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ほぼ歌旅

昨日、大阪西天満のライブハウスであった、Bun's Live ヒトリヨガリLIVE TOUR 2021 ほぼ歌旅に行った。みゆきさんのツアー、夜会、夜会工場、アルバム、すなわち音楽活動全般に欠かせないコーラスメンバーの一人、宮下文一さんのライブである。

感染症が流行する前までは東京にも(ほぼ毎回)足を運んでいたが、ここ2年半ほどは控えざるを得なかった。文さんが大阪で自分のライブを開いて下さったのは、約9年前のミナミ以来のことだ。

今回はタイトル通りほぼ歌旅なライブだった。2007年のみゆきさんのコンサート・ツアー「歌旅」を再現しようという趣旨。最新にして、最後のコンサート・ツアー「結果オーライ」が昨年2月末以来中止になったままになり、20年以上みゆきさんと仕事をなさってきた文さんも、ちょっとした”みゆきロス”状態だったようだ。

ほぼ歌旅と言いながら「完全歌旅」をやってしまえるのが、文さんである。当時のコンサートでは一度もその曲順でやらなかったらしいが、DVDに収録されている順に歌われていく。

もしも離れ離れになっても変わらないと あれほど誓った言葉が風に融けてゆく 

『御機嫌如何』の頭のフレーズが耳に届いた瞬間、胸がいっぱいになった。久しぶりに拝聴する、文さんの生歌だった。

プロの歌い手であり、みゆきさんが寵愛しながら一緒にお仕事をされる方なのだから、上手い(高い歌唱力である)のは当たり前なのだが、それを分かっていても、やっぱり上手いと毎回思う。とっても気持ち良さそうに歌われるので、聴いている方も気持ち良いのである。

そうよ日々の暮らしは心とは別にゆく 泣きすぎて血を吐いて      喉でそれでも水を飲む

”泣きすぎて血を吐いて 喉でそれでも水を飲む” 実にみゆきさんらしい歌詞というか、みゆきさんにしか書けない言葉だと思う。”私をもう気遣わないでいいわ”と言いながら、”涙で濡らした切手を最後に貼ります”と言う主人公の気持ちが分かるようになったのは、私も年齢を重ねたからか。

「歌旅」では、みゆきさんには珍しく日によって、二曲ほどセットリストが変わっていた。その部分、大阪ではどれかなと思っていたら、文さんの選曲の一つは『EAST ASIA』だった。

モンスーンに抱かれて 柳は揺れる その枝を編んだゆりかごで 悲しみ揺らそう どこにでもゆく柳絮に 姿を変えて どんな大地でも きっと生きてゆくことができる でも心は帰りゆく 心はあの人のもと 山より高い壁が築きあげられても 柔らかな風は笑って越えてゆく 力だけで心まで縛れはしない

一説には天安門事件をモチーフになさったとも聞くが、みゆきさんご自身が明言されたことはないと思う。”くにの名はEAST ASIA 黒い瞳のくに むずかしくは知らない ただEAST ASIA” 文さんも仰っていたが、壮大な曲である。

『蕎麦屋』や『昔から雨が降ってくる』を最初に聴いた時は、あまり好きになれなかったのだが、今聴くと違って聴こえる。『蕎麦屋』が収録されたLPの発売は1980年、まだ生まれる前だったため、時代を感じてしまったからだろうか。『昔から雨が降ってくる』は、A面に入っていた『一期一会』の方が好みだと思ったのだろう。

忘れないで私のことより あなたの笑顔を忘れないで

そう聴く度に、私の心には最愛の方が浮かぶ。私のことなど、どうでもいい。本当に”あなたの笑顔を忘れないで”と、心から思う。

もう一つ。文さんと言えば欠かせないのが『宙船』だ。TOKIOに提供する際のデモテープに仮歌を入れられ、そのテープ通りに長瀬さんがお歌いになった。「歌旅」では、一番を丸々、文さんが歌われている。

何の試験の時間なんだ 何を裁く秤なんだ 何を狙って付き合うんだ 何が船を動かすんだ

当初は、このブリッジの部分だけをみゆきさんと交互に歌う予定だったらしいが、何せ歌うのがハードな曲である。「文さん、半分こ」とみゆきさんは可愛く仰ったそうだが、文さんにしてみれば寝耳に水。バンドメンバーも、スタッフも凍り付いたとのことだった。

本家の文さんとみゆきさんが歌われる映像は、挙がったり消されたりの鼬ごっこだが、できるなら多くの方に聴いて頂きたい。伝説の『宙船』である。文さんのご自分のライブでも、近年は滅多に歌って頂けなくなっただけに、本当に久しぶりだった。

あともう一つだけ、特筆するならば『ファイト❕』だろう。様々なアーティストさんがカバーしているが、基本的にみゆきさんご本人のものしか受け入れたくないのがファンである。文さんも同じ思いだったようで、最初はカットするつもりでいたと仰っていた(だからほぼ歌旅だったのである)。でも、歌って下さった。

ああ 小魚たちの群れ きらきらと 海の中の国境を越えてゆく 諦めという名の鎖を  身をよじってほどいてゆく

『ファイト❕』の歌詞の中で、最も好きな歌詞である。

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