【雑感】2024年J1リーグ 第8節 対FC東京~負けに等しいドロー~

東京ヴェルディ 2-2 FC東京


スタメン

 前節・柏と1-1で引き分けたヴェルディ。得点を挙げた山田楓喜がパリ五輪予選のU23日本代表選出により不在。右SHに齋藤が入った。チアゴアウベスが移籍後、初のベンチ入りを果たす。
 一方のFC東京は鹿島に2-0勝利。こちらも同じくU23日本代表で野澤、松木、荒木が不在。GKに波多野、MFに小柏が入る。

前半

 J1では16年ぶりの東京ダービーに3万人を超える観衆を集めた。試合は立ち上がりFC東京が仲川と小柏の2トップにSH安斎、俵積田とスピード溢れる選手たちの素早い攻撃からシュートチャンスを作る。ボール保持時に仲川はフリーマンの立ち振る舞いで最前線に張ったり中盤まで下りてボールを受けたりと流動的にプレーする。ヴェルディは谷口栄斗が喰いついてマンツーマンで対応もそうなることで最終ラインは横幅を3対3の構図になりスピードあるFC東京の選手たちは広大なスペースを自由に動き回れる利点があった。

 立ち上がりこそ、栄斗がマンツーマンしていたがそのあとはスペースを守るように変えたのか稲見が仲川には付くことが増えて対応していく。FC東京のアグレッシブな攻撃も落ち着きはじめヴェルディは前線の染野と木村を目掛けてロングボールを入れる。2名はFC東京4バックを広げようとサイドへ流れる動きを交えてサイドで起点を作る。この日、右SHに入った齋藤はこれまで不動のスタメンだった山田楓喜のようにサイドに張るのではなくて中へ絞り中盤3枚を形成しピッチ中央を厚くし、左は深澤大輝-見木-染野、右は宮原-木村と変則的な形でサイド攻撃を狙う。

 25分すぎセンターラインの左サイドで倒された大輝が素早くリスタート。左奥へ流れる染野へ浮き球を入れるとここで起点を作る。白井-土肥間を空けるとポケットに見木が侵入。追いかけてきた安斎にPA内で倒されてPK獲得。安斎にはイエローカードが提示される。
 見木は自ら獲得したPKをしっかりと決めてヴェルディが先制する。サイドで起点を作りポケットを獲る狙いから確実に得点を挙げられた。

 先制点を挙げたヴェルディはホームのサポーターの後押しもあり足がよく動きハイプレスをかけて敵陣に押し込む。またも左サイドで起点を作ると、見木のパスはズレてエンリケへ渡る。エンリケは左サイドへ展開しようとするもここを右SB宮原が見事なインターセプト。鋭いクロスを入れるとPA内でフリーになった染野が豪快に右足を振り抜き鮮やかなボレーシュートを決めてヴェルディに追加点。

 J1昇格後、はじめて前半から2得点を挙げたヴェルディ。ダービーを圧倒する入りを見せていたがアクシデントが襲う。36分、サイドを駆け上がる白井に対応した谷口栄斗が交錯してハムストリングを痛めてそのまま負傷交代。山越が急遽、投入される。開幕からここまでフル出場を果たし、守備の要として君臨していた副将の離脱は大きな痛手。これからGW連戦も控えておりダメージがデカイ。

 42分、左サイドで見木に対してアフター気味にタックルが入った安斎がこの日2枚目のイエローカードを受けて退場処分に。2点ビハインドのなか、1名欠くさらに厳しい状況になった。守備の選手が欠けたわけでは無いので4バックはそのままで2トップの仲川が右SHへ下りて小柏の1トップの1441になる。前半から試合が目まぐるしく動く東京ダービーはヴェルディが2点リードで折り返す。

後半

 お互いにメンバー交代は無しで後半を迎える。人数の多いヴェルディが最終ラインからボールを握りサイド攻撃を目指す。ダービーへの意気込み、劣勢となったFC東京の選手たちは諦めてなく人数が少なくなって生まれたスペースを選手たちはスプリントすることで11対10を感じさせない雰囲気になっていく。開始10分程度までは宮原、大輝の両SBもPA内へ侵入する攻撃をヴェルディが魅せていたが出足鋭いFC東京の選手たちは盛り返す。
 最終ラインからのパスを右SB白井は何度も狙ってはパスカットを試みる。左サイドへのパスを右足で身体の向きを変えながら蹴りパススピードも速くなく距離も遠いため白井からしたら読みやすかったのだろう。ヴェルディは余裕を持ったつもりの緩さが仇となる。

 60分すぎヴェルディは齋藤と木村に代えて翁長と山見を投入。翁長はそのまま右SHへ、山見は左SHへ入って見木が真ん中に回り染野の1トップ中盤3センターのようにする。サイド守備の警戒と選手の距離感が間延びしていたため中盤を厚くして小刻みなパスを回したかった。一方、FC東京は俵積田と小柏に代えて遠藤と寺山をそのままの位置に入れる。

 カウンターから翁長が持ち運び外を回る晃樹へ。晃樹の速いクロスはあわやオウンゴールになるところを波多野がなんとか防ぐ。FC東京がガツガツ行くもヴェルディがシュートチャンス、そこからボール保持の展開にだんだんとスタジアムの雰囲気も静かになってくる。落ち着き始めた矢先、何度も鋭い読みでボールカットをする白井が牙をむく。山越から左サイドに張る山見へのパスをかっさるとその勢いのまま駆け上がり中へクロス。寺川がスルーし遠藤が流し込み1点差へ。ヴェルディは完全に気が緩んでしまった。これでFC東京が盛り返す。1名少ない相手にも失点喰らうのかと…クリーンシートはいつになるのか。

 70分、16年前の東京ダービーを知る真打・長友がピッチへ。この一番の声援が上がる。75分、ヴェルディは染野と見木に代えて松橋優安、綱島悠斗を投入。優安を左にして山見と悠斗の2トップへ。FWがピッチから消えた。15分+ATがあるなかで残り数分かのようなずいぶんと守備的な配置にした。結果として前線でボールキープできていた木村も染野も下げたことで前線で起点は作れなくなり相手へボールを渡す状況が増えた。

 左から山見の個人技での仕掛けとシュート、FC東京のCKから晃樹がボール奪取してロングカウンターからまたも山見のフィニッシュと決定機を作るも波多野の好守もあり追加点は上げられない。

 2-1のまま試合は後半ATへ。自陣からのFK、敵陣深い位置でのスローインと時間を使える機会は何度もあったはずなのにピッチ上の選手たちは統一性に欠き雰囲気に飲まれてしまっていると、ほぼラストプレーのようにエンリケが上がってのFC東京のパワープレーからこぼれ球を拾った遠藤がペナルティアーク左らへんから狙い澄ましたミドルシュートを沈めとうとう追いつかれた。またも逃げ切り失敗のヴェルディはダメージの大きな引き分けとなった。

まとめ

 情けない、悔しい、恥ずかしいと言った感情。心を抉られるダメージが大きく残った東京ダービーとなった。2点リード、相手に退場者が出たことと普通の試合であっても勝たないといけない状況であり、ましては勝利しか要求されないダービーにおいて汚点を残した。こういう試合に勝ちきれないからずっと見下されてしまっているのだと思ってしまう。
 安斎の退場、谷口の負傷交代がターニングポイントになっただろう。FC東京は10名になり、負けん気に加えてスペースを埋めるようなアグレッシブなスプリントが上手く嵌り人数の差を感じさせなかった。試合前のアップ時の波多野や長友の熱さ、このダービーに懸ける気持ちの強さは素晴らしいものだった。谷口の交代で投入された山越は試合に上手く入れずに失点に直結する致命的なミスなど目立ち主軸と控えの力の差が顕著だった。前線にも個人技あるチアゴアウベス見たかったな‥。勝点を失ったことに加えて守備の要・谷口栄斗の負傷離脱は今後の戦いにも相当な影響が出るだろう。選手層の底上げは急務だ。
 ここまで8戦終えて先制したのが5戦。すべての試合で逃げ切り失敗しており試合終了間際の失点が4戦ありビハインドで圧を高める相手の選手層との差を痛感してしまうが交代選手の選考や配置と采配が冴えていないようにも感じる。水曜日のルヴァン杯・鹿児島戦、すぐに土曜日にはリーグ・川崎F戦が待ち構えており落ち込む時間はない。