古都


幾重にも道は細やかに
縫い上げられてきた
別離と邂逅と
安堵と悲哀と

濃緑を湛え深々と奔る
疎水のほとり
深草、墨染
姿映すより匂い立つ
沈丁花のひとむらも
各戸口に似つかわしい

昼下がり
優しく懐かしい?
音に出遭った
低い軒端の向こう
家々の何処からか
立ち昇るように
聞こえてきた音、音
ピアノ?

足取りを緩めて
軽やかな饗応に与る
舶来のその音に
初めて触れた
いにしえびとのように

にぎわいの後のさびしさ
といった佇まいのこの町
誰弾くだろう
これほど懐かしく
新しく

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