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「いくよ、フィナーレへ」セクサリス・サーガ完結記念、少女病特集vol. 3(メジャーデビュー以前編2)


はじめに

 今回も前回に引き続いてメジャーデビュー以前の作品の紹介になる。この辺りから作品としての完成度が上がり、世界観の輪郭が定まってくるようになってくる。それではメジャー前残り2作品、行ってみよう。

・空導ノスタルジア

オススメ度☆☆☆

 同人2枚目のシングル。3曲共にバラードでは無いと言う一見攻めた構成だが、ジャケットの大剣から連想される通り重厚感のある曲が揃っている。
 重厚感の担保として作品全体で弦楽器側で曲を先導し、何らかの鍵盤楽器で地に足をつけるスタイルが徹底されている。
 1曲目「refrain」は題材・曲調も相まって少女病版軍歌といった趣すらある。3曲目「物語の消えた森」はサビの曲調とボーカルの声質が極めてマッチしており、必聴。
 入手難度の問題があるが、物語的・音楽的な一貫性と一曲一曲の完成度を3曲で両立させている上に、特に前提知識が不要なためおすすめの一品。

・黎明ローレライ

オススメ度☆×10

 同人3枚目のアルバム。この作品の直後に蒼白シスフェリアでメジャーデビューする。メジャーデビューに向けての手土産だと言わんばかりに強力なアルバムとなっている。
 今作では鍵盤楽器側も守りに入らずぶちかますぞといった印象で、攻撃的な曲が多い。ただ、葬月エクレシア程の曲配置のバランスの悪さは感じられない。また、作品の設定上、物語面ではサンホラのような、ひとつの世界観で繰り広げられるオムニバス形式に近い構成となっている。
 1曲目「古の残骸」は同人作品の中で最高の導入曲であり(真典で更新された)、2曲目「meaning of death」はテクニカルでコミカルな曲(物語の内容的には全くコミカルではない)となっており、3曲目「黒雪姫」に至っては物語的に多くの伏線をばら撒きつつ、あまり少女病では行われない主題の再利用が後々なされるほど破壊力のあるナンバーであり掴みはバッチリである。
 4曲目「魔法仕掛けのリゼッタ」は1曲で端的に少女病を理解できる名曲であり、これから少女病に入るのも有りだ。
 7曲目「rectitude」は箸休め的ナンバーだが(なお人は死んでいる)、8曲目「もしも世界に答えがあるなら」と音楽的にも物語的にも前後編となっており、この2曲だけでとてつもない存在感を放っている。
 7、8曲目で聴衆の情緒を徹底的に破壊し更地にした後に流れるのが、9曲目「蒼穹に向けた透明な弾丸」と言う救いの曲だ。おそらくガンに効く。10曲目「Lorelei」というエンドロールに最適な曲が流れている間に聴衆が考える事は、情緒の瓦礫に差す一筋の光を拝み倒す事だけだろう。
 総じてセクサリスサーガ初期の最高傑作と言える。文句を付けるところが音質ぐらいしかない。手頃な価格で見かけたらノータイムで買っていい。物語音楽史に残る名盤だ。
 

次回 vol. 4「メジャーデビュー直後編」
https://note.com/19591969/n/n83b56a36b25f

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