見出し画像

成長する産業を選ぶ ~スマート社会をつくる仕事に就く~

楽に生きるということ

楽に生きるというと言っているのは、仕事の選択肢として、努力の結果が報われやすいとか、稼ぎやすいとかいう意味で、仕事もせず努力もせず生きられるということではない。

ざっくりいうと、成長する業界に就職する方が、衰退する業界で働くよりは報われやすいよねという可能性のことだ。その理由は、単純に市場が大きい業界の方が仕事が多いから失業しにくいし、成長する業界は、雇用を維持する上で国としても重要だから支援も厚くなることが多い。

成長する産業を決めて国家運営をしないと、この先の日本は、今以上に相対的に貧困になる。親の立場としては、かつて、ジャパンアズナンバーワンと言われた時代の自動車産業や電器産業のように、世界で伍して戦える産業をつくり守らないと、自分の子の世代が豊かにならないのは辛い。

要するに、成長する産業を見極めて仕事を選んだ方が苦労が少なくて済むということだ。単純な考えで恐縮だが、成長する産業にマンパワーをシフトすることが、日本全体としては未来の豊かさにつながるのだと思う。

鼻からこういう仕事をしたいというものを持つ志の高い人にとっては意味のない話かもしれないが、どういう仕事に就くべきかと悩んでいる人は、成長産業に身を投じた方がいい。少なくとも私が就職するときは、何がしたいなんていう志が全くなかった。さらに当時は就職ではなく就社だったので、スキルなんてことは露ほども考えていなかったが、今は、流動性の高い時代、手に職つけた方がいいに決まっている。

コロナがもたらす産業間格差

新型コロナウイルスの世界的な流行は世の中を一変させた。緊急事態宣言など人々の移動が制限されたことが一番大きい要因だろう。会社ではテレワークが常態化したし、学校はオンライン授業が主流となっている。要するに人が外に出る機会が大幅に減ったことで、公共の交通機関を利用することは少なくなったし、外食する人も少なくなった。人流を止めるということなので、コンサートや観劇、スポーツ観戦をする機会もめっきり減ったし、デパートなどで買い物する機会も少なくなった。外に出ないので服も買わない。旅行の機会もなくなったのでホテルや旅館の宿泊者は大幅に減少している

外食業界、アパレル業界、小売業界、鉄道や航空業界、旅館やホテル、興行関係、これらの業界はかなり厳しいのが現実だ。必需品や食料品を売るドラッグストアや生鮮スーパーなどの例外を除いて多くの業界が厳しい状況にあるのはご存じの通りだ

一方、半導体関連産業は史上空前の活況を呈している。人との接触が少なくなる生活様式が普及することがデジタル化との親和性が高いからだ

30年前からわかりきっていたこと

「1.57ショック」1989年の合計特殊出生率が1.57であったことから生まれた言葉で、少子高齢化が注目を集めたのは今から30年以上前のことだ。日本の人口は減少し、マーケットとしての日本市場も縮小することはわかりきっていた。

コロナウイルスの影響を受けて厳しい状況が続く業界の多くは、コロナがあろうがなかろうが、いずれ縮小していくことは誰もが知っていたのに、そのまま何もせず変わろうとしなかっただけのことだ。

日本市場が縮小するということは、日本の外に市場を求める業界や新たな市場が生まれる産業を除いて、無くなることはないにせよ競争が激しくなるのはわかりきっていた。

にもかかわらず、30年間日本は産業構造を変えることをしてこなかった。成長する産業にシフトできなかった。コロナの影響で様々な産業が厳しい状況にあるのは事実だが、本来、適正な規模に修正すべき産業において、ようやく問題が顕在化したに過ぎない。

コロナウイルスの流行は、多くの人にとって悲しい出来事だが、国内市場に依存する産業の多くに、現実を見つめる機会をつくったということではむしろ良かったのではないかと思う。ゆでガエルのまま死を待つよりは、ほんの少しでも考える時間ができた。

次の時代には何が起こるか

コロナによってわかったことは、非接触型の産業様式が日常的なものになるということだ。テレワーク、オンライン授業、遠隔医療、EC(e-commerce)などは普通のことになる。人と人とのコミュニケーションは対面型のコミュニケーションから通信ネットワークを介する割合が相当増えるはずだ。

対面型のコミュニケーションの割合が減っていくことで、通勤が少なくなり、オフィスも今までのような大きなスペースを必要としなくなる。人が集まらないので外食の機会は減るだろうし、クールビズが流行ったころよりも洋服を買う機会は少なくなるだろう。

コロナの影響に加えて、少子高齢化の影響も効いてくる。日本人を相手にした商売は、その規模が小さくなっていくことは避けられない。外食もアパレルもデパートのような小売りも、日本の外の市場に打って出ない限り衰退するのは必至だ。

さらには、SDGsやカーボンニュートラルの動きが、以前のようにやってるふりだけでは済まない時代になってきた。世界中で経営活動に社会性を重視する風潮が顕著になって、気候変動への対応や再生可能エネルギーへのシフトといった問題への対応が避けられない状況になっている。

いつまでも(気候変動の要因と言われる)大量の二酸化炭素を排出する石炭火力発電に依存するわけにはいかなくなってきたし、カーボンフリーのモビリティ(自動車など)に変わっていくのは避けられない

つまり、①日本市場に依存した産業、②対面コミュニケーションに依存した産業、③SDGsやカーボンニュートラルを無視する産業は、次第に凋落していく

様々なデジタルデバイスを利用し、通信ネットワークを介したコミュニケーションができる産業やそこから得られる情報を分析・加工することで便益を世界中に提供できる産業が伸びていく

世の中は、5G、IoT、AIなどのテクノロジーが進化し、デジタルを利活用する社会へ移行していく。なぜなら、テクノロジーが人々の暮らしを安全・安心な健康で働きやすい環境を提供してくれるからだ。その動きは世界的な潮流となっており、そのような社会(スマート社会)をつくる仕事が重視されていくことは間違いない。そうなれば、その業界の仕事に就くことが、楽な人生を送るためのライセンスになる。

楽な人生を送ることが良いことだとは思わないが

間違えないでほしいのは、外食業やアパレル業や小売業、観光や鉄道・航空業界、興行などのエンタメ業界を否定しているのではない。これら産業は人間の営みにとって必要な産業なのでなくなることはない。外でご飯を食べたいし、買い物にも行きたいし、旅行にも行きたい。たまには映画を見たり観劇したりすることは素晴らしいことだ。

ただ、日本の人口は減っていくし、コロナによって対面型主体の生活様式から非接触型の生活様式の割合が増えていくのは間違いのないことだ。世の中の流れは止められない。つまり、これら産業が成長産業となることはないということは紛れもない事実だ。

縮む市場に身を置くということは、参加者が一定なら、間違いなく競争が激しくなるし、賃金が上がりにくい。コックになりたい、デザイナーになりたい、ホテルマンになりたい、鉄道マンになりたい、役者になりたい、それらの志は尊いが、いばらの道になる可能性が高いことは知っておくべきだ。

ただし、産業としては厳しいが、一企業の成否はシェアをとれるかどうかの問題であって、将来を正しく見通し、それに沿った戦略を展開することで、成長する企業は確実に存在する。また、大きな組織ではなく個人事業主としての活躍を考えるなら、局地戦に勝てばいい。近隣の店よりおいしい料理をリーズナブルな価格で提供できれば、お店としては繁盛するだろう。マクロの市場規模はあまり関係ない。

とはいえ、日本国全体で考えれば、成長する産業にシフトするしか、われわれの子供の世代が貧困な国になることは避けられないだろう。

スマート社会をつくる仕事を選ぼう

次の時代を担う人が豊かな生活を送るためには、成長する産業にシフトしなければならない。成長する産業=スマート社会をつくる産業だ。

スマート社会は、様々なデジタルデバイスが使われ、そのデバイスから得られる情報を活用する社会だ。つまりデジタルデバイスをつくる産業(モノづくり)とそこから得られる情報を活用する産業(コトづくり)にシフトするということだ

モノづくりに関しては、日本はかなり優秀な国だ。かつての日本の電気産業や半導体産業を知る人は、日本のモノづくりはもはや中国には到底かなわないし、韓国や台湾にだって負けていると考えている人は少なくない。確かに、ヨドバシ電気に行けば、中国製の家電が氾濫し、韓国製のディスプレーだらけだし、台湾製のパソコンが中心だ。しかし、その多くは最終製品であり、組み立て業の分野である。

しかし、よく見ると、部品、材料、製造装置という分野では、まだまだ日本が世界のトップグループにあることがわかる。

電子部品の分野においては、日本電産、村田製作所、TDKなど世界シェアNo.1のシェアを持った製品を多数抱えた企業が多数存在し、電子部品の世界シェアは40%を誇る。

材料に関しては、2019年にフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目の韓国向け輸出管理規制が強化されたことで、韓国では天地がひっくり返るほどの大騒ぎとなったのは記憶に新しい

半導体製造装置に関しては、トップ10社に、東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREENホールディングス、日立ハイテクの4社が。トップ15社には、この4社に加えてKokusai Electric(日立国債電気から2018年に独立、KKRファンド傘下)、ニコン、ダイフクの計7社があり、半導体を製造するメーカーの主要企業15社のおおよそ半分を日本勢が占めている

つまり、日本の製造業がないと世界の半導体はつくれない。スマート社会をつくる鍵は日本が持っているということだ。考えようによっては、世界の経済成長や安全保障の切り札を日本が握っているということである。

次の時代に日本を貧困にしないためには、いい面悪い面はあるものの、産業政策として、国家がこの分野の人材を育成し、投資を促し、成長を後押しすることが必要だと考えている。

コトづくりに関しては、日本はからっきし弱い。世界のデジタルサービスの多くはアメリカ発で、Amazon、Apple、Google、Microsoft、facebook、Netflix、shpify、salesforce、adobe、Twilio、ZOOM等々、日本にもSansan、サイボウズ、ラクス、フリー、インフォマートなどが出てきているが、世界レベルで比べるとまだまだだ。

日本の市場はアメリカ企業のように世界中で使われることを想定しているものは少ないし、そもそも日本語の壁がある。さらには、比較的デジタルデバイドが顕著で、かつ、わからない人(高齢者)を捨て置かない意識が高い。

以前、経営していた会社で、集合住宅の玄関と各戸をスマートフォンを介してやり取りできる玄関集合機(インターホンシステム)をつくったことがあった。各戸の鍵はスマートキーで、住む人にとっては鍵を持ち歩かずに済む。友人が留守の時に来ても、集合住宅の玄関先からインターホンを鳴らせば外出先でスマートフォンを介してコミュニケーションが取れるので、あわてて帰ってくる必要もない。不動産業者は内覧したいとういうお客様にワンタイムパスワードを発行すれば付き添う必要もなくなる。機能としては非常に便利な製品だったが、そのサービスが実現することはなかった。

既に住んでいるお年寄りが、スマートフォンを持っていない。持っていたとしてもアプリをインストールできないし使いこなせない。そもそも故障したときどうするのか。。。などなど、導入できない理由が延々と語られた。

こちらに潤沢な資金や時間があれば、問題をクリアすることはできただろうが、ベンチャー企業にとってお金と時間の浪費は命取りになる。この案件は、エンジニアが病気になったことで、会社もあえなく撤退することになった。

日本でデジタルサービスが起こりにくいということはない。アイデアを持った人材も少なからずいる。ただ、それを具現化するエンジニアは少ないし、そのサービスを実現させようというマインドセットを持った支援者は少ない。サントリーの創業者、鳥居信治郎の口癖は「やってみなはれ」だったそうだが、そういう人と出会わない限り、サービスはつくれても、実現しないということも多いだろう。このあたりのことが、日本企業のメンタリティに色濃いのではないかと思う。

奇想天外なデジタルサービスを起草する能力、加えてそれを具体化するシステムエンジニア、最後はサービスを実現する突破力がないと、日本発のデジタルサービスは覚束ない。せめてシステムエンジニアの育成は急務だろう

誰もが必要になるデジタルスキルを身につけよう!

そのためには、プログラムをコーディングしたり、クラウドコンピューティングや情報を補完するサーバーエンジニアリングなど、直接的なデジタルスキルを身につけることは望ましい。企業にとって即戦力になる。

世界に通用するサービスをつくることは難しいとしても、デジタルデバイスから得られる情報を分析・加工し、省力化や自働化、新たなサービスをつくりだす必要性が、この先衰えることはない。

少なくとも、少子高齢化の日本では省力化、自働化のニーズは高いし、業務プロセスの生産性を上げることは焦眉の急だ。縮むといっても1億2千万人の市場に対する新しいサービスは必要だ

それを実現するにはデジタル技術は欠かせない。今からの時代、デジタル化技術なしに実現する手立てはないだろう。デジタルデバイスから情報を集め、分析し、役に立つサービスをつくりあげるには、その情報に慣れたたくさんのエンジニアが必要になる。

手っ取り早く、成長する産業で仕事を得るには、プログラムをコーディングしたり、クラウドコンピューティングや情報を補完するサーバーエンジニアリングなど、企業にとって即戦力になる直接的なデジタルスキルを身につけることは望ましい。

私が今就職する立場なら、とりあえず、デジタルスキルを身につける。直接的にITの業界に就職しないとしても、デジタルマインドを身につけておけば、いくらでもつぶしが効くだろう

https://note.com/19631018/n/n26475e8ebeff
https://www.alpha-function.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?