦、息切れの症状がある場合や 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などの症状が1 週間以上持続する場合は、帰国者・接触者相談センターに相談してから病院(一般外来で受診せず、帰国者接触者外来)を受診する。
この時、マスクを着用公共交通機関は避ける

高齢者または基礎疾患のある人
毎日、朝・夕、体温測定を行う。
多くの人が集まる集会場等へ行くことは控える。
インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンを接種していない人は接種を受ける。

日本産婦人科感染症学会 (2月27日時点)

日本産婦人科感染症学会から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について 妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ  第6版」が2月27日に公開されています。法的根拠は不明ですが、引用、転載の禁止が明記されているので自身で直接参照してください。なお、文献は1つのみ提示されています。

妊産婦、妊娠希望者へのアドバイス
武漢市内で妊娠後期に罹患した妊婦9例では、経過や重症度は非妊婦と変わらず、子宮内感染は見られなかった。(Huijun Chen, et al., 2020)
一般的に、妊婦の肺炎は横隔膜が持ち上がるために換気が抑制され、また鬱血しやすいことから重症化する可能性がある。
自己判断で複数の医療機関を受診しない。

国立感染症研究所 (2月18日時点)

国立感染症研究所の「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例」によると、2月3日に横浜港に帰港したクルーズ船ダイアモンドプリンセス号に関して、2月18日時点で乗客乗員3,711人中2,404人が検査され、陽性は0〜9歳が16人中1人10〜19歳が23人中2人だったようです。

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中国疾病対策予防センター (2月11日時点)

中国疾病対策予防センター (中国 CDC) の「新型冠状病毒肺炎流行病学特征分析(新型コロナウイルス肺炎の疫学的特性の分析)」によれば、2020年2月11日までに中国本土で報告された全ての症例4万4762人中、10歳未満が416人 (0.9%)20歳未満が549人 (1.2%) となっています。
10〜19歳で死亡例が1名 (死亡例全体の0.098%) あるようです。

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日本語情報ページ
呼吸器内科医 「COVID-19:China CDCによる72314人の解析結果

小児34症例:深圳市第三人民医院 (2月7日時点)

深圳市第三人民医院の王险峰 (Wang Xianfeng) らによる「深圳市儿童新型冠状病毒感染34例临床及流行病学特征 (Clinical and epidemiological characteristics of 34 children with 2019 novel coronavirus infection in Shenzhen.) 」のまとめです。原文の DOI リンク先はデッドリンクでした。 (Wang Xianfeng, et al., 2020)

対象: 中国の深圳市の病院で確定診断された小児
期間: 2020年1月19日〜2月7日
年齢: 8歳11ヶ月(中央値)
性別: 男児14人、女児20人
家族罹患: 28人 (82%) が家族内に感染者
場所: 26人 (76%) が湖北省への旅行歴・居住歴がある
重症度: 重症なし、一般的な症例22人(65%)、軽度9人(26%)、無症状3人(9%)
症状: 発熱17人(50%)、咳13人 (38%)
治療: 20人 (64%) の患者がロピナビルとリトナビルで治療された
経過: すべての症例が改善し、病院から退院

日本語情報ページ
ドクターキッド(Dr.KID) 「COVID-19(新型コロナウイルス)小児の34症例の特徴[中国:深圳市]
呼吸器内科医 「COVID-19:小児34例の臨床的特徴

小児31症例:中国北部6省 (2月21日時点)

中国小児雑誌 (中华儿科杂志) で3月2日に公開された、西安市児童医院の王端らによる「中国北部6省(自治区)の児童における新型コロナウイルス感染の31症例の臨床分析(中国北方六省(自治区)儿童2019新型冠状病毒感染31例临床分析)」の紹介です。

乳児9症例:武漢大学人民医院ほか (2月6日時点)

武漢大学人民医院の Min Wei らによる JAMA 2月14日付けの "Novel Coronavirus Infection in Hospitalized Infants Under 1 Year of Age in China" のまとめです。

期間: 2019年12月8日〜2020年2月6日
月齢: 1ヶ月26日〜11ヶ月
性別: 男児2人、女児7人
場所: 北京市2人、海南省2人、広東省1人、安徽省1人、上海市1人、浙江省1人、貴州省1人
症状: 発熱4人、軽度の上気道症状2人、無症状1人、症状不明2人
家族罹患: 9人すべて
重症度: いずれも集中治療や人工呼吸器を必要とせず、深刻な合併症もない

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日本語情報ページ
小児アレルギー科医の備忘録「COVID-19(新型コロナウイルス)に感染した、1歳未満の乳児9人の経過
wowtopi! 「「乳児のCOVID-19(新型コロナウイルス)感染は重症化なし」武漢の医師らが論文・子供や妊娠女性の感染率は高い?

妊婦9症例:武漢大学中南病院 (1月31日時点)

武漢大学中南医院(別名: 武漢大学附属第二医院)の陈慧君 (Huijun Chen) らによる The Lancet 2月12日付けの "Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records" のまとめです。
前述の日本産婦人科感染症学会の文章で提示された文献です。
2月12日時点の9症例では妊娠後期に感染した妊婦から子宮内で垂直感染が起こり得ることを示唆するエビデンスはなかったようです。

期間: 2020年1月20日〜1月31日
年齢:
 26~40歳
妊娠週数: 36週〜39週4日 (入院時)
分娩: 帝王切開9人
体温: 36.5~38.8℃ (入院時)
症状: 発熱7人、咳4人、筋肉痛3人、咽頭痛2人、倦怠感2人
妊娠合併症: 胎児ジストレス2例、早期破水2例
治療: 鼻カニューラを用いた酸素療法と抗菌薬の経験的投与9人、抗ウイルス薬投与6人
出産: 生児出産9人。胎児死亡、新生児死亡、新生児仮死は見られなかった。
重症度: 人工呼吸器を必要とする重度の患者や死亡例はなかった
検査: 羊水、臍帯血、母乳と、新生児の咽頭スワブ標本6人すべてで陰性

日本語情報ページ
日経メディカル(大西 淳子)「新型コロナウイルスの垂直感染はなさそう
m3.com「COVID-19、母児垂直感染の根拠見られず
ケアネット(鄭 優子)「新型肺炎は母子感染するのか?妊婦9例の後ろ向き研究/Lancet
小児アレルギー科医の備忘録「妊娠中のCOVID-19(新型コロナウイルス)感染は、胎内で児へ垂直感染する可能性があるか?

中国国家衛生健康委員会 (1月30日時点)

World Journal of Pediatrics に2020年1月29日受領、2月7日公開された首都医科大学附属北京児童医院申昆玲 (Kunling Shen) らの「Diagnosis, treatment, and prevention of 2019 novel coronavirus infection in children: experts’ consensus statement(小児における2019年の新型コロナウイルス感染の診断、治療および予防:専門家のコンセンサス声明)」から引用およびそれからの中国国家衛生健康委員会 (National Health Commission of People’s Republic of China) のデータの孫引きです。

2月12日公開の日本小児科学会の「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」に参照文献として記載されています。

2020年1月30日までに、9,692の確定症例と15,238の疑い症例が中国の31の省と都市で報告された。確認された症例のうち、1,527人が重症で、171人が自宅で回復して退院し、213人が死亡した。中国では1ヶ月から17歳までの28人の確定症例が報告された。

上記の記述については参照文献に2020年1月20日にアクセスと記載されており、また論文自体が1月29日受領と記載されていて矛盾が見られます。また、2月21日現在、Wayback Machine を含め元の文献にはアクセスできません。

現在の疫学的データに基づくと、2019-nCoV 感染の潜伏期間は1〜14日間であり、ほとんどが3〜7日間である。現在報告されている小児症例のデータでは、病気の発症年齢は1.5ヶ月から17歳の範囲であり、そのほとんどが感染症例と密接に接触しているか、家族クラスターの症例であることが明らかになった。感染した子供は無症状であるように見えるか、発熱乾いた咳、および疲労を呈することがあり、鼻詰まりや鼻水を含む上気道症状を示す者はほとんどいない。一部の患者は、腹部不快感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状を示した。

初の小児重症例:武漢児童医院 (2月8日時点)

華中科技大学同済医学院附属武漢児童医院重症医学科の陈锋 (Chen Feng) らによる中华儿科杂志(小児科学雑誌)2月11日付けの「中国首例儿童危重型新型冠状病毒肺炎(中国における新型コロナウイルス肺炎の初の小児重症例)」についての要約です。当該論文は2月8日に提出、2月11日に公開されたもののようです。
アブストラクトも含め英語のテキストはなく、中国語論文の Google 翻訳からのピックアップのため、情報が不正確な可能性があります。日英による公的な情報は一切ないので解釈と評価には十分に注意してください。

この症例は中国で最初の重症NCP(新型コロナウイルス肺炎)の子どもであり、胃腸症状から始まり、初期呼吸器症状は明らかではなく、急速に呼吸困難症候群、敗血症性ショック、急性腎不全に進行した。

年齢: 1歳1ヶ月
初期症状: 入院の6日前に下痢と嘔吐を3回発症、息切れを伴う発熱
入院: 2020年1月27日
検査: 入院2日目と7日目の咽頭スワブ標本の検査では陰性、入院8日目の検査で陽性
経過: 入院後10日目に患者の状態は大幅に改善し人工呼吸器を除去、入院11日目の肺CTのレビューで右肺病変が大幅に改善

人民網および中国網によれば、2月6日に人工呼吸器と気管挿管を取り外せるまで回復、2月13日に退院したようです。

日本語情報ページ
ドクターキッド(Dr.KID) 「小児のCOVID-19 (新型コロナウイルス) の情報(2月23日版)
Dr.KID|note「[まとめ] 小児のCOVID-19(新型コロナウイルス)の科学的根拠」 
人民網 日本語版(人民日報)「涙から歓喜へ!1歳の新型コロナウイルス感染患者が回復して退院へ
中国網(チャイナネット)新型肺炎、1歳の重症者が退院

国内の未成年の感染情報

2020年2月21日に北海道で10歳未満の感染者が公表されました。国内の未成年の感染情報は以下の記事でとりまとめていきたいと思います。

終わりに

引き続き情報を更新していければと思います。
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