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携帯キャリアの怠慢が招いた、安部総理「携帯料金は高い」発言

 9月11日に経済諮問会議にて安部総理が総務相に携帯料金の引き下げを支持したと伝えられました。(報道記事

 これを受けて9月14日にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクらのキャリアが株価を下げました。一国の総理が競争市場に物をいうのはいかがなものかとの意見も散見されますが、これまでの総務省と移動体通信業界のやり取りをみていると、今更感があります。業界はキャリア間で健全な競争をするよりも、いかに客の誤認を誘発するかという方法ばかり競争しています。今回の総理の発言は、今まで行政を舐めてきたツケがやってきたという感じです。

 総務省では平成21年4月から「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」が持たれており、いろいろとキャリアに対して苦言を呈してきました。(→総務省の報告書

 移動体通信業界では、わかりにくい料金体系や契約内容、「0円」などと大きく書かれ誤認を招くような広告などなど数多くの問題を抱えてきましたが、総務省はできるだけ業界の自主努力を尊重し我慢強く改善を待ちました。しかし、消費者相談センターに寄せられる移動体通信業界に関する苦情は近年横ばいのままで、業界の自主努力の形跡がみられません。

 SIMロックの解除も今年になってやっと導入されましたが、キャリアの対応はおざなりで未だ効果を見せていません。

 ここで問題となるのはキャリア間で健全な競争が行われていないことです。キャリア間での料金の引き下げやサービスの向上といった健全な競争は行われずに、料金や契約の複雑さを増したり、キャリアとしてはあまり推したくない料金プランをわざと見つけにくくしたりと、利用者をいかに誤認させるかを競う競争ばかり行われていることです。このことは報告書にも記載されています。

 なので、安部総理の発言は行政の我慢もいい加減限度が近いことを示しているのと思います。

 ICT利用に関する消費者保護の検討は現在も続いています。(→総務省HP)見ていただければわかりますが、移動体通信業界にはまだまだ自主努力で改善すべき商習慣があります。業界がいち早く改善を行えばよいのですが、もしまだダラダラと利用者を騙す手段ばかり競っているなら、構造改革を旗印にした政府にさらにきつい仕置きがなされるでしょう。キャリアの株を運用されている方はご注意を。