見出し画像

猫八襲名披露と久々の東京

動物ものまねの江戸家猫八という名前をご存じだろうか。
お笑い三人組や『鬼平犯科帳』などで俳優としても活躍していたのが三代目。
三代目の息子で、出てきただけでその場がパッと明るくなるようなシュッとした姿が印象的だったのが四代目。
そして四代目の息子で『あさイチ』に出演してあの高橋一生さんにフクロテナガザルを鳴かせて話題!となった、二代目江戸家小猫さんがこの3月から五代目猫八を襲名したのです。

2023年5月11日(木)
国立演芸場での江戸家小猫 改メ 五代目江戸家猫八 襲名披露公演に仙台から思い切って行ってきた。こういう襲名披露のようなことでもない限り、普段の寄席では猫八さんのような“色物さん”がトリを務めることはまずない。ホームである東京の寄席での晴れ舞台。この特別な機会を逃したら絶対に後悔する!しばらく悩んたけど行ってよかった。本当によかった。


まずは迷わずにたどり着けるように下調べから。Googleマップのストリートビューで下見ができるというのはザ・方向音痴の私にピッタリ。今回は会場に行って帰るだけの工程だけど、せっかくならお土産も買いたい。すると会場の近くにたまたま『一元屋』というきんつばと最中のお店を発見。クチコミなども見るとこれはいい感触。
そして初めての新幹線eチケット。メールは来るけどアプリの画面に何も表示されない状態でちゃんと改札を通れるのか不安。そんな私のような者のために乗車前にお知らせメールが、そして改札を通るとその都度メールが来るのね。拍子抜けするほどするっと通れた。便利。
仙台駅の改札前に顔出しパネルもあるよ。

運転手気分が味わえるかも?

当日は晴れてお出かけ日和。お昼用にサンドイッチと水を購入。久々の一人旅にちょいとばかり緊張していたのか海老とブロッコリーサンドのおいしさが妙にしみる。

ポテサラと枝豆も入ってたよ

田畑が広がる景色から徐々に高い建物が増えてくる。時間通りに到着すると晴れて空気が暑い。東京駅の丸の内側から出てまずはおのぼりさんらしく写真を撮る。

青空に映える東京駅とビル群

東京もまだ大体の人がマスクしてる。私は外では外して歩く派です。左手に皇居外苑を見ながら地下鉄に乗るため大手町駅へ向かう。出入口はすぐにわかったものの、歩いても歩いても半蔵門線の改札に着かない。「大手町駅広すぎッ」と声に出さずに言ってみる。仙台の感覚でいたらいけなかったのね。

予定より遅く半蔵門駅に着いて汗をかきかき急いでたら、今から国立演芸場に出演される林家正蔵師匠が普通に歩いてらっしゃった。そりゃ普通に歩くわね。二度見したけどもちろん声をかけたりはしませんよ。
突然のことにドキドキしながらも入念な下調べのおかげで迷わずにたどり着けた。

おお~!これが国立演芸場かぁ
のぼりがこっちを向いてくれないのよ

開演前に着く予定が狂って前座さんが始まっていたのでロビーで聞き、終わったところで入場する。この日は完売。初めて入ったけど見やすそうな客席。緞帳も雰囲気があって素敵~。

素敵な緞帳

【演目】
柳亭左ん坊『子ほめ』
柳亭市若『初天神』
古今亭志ん五『魚男』
三遊亭金馬『芋俵』
林家正楽『紙切り』
鈴々舎馬風『楽屋外伝』

仲入り

口上
志ん五師匠(司会)/彦いち師匠/正楽師匠/猫八先生/金馬師匠/正蔵師匠/馬風師匠の並び

林家彦いち『睨みあい』
林家正蔵『新聞記事』

江戸家猫八『動物ものまね』

本日の演題
前座さんは表記されないのね

猫八さんは一度だけ生で見たことがあるけど、それ以外のみなさんは初めて。今回個人的に収穫だったのは志ん五師匠。飄々として軽やかで自然と笑ってしまう。フラがあるってこういうことかしら。おもしろかったー。袖にはけるときもにこやかに去って行かれる姿が印象的。師匠のツイッターで野菜を使ったイラストとか水彩画を見てたけど、スケボーの動画を見つけてビックリ。私と同い年だったし。ますます興味が出てきた。もっと聞いてみたい。仙台でも聞けないかな。

紙切りの正楽師匠もあのゆるい感じがいいなァ。お客様からのリクエストは「鯉のぼり」「猫八さん」「正楽師匠」どれも完成度が高くて「おぉ~!」としか言えなかった。双子のパンダも「可愛くてびっくりするよぉ?」の言葉通りとってもカワイイ!本当に楽しそうに切るんですね。ほんわかしあわせな時間。

後ろ幕は仲入りの前までは落語協会のものがかかっていて、仲入り後の口上の所から猫八襲名のものにチェンジ。絵本作家のあべ弘士さんの描くゴリラは力強いけどやさしくてかわいらしくてカッコイイ!ずっと見ていても飽きない。
この後ろ幕を制作する費用のために販売され、私も購入して当日着ていった猫八さんデザインの襲名記念Tシャツ。後ろ幕に入っている“贔屓与利”、このTシャツを購入したひとはこの“贔屓”に含まれるので今回のお祝いは私にとっても良い記念になりました。これからも大切に着ます。

これが五代目猫八襲名記念Tシャツ

さてお待ちかねの口上。この日は司会が志ん五師匠で、ほかに彦いち師匠・正楽師匠・金馬師匠・正蔵師匠・馬風師匠というそうそうたる顔ぶれが、襲名のお祝いをひとりずつ述べていく。口上に並ぶ師匠方はみなさん笑顔でお話されていて、聞いてるほうも思わずニコニコ。特に正楽師匠は自分のことのように嬉しそう。しかしお披露目の50日間毎回ほめられるってどんな気分なんでしょう。
今日は猫八さんが和装で高座をつとめる特別な日ではないけど、口上では全員が和装だったからそれが見られただけで充分。猫の紋がかわいい。
寄席演芸ファンにとしては一度は生で見ておきたい噂の“馬風ドミノ”もついに生で見ちゃった!気になる方は検索してみてください。笑うから。

この日は猫八さんの46歳のお誕生日で、それに合わせて全国の動物園や水族館から飼育員さんが60名以上!も大集合されていたそうで、きっと一般のお客さんとは反応が違うんだろうな。すごい人脈。
私、実はサプライズで高座に誕生日ケーキが登場して…みたいなこともちょっぴり期待したんだけど、誕生日には全く触れなかった。常々公平性を心がけておられる猫八さん、この日だけ特別なことはしたくなかったのかもね。そこも誠実でまじめな猫八さんらしいなと納得(開演前に番頭さんたちがお祝いしてくれたそうです)

トリの猫八さんは国立演芸場でのお披露目の初日だからか?ネコ、ヒツジとヤギ、アルパカ、フクロテナガザル、ヌー、ゴリラなどのテッパンネタ。
最初はお家芸のウグイスから。私、息を止めて聞いていたのかもしれない。鳴き終えたところで気付いてフッと短く息を吐く。ウグイスをこんなに真剣に聞いたの初めて。なんて美しく響くんでしょう。
声だけでなぜあんなにきれいに響かせることができるの?プロだから当たり前だけど全くゆらぐことがない。国立演芸場の前に都内の各寄席でのお披露目で40日間毎日鳴いてきて、ますます磨きがかかったのかも。
長めの持ち時間でひとつひとつの動物たちを丁寧に紹介していく。四代目のお父さまとのエピソードなども交えながらの楽しい時間。新たな江戸家猫八の芸をたっぷり堪能できて大満足。最後にもう一度ウグイスを鳴いて、万雷の拍手できっちり終了予定時間にお開き。

猫八さんの人柄の良さはファンだけでなく芸人仲間の間でも有名で、猫八さんのことを悪く言う人は一人もいないという話は聞いていたけど、あんなに会場全体があたたかい空気に包まれるとは思わなかった。寄席演芸界には欠かせない存在になられたんだなぁと改めて思う。あの特別な場所に実際に足を運んで自分の目で見て感じることができて本当によかった。行かなければ一生後悔した。初日を無事に終えて緞帳の向こうで皆さんで手締めする音も聞こえてまたほっこり。


ほんわかした気持ちで演芸場を出たら本降りの雨。えー!傘持って来ないわよー。仕方なく日よけの帽子をかぶって出る。何もないよりはましだったけどしっかり濡れた。ついでに国立劇場の写真を撮ることも、一元屋のきんつばを買うことも、皇居に行ってみることもあきらめて地下鉄の駅に急ぐ。雨の予報があるのは知ってたけどこんなに降るとは思わなかったんだもん。残念っ。

午前中とは打って変わってどんより

さて気を取り直し東京駅でお土産を、その前にお茶しながらお店の目星をつけようか…と思ったものの、どこも混んでいて結局無駄にウロウロしただけで時間切れ。買えたのは東京ばな奈チーズケーキのみ(思ったよりおいしかったので結果オーライ)
帰りのお弁当は「駅弁・祭」で確保。せっかく全国の駅弁が並んでるのに、何度か食べて知ってるお弁当を買う冒険しないワタシ。
無事に帰りの新幹線に乗れて一安心。郡山駅の大好きな「海苔のりべん」をゆっくり味わう。どれ食べてもおいしいんだよコレ。

福豆屋という会社のお弁当です

もぐもぐしながらふと外を見るとちょっとー!きれいな夕焼けじゃないですか。あんなにザーザー降ってたのに。

まぶしいくらいの夕陽

だんだんと色を変えながら完全に沈んでいくまで飽きずに見ていた。あたりの景色も徐々に高い建物が少なくなっていく。もうすぐ私の旅も終わり。しみじみといい一日だったなあ。雨に濡れたけどそれもまた思い出。

これから全国各地でもお披露目の会が予定されているので、お近くで猫八さんご出演の会があったらぜひ足を運んでみてください。楽しく笑って帰る頃には少し気持ちが軽くなっているかもしれません。

出演予定などは江戸家猫八さんのオフィシャルサイトへ。


仲入り中に買った猫八襲名特集の「そろそろ」と
お披露目中にしか買えないグッズのアクリルキーホルダー

五代目江戸家猫八さんについてのインタビューはこちらをどうぞ。
ほぼ日での色物さんの特集です。

猫八襲名記念特集の『そろそろ』はこちらで買えます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?