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スカートで胡座(あぐら)

 15年前、200人の生徒を前に学年主任として体育座りを強要した。学年集会が長引くと男は胡座を許可したが、女には胡座を許さなかった。
もし、結婚することになって相手の両親に会う時、スカートで出かければ、嫌われたり誤解されないために胡座はかけないと言うのが根拠だった。
 昔話を懐かしく思い出したのはディズニーランドとディズニーシーでパレードを見るための場所取りの間、スカートを履いた若い女の胡座を何度も見かけたからである。
 仮に着物を着た女性が胡座をかいた姿を見れば、ほとんどの人が眉を顰める。
「ヤンキーか?」
こう思われる予想がつくから着物を着たままで胡座はかかない。着物とスカートを関連づけて考える想像力のない女が増え、ディズニーがこんな状況になったのは、
「赤信号、みんなで渡れば怖くない。」
こんな意識が広まったからである。また、私のようにスカートでの胡座を禁じる理由を話す教師がいなくなった。
「胡座がしたいならズボンを履け。」
実はとっ捕まえて指導したい衝動に駆られた。70歳の古希を迎えた老人のノスタルジーだと思わないでほしい。同じ日本での出来事であり、たった20年の違いでしかない。
 妻にスカートで胡座の話をしたら私の意見に賛同した後、すかさず、
「写真なんか撮ってないでしょうね?」
こう言われた。行き過ぎた人権至上主義が日本人の常識を壊している。

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