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アニメ乱歩奇譚 Game of Laplaceが推理モノでは無い理由。

 ここでは、アニメ乱歩奇譚 Game of Laplaceが推理モノとして、視聴者が謎解きを楽しめるか否かを考えます。そして私の結論は「謎解きを楽しむことはできない」です。

 まず「推理モノ」の定義をWikiペディアの本格ミステリーから以下のようにします。すなわち、

事件の手がかりをすべてフェアな形で作品中で示し、それと同じ情報をもとに登場人物(広義の探偵)が真相を導き出す形のもの。

 江戸川乱歩が本格ミステリという言葉の生まれる前の、日本での推理小説の父のような位置づけなので、このような定義自体が意味をなさいかも知れません。しかし、私が推理モノに求めるものがこの定義なので、ご容赦ください。


さて、アニメ第一、二話の人間椅子でのポイントは

1. コバヤシ少年への嫌疑を解消すること。
2. 真犯人をみつけること。

この2点に絞れると思います。以下では、この2点が上の定義のように物語が進められたかどうかについて述べていきます。

1. コバヤシ少年の嫌疑をどうやって解消するか。
 劇中ではアケチから指摘された「凶器以外から指紋が検出されなかったこと」がコバヤシ少年の嫌疑を解消する決め手になったようです。

 しかし、この事実は解答編のアケチの説明まで明らかにされていませんでした。カガミ警視、ナカムラ係長らは凶器とコバヤシ少年の指紋とのことを述べていますが、他の箇所の指紋については、あったともなかったとも語っていません。

 つまり、視聴者に対して事件の手がかりがすべてフェアな形で提示されていなかったのではないか、と考えます。


2. 真犯人をみつけることについてはどうでしょうか?
 真犯人についてはハシバ君により、教室にいる誰かだというところまでは絞られていました。しかし真犯人を特定は論理的には行われませんでした。劇中では、罠を張って、やって来た人間を捕まえるという作戦がとられていました。

 コバヤシ少年がこの罠の前に真犯人を特定したのは、推理とは別のところで生じた真犯人の失言によってです。

 たしかに、この手がかりは視聴者に提示されていました。ただ、この失言があったとき、誰がこの失言をしたかは、このアニメの演出の都合により、視聴者には特定できないようになっていました。これはフェアな形での手がかりと呼べるかどうか、微妙なところだと考えます。

 また、この失言による手がかりのために、他のところで述べられていた推論はほぼ意味をなさなくなりました。これも推理モノの定義上、いいのかどうか微妙だと思います。

というわけで、アニメ乱歩奇譚 Game of Laplaceは推理モノとして、謎解きを楽しむことはできないと結論します。

 しかし、このアニメの見どころはそこではありません。推理などおまけです。メインはコバヤシ少年を愛でること、この一点にあります。コバヤシ少年が可愛ければ、事件はすべて解決するのです。(終)