「エクセル方眼紙」は日本の低成長の象徴

「エクセル方眼紙?お前は一体何を言っているんだ?」

こんなお叱りが聞こえてきそうですが、実際にあるんだから仕方がありません。エクセル方眼紙とはエクセルのセルを方眼にして、文書作成の台紙として活用することを指します。(参考)「エクセルとは計算するためのソフトだろ!」というお叱りもここでは通用しません。

エクセル方眼紙は文書を作成する方からみれば便利かもしれませんが、そのフォーマットを再利用する立場から見れば不便なことこの上ありません。中には、書かれてある文章がJpeg画像を切り貼りだったときもあって泣きそうになります。

これが職場の笑い話で住めば良いのですが、1990年代以降続く日本の低成長、低生産性の象徴であるといえばどうでしょうか?



今回参照した1990年代以降の低成長についての研究は深尾京司 一橋大学教授の『失われた20年』と日本経済』です

まず低成長の原因に企業の貯蓄多寡が上げられています。アベノミクス以降、企業の内部留保についてよく言われますが、その傾向はバブル崩壊後に始まっています。

 企業が内部にお金を積み上げた結果どうなったかというと、資本当たりの稼ぎが少なくなりました。資本係数=資本ストック/所得 で計算されますので、資本あたりの稼ぎが減ると上昇します。


 資本あたりの稼ぎの減少は、生産性減少につながります。下のグラフは日本とアメリカの成長率の要因分解です。アメリカはTFP(全要素生産性)がプラスに寄与しているのに対し、日本は引き下げ要因となっています。

TFPは技術革新が起きると大きく上昇する傾向にあります。2000年前後にはIT革命と呼ばれる技術革新がありましたが、日本ではそれがマイナスに働いています。そう、エクセル方眼紙です。エクセル方眼紙は文書の作成・運用・管理の効率を大きく引き下げます。そういう技術革新を生産性に結び付けられないことがTFPがマイナスになって現れていると考えられます。

実際、日本のICT投資は世界的に見ても高くありません。

また、特に生産性が低いとされている非製造業に関して、非製造業は職業訓練など人的なリソースに対する投資が低いことも指摘されています。特に非正規雇用者に対する使い捨てという状況がこれに拍車をかけています。


まとめると、日本の低成長・低生産性は企業が適切な投資をせず、かつ、IT革命に変な形で乗ってしまった。その象徴がエクセル方眼紙が真面目に利用されているということです。

これに付け足すなら、ITを理解できないオジサンが大きな顔をしているから、ITを使える人達が割を食い、さらに全体の生産性を引っ張っているんじゃないかと。