見出し画像

「いくよ、フィナーレへ」セクサリス・サーガ完結記念、少女病特集vol. 5(残響レギオン〜聖骸メロフォビア編)


はじめに

 真典セクサリスの衝撃は果てしないものであった。既に紹介した作品もこれから紹介する作品も履修した方が真典セクサリスをより深く楽しめると思うので引き続き紹介記事を出していく。物語の終わりまでお付き合いいただきたい。

・残響レギオン

オススメ度☆×13

 メジャー1枚目のアルバム。慟哭の物語的一貫性と告解のバランスの両面を持ち合わせた化け物アルバムである。
 正直これまでのアルバムは物語性と音楽性のバランスに腐心している印象があったが、告解と今作の間にある実験作的立ち位置のSeiren-彼方に謡う哀憐の姫-(セクサリスサーガでは無いので紹介していない)を通してバランスが完全に整った。
 1曲目「深紅のエヴェイユ」はセクサリスサーガ最強の導入曲……だった(真典で更新)。同じくメジャーの蒼白シスフェリアの導入曲である「瓦礫の終音」と同じく世界観の紹介に一役買いつつ、魔女の残虐性という部分を音楽・物語両面で表現しており、混沌としつつもオススメ曲だ。
 2曲目「十三月の不確定なドール」はアルバム2曲目らしいテクニカルな雰囲気だが、珍しくジャズ調かつコーラスの入れ方が独特である。
 3曲目「偽物の夜に誓え反逆者」が逃走と決意の歌であり重い曲となっているのに対し、4曲目「未完幻想トロイメライ」は曲調だけなら軽く、レギオンメンバーの対比が垣間見える。
 5曲目「黒衣の放浪者」という名前から分かる通り慟哭のメインキャラであるルクス曲。ルクスのキャラソンとして完成されきっている。
 6曲目「recollection」はタイトル通りフランチェスカの回想曲。魔女の脅威を一般人目線で感じれる貴重な資料でもある。
 9曲目「真実の解放」はセクサリスサーガ屈指の展開的鬱曲。ネタばらし後のサビの不変さと儚さ、演者のシャウトと冷徹なストリングス、三拍子揃った名曲。
 10曲目「残響」に関しては作中随一のバッドエンド曲にしてその終わりに取り残されたフランチェスカ曲でもある。ストリングスの先導の下、フランチェスカの回想を軸に進む。
 アルバム全体として、フランチェスカ曲(reccollection、未完幻想トロイメライ、残響)を除けば、ギターサウンドがかなり効いている印象。逆に言えば今後の重要キャラであるフランチェスカ曲がアップテンポ曲ではないにも関わらず際立つような構成となっている。
 特に作品を聴くに当たって前提知識が不要なため初心者にオススメな一作。フラン周りの別作から戻ってくるのも悪くはない。

・metaphor

オススメ度☆×5

 メジャー2枚目のシングル。アニメタイアップ作品であり珍しくA面B面の2曲のみの構成になる。
 1曲目表題曲「metaphor」はアニメタイアップ曲なだけあってとてもキャッチーだ。誰もがOP曲だろうと思うような構成だがまさかのEDでの採用となっている。少女病の音楽性は一切の妥協を排して配置されているので物語関係なくとりあえずどんな音楽なのか把握するのに最適。
 2曲目「灰色のトランジェント」は蒼白シスフェリアに出てくるシルエラというキャラクターの過去話を題材としている。既にアニメタイアップ作品のB面としては疑問符が付くが、話的にもロクな展開をしていない(褒め言葉)。なぜランティスからB面としてGoサインが出たかよくわからない一品。
 metaphorは直接セクサリスサーガに関係している訳ではないが、少女病の音楽導入としては最適な作品。各種サブスクにも展開しており、垣根も低く前作に続いて初心者にオススメ。

・聖骸メロフォビア

オススメ度☆×7

 同人5枚目のアルバム。可憐なジャケットイラストの印象に反して攻撃的な曲が非常に多い作品である。アップテンポ曲ではない曲側にも、強力な曲が合間に配置されているので、全体のバランスは奇跡的に取れている。
 また、作品設定上告解エピグラム程ではないがオムニバス形式感もあり、珍しく明確に二大主人公制を取っている。
 1曲目「忘我に揺れる孤高の花」は強力な作詞を振りかざす導入曲であり、残響レギオンで取り残されたフランチェスカ(アナスタシア)の顛末を描いている。
 2曲目「花冠の幼王が背負いし枷」は今作でアナスタシアと共に二代主人公を務める幼王カタリナ曲。音楽・物語両面で1曲目と対比関係にある。3、4曲目は2曲目の劇中歌扱いになる。
 5曲目「Rusty red」はアナスタシアの覚醒を描く重要な曲。セクサリスサーガ自体魔女への目覚め等、覚醒を描く曲が多々あるがその中でもトップクラスの曲である。何よりアルバム全体に言えることだが、作詞が秀逸。
 セクサリスサーガ最長である13分16秒を誇る、6曲目「不確定蜃気楼は灰色の街の片隅で」は、2曲目の劇中歌のはずなのだが様子がおかしい。2曲目で設定した「カタリナに音楽の素晴らしさを伝える」という前提条件に対して、どう聴いても物語的にはいつもの少女病なのである。他の劇中歌が泣ける展開はあってもエグさのある展開は無いのだがこの曲だけ明確に浮いている。
 音楽的には同じく長い曲である「Double Cast」に比べると、節に分かれている印象が強く、見た目の長さほど長く感じない。
 7曲目の「プレゼント」も劇中歌にあたる。少女病のバラード系統の曲としてはトップクラスであり、アルバムの音楽的バランスを支えている。
 8曲目「ノットイコール」はアナスタシア曲であり、曲の始めの語りとコーラスは一度聴いたら頭から離れない。他のアナスタシア曲に比べるとキャッチーさが目立つ。
 9曲目「偽装聖女に因る潜在的幻想」はアナスタシアとカタリナの邂逅曲。盛り上がる部分までがやや長いが、物語と音楽面の連携が完璧に取れており、盛り上げてからの展開が極めて強力。盛り上げた直後の掛け合いは必聴。
 トリを飾る「platonic colors」はセクサリスサーガ唯一のハッピーエンド曲。2番以降は聴衆に対する応援ソングと言ってもいい。多分鬱に効くしジャケットの雰囲気要素をこの曲が全て回収している。
 物語把握の前提として残響レギオンを聴いておきたいところではあるが、アルバム単体の完成度だけ見ても高く名盤。

次回 unleash〜深閑セグレート編

https://note.com/19591969/n/ncc6047c8af89
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?