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手段にこだわる日本のDX

日本のDX、2018年に始まって各企業や各現場がDXを掲げて取り組んでいる状況ですが、未だ成功している企業や現場は2割にも満たないのが現状です。なぜこれほどうまく行かないのか。今回はそんなお話です。

ITはデジタルによる手段

 日本で「デジタル」について話をすると「システム」「デジタル機器」を想定されるお客様が非常に多いです。DXもシステム化や機器利用によって完遂できる。と思われている方も未だに非常に多いのですが、実際にDXはそのようなものでうまくいくものではありません。

 例えば「マイナンバーカード」、デジタルカードでもある身分証明書ですが、カードという手段が普及すれば皆様の生活がより良くなるのか?というとそういうわけではありません。未だにマイナンバーカードを持つことの意味が分からず所有していない人や所有はしているもののマイナポイントの入手手段に意味も持っていた為、使っていない人も非常に多いでしょう。
 行政手続きや確定申告など、電子申告ができる、コンビニで証明書を発行できる。という点においては使いやすくなっている。と感じるかもしれませんが、それでも手段の域を抜けていません。

 なぜ、デジタルを入れただけでDXが起きないのでしょうか。

「手段」よりも「目的」

 デジタルによる「システム」も「デジタル機器」も手段でしかありません。手段が変わることで目的が達成できるのか?というと現状の目的を少し達成しやすくする。という点では良いところもあります。

 どちらかというと「カイゼン」、つまり現場の動きを少しづつ良くする。ということには繋がるのですが、抜本的に何かが大きく変化する。ということには繋がりません。
 マイナンバーカードもそうですが、免許証や保険証と一体となったとしても、書面が変わっただけで何も変わっていないのです。

 カード複数枚持たなくても1枚で済んだ方が良いのでは?と言われる方もおられますが、これもちょっと良くなった。「カイゼン」に近い取り組みでしかありません。

 そもそも、証明書を使って「何がしたい」のでしょうか?

まずは「目的の本質」を見極める

 証明書は何をするために使うのでしょうか?

 保険証は医療費の負担を軽減するために自分を証明する時に使います。
 免許証も自分が運転できることを証明するために使います。

 自分がどのような権利を持っているのかの「証明」ができれば良いわけです。
 また、証明書を持っている本人であるということを「カードを提示する」ことで証明している訳ですが、そもそも自分が自分であることを証明できるのであれば「カード」である必要もありません。

 それ以上に、病院や運転だけではなく、いつどこでも自分の証明が簡単にできれば良い訳です。自分を証明しなければならない機会はたくさんあります。
 サービスを受ける場合、契約をする場合、入場をする場合、購入する場合、許可が必要なことを行う場合・・・

 様々な場合に「自分が自分である」ということが証明できれば良い訳です。

 ただ、証明のたびに複雑なことをしたいか。というとそういう訳ではないですし、より簡単に自分が証明できればそれに越したことがありません。

インドの個人証明「アドハー」

 今や人口14億人を突破し、世界一になったインドですが、12億人の人たちが「アドハー」という個人証明が行える基盤を持っています。日本でいうとマイナンバーと似たような仕組みですが、カードではなく、自分の証明をする際「指紋認証」を使っています。
 既に12億人以上の人たちが、両手指の指紋を登録しており、銀行口座情報などが全て紐づけられているのです。

 インドの人たちは手ぶらでも自分が自分である証明ができる訳です。

 両手指10本の登録をしていますのでなりすまされることもなく、さまざまな認証が行えるようになっているのです。

 また、コロナ禍の給付金なども「収入の少ない人」の「銀行口座」に手続きすることなく給付金が振り込まれていました。

 個人証明と収入状況、銀行口座が合わせて管理されていることで「何もしなくても給付金が手に入る」状態だったのです。

 自分が自分である証明やさまざまな情報が繋がっていることで、自分が受けられるあらゆる恩恵を「何も持たず」「何もせずに受けられる」状態にあるのです。

 目的は証明書を持参し自分の証明をすることではなく、自分がより暮らしやすくなること、そのためにデジタルやシステムという手段を使い実現しているのです。

「目的」を明確にする

 目的を先に明確化することが重要ですし、デジタルはその目的を達成するために役立つものです。

 例えば、すぐに目的を思い付かない場合は「なぜそれが必要なのか」・・・なぜなぜという問いかけを3回〜5回繰り返してみてください。

 きっと最後に本質となる「目的」が見えてきます。

 この目的を明確化し、その「目的」を達成するために、どんな「システム」や「デジタル機器」が使えるのか。目的を達成するために「利用者に負担を感じさせないようにするためにはどうすれば良いのか」を合わせて考えながら明確化することでDXを成功に近づけることができるようになります。

 利用者目線での「目的」を明確化し、必要な手段としての「デジタル」を考える。
 デジタルで実現できないのであれば、やり方や仕組みを変える。

 難しく考えるのではなく、「やりたいこと」を「意識せずできる」ようにすることが実現できれば、DXを成功に導くことができます。

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