編集者は、「できれば著者と一生を添い遂げたい」と思う生き物である。

やっとこのnoteが書ける。
ーー書きたくても書けなかった。いろいろな事情があって、書いたらいけなかった。

11月9日に、ライツ社より新刊『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』が出ます。著者は、世界でいちばん旅が好きな会社「TABIPPO」です。

このnoteは、そのTABIPPOに宛てた、いち編集者の私信です。

2012年

TABIPPOとの出会いは、2012年。前職で、初めての旅の本『僕が旅に出る理由』を出版したあとのことだった。

「僕たちのイベントに本を提供してください」そう連絡を受けた。二つ返事で引き受けた。(たしか篠原くんだった)

当時、TABIPPOはまだ会社にすらなっておらず、ただの学生団体だった。彼らは、「世界一周で人生が変わることを伝えたいんです」と熱く語る旅人だった。

それを聞いた僕は言った。「だったら、うちの本を配るんじゃなくて来年は自分たちで本をつくろうよ」

2013年

それから約1年の制作期間を経て、2つの本を出版した。

『僕らの人生を変えた世界一周』という紀行文(今さらながら、最初の気持ちそのまんまのタイトルだな)と『ウユニ塩湖 世界一の奇跡と呼ばれた絶景』というガイドブックだった。(松永くん、おつかれさまでした)

本づくりを始める前に、「どんな本をつくりたい?」と聞くと、彼らはこう答えた。

「世界一周の体験記はもちろんつくりたいです。でもウユニ塩湖もすごいんです。世界でいちばんよかった場所と聞かれたら、あそこしかありません。」

まだ流行る前で、誰も知らなかったウユニ塩湖を本にするのはとても勇気がいることだったけれど、彼らの言葉を信じて、どうにかこうにか当時の社長を説得して(売れんかったら丸坊主な、と確か言われた)、出版した。

そしたら、飛ぶように売れて、日本にウユニ塩湖の存在が広まった。

めざましテレビ、世界ふしぎ発見、NHK…、ついにはイッテQでもウユニ塩湖は取り上げられ、世界一の絶景と呼ばれるようになった。

おかげで、その年の前職の出版事業の実績は前年比120%までのびた。ぼくの編集者人生にとっても大きな分岐点となった。

2014年

驚いたことに、TABIPPOが会社になった。

あとで聞いたら、この2冊の本の著作権料を資本金にしたそうだ。びっくりした。若くて、めちゃくちゃで、いろんな人に迷惑をかけることもたくさんあったけれど、「若者が旅する文化をつくる」という彼らの理念と行動を、心から応援していた。

だからとても嬉しかった。(はじめは清水くん、るいくん、小泉くんの3人だった)

それから、2014年から2016年の9月、僕が前職を退社するまでの2年半の間に、本を6冊(ハイペースだ)、旅のものづくりブランド「PAS-POL」まで立ち上げた。(さっちゃんと二人三脚だったね)

手帳、ポストカード、カレンダー、 iPhoneケース、世界地図etc...と10種類以上の雑貨を日本中の旅人と一緒につくって(写真をたくさん提供してもらって)発売した。

誰かの旅の記録が、また次の誰かの旅するきっかけになる、そんなものづくりの循環をつくれたことがとても幸せだった。本も雑貨も売れに売れて、お金も勝手にあとからついてきた。

2015年

『365日 世界一周絶景の旅』という本を出した。3,400円という高価格にもかかわらず、部数は38500部(実質10万部超え)まで伸びた。

この本の帯に、ぼくはこんなことを書いた。

「365日、一年かけて、もしも世界一周できたなら。そんな夢物語を現実にするために一冊の本をつくりました」。

あれからきっと多くの人が、この本を読んで見つけた大好きな絶景に向かって旅立っていったことだろう。

(この頃ぼくが、代表の清水くんに「あの人採用した方がいいよ」と言った人がTABIPPOに入社し、いま本づくりの中心になっている。元々はウユニ塩湖の本に写真を提供してくれた、いち掲載者さんだった)

あと余談だけれど、小泉くんの紹介で、TABIPPOのサッカー仲間GAKU-MCさんとミスチルの桜井さんのユニット「ウカスカジー」のツアー限定本もつくらせてもらった。ウカスカジーのマスコットキャラの本だった。

ぼくが「なんかキャラの絵描き歌を本に載せたいですね」とGAKU-MCさんに伝えると、次の週に桜井さんからメールで、ギターと生声のmp3データがが届いたときには一旦、人生の満足感を味わってしまった。(小泉くん、本当にありがとう)

2016年

ぼくが前職を辞めた。

前職をやめるにあたって相談した人は3人で、そのうちの1人が代表の清水くんだった。残りの二人は起業家の太田英基さん(スクールウィズ)と、ゆるスポーツの澤田智洋さん(電通)だ。

ぼく「迷惑をかけるかもしれないけど、やめようと思う。それから、独立する」清水くん「いいんじゃないですか、応援しますよ」。

確かそれは、やめることを決めた次の日で、ぼくはストレスのせいか39度の高熱を出していて、フラフラになりながら代々木ビレッジのおしゃれなカフェで話し合ったことを覚えている。

やめるにあたっていちばん心に引っ掛かっていたことは、TABIPPOに迷惑をかけることだった。毎年2点のペースで本を出し続けている著者、そして一緒に雑貨ブランドまでつくってしまったパートナー。それをどうするか。前職の会社の利益、TABIPPOの利益、独立するぼくの利益…いろいろなことが難しかった。

でも、清水くんは応援してくれた。

「利益とかそんなのはどうでもいい話で、挑戦しようとする人を応援しないのはおかしい」

そう言ってくれた。

編集者としてTABIPPOの本を出版して以来、ずっと彼らを応援する立場だったけど、応援される側に回ると、こんなにも心強い仲間がいることをとても嬉しく思った。

それから、前職とも話し合った末、TABIPPOはしばらくは前職の会社から本を出すことになった。雑貨事業も、優秀な後輩が引き継いでくれた。ぼくも独立後、編プロとしてTABIPPOの本をつくった。でも、それからのTABIPPOの本はなかなか重版できない日々が続いた。

しかし、その間にTABIPPO自体はメンバーも3倍に増え、野外音楽フェス旅祭はいつの間にか2DAYSになり、事業はあらゆる方向に拡大を続け、それはもう目覚ましい成長を遂げていた。(浦川くん、沼くん、おしゃれなプログラマーくん、嵐くん、あんまり喋ったことない若い女の子たち、パーティーでたくさん話そうね)

忘れてた。いつの間にか、みっちーもTABIPPOになってた。

2017年

1年の空白の期間を経て、TABIPPOと本づくりを再開できることになった。

そして、その背景には清水くんのものすごい心配りがあったことも聞いた。ぼくの知らないところで、前職の会社の人たちとたくさん話し合ってくれたことを聞いた。お酒の席で言い合いまでしてくれたことも聞いた。とても申し訳なく思った。

だから、誰にも真似できないTABIPPOだからつくれる本を、「これがTABIPPOだ!」と言える本を、絶対に売れる本をつくろうと思った。

2018年

そしてようやく、ライツ社から初めてTABIPPOの本が出版される。『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』。

TABIPPOのいいところを、そのまま本にしたような一冊だ。

TABIPPOのいいところっていうのは

・世界でいちばん旅が好きなこと
・世界でいちばん旅が好きな人たちの集まりであること

つまりは、世界でいちばん、「死ぬまでにこの世界を遊び尽くしてやろう」という人たちのリアルな情報が集まるコミュニティだということ。

別に文章が特別にうまいわけでも、何億PVみたいなアクセスがあるわけでもないけど、そんなことは大した問題ではなく、そのコミュニティさえあれば、日本一のガイドブックがつくれると思った。(企画を思いついたきっかけは、るいくんが更新し続けている「死ぬまでにしたい100のリスト」だった)

掲載内容は、186ヵ国、2000個もの「この世界で死ぬまでにしたいこと」。ページ数はフルカラーで496ページにもなり、本の厚さは3センチを超えた。入稿データの重さは45ギガバイトだった。そして、制作に協力してくれた旅人も100人を超えた。

もしかすると、企画自体は、特にひねりもないし、新しくはないのかもしれない。

でも、この本は、絶対に誰にも真似できないし、つくれない。

だって、旅が本当に好きじゃないと、2000スポット、2000個のテキスト、2000枚の写真、なんて集めれないし、1年かけてそのすべての事実確認を2000回繰り返す作業なんて、続けられない。

世界でいちばん旅が好きなTABIPPOだから、できた本だ。

中さん、阿部さん、喜多さん、さっちゃん、本当におつかれさまでした。特に中さん。中さんがいたからこの本は完成まで漕ぎ着けることができました。中さんは、TABIPPOの中でいちばん文章がうまい、仕事が丁寧、常識がある、しかしそんなことはさておいて、実はいちばん旅が好きで、世界一周をしていちばん人生が変わったのは中さんだったんじゃないかと思っています。

そんな中さんがつくった本だからこそ、この本には愛がある。「この世界は楽しいんだよ!」って気持ちが伝わってくる。そう思っています。

最後に

数年前のある日、清水くんがtwitterでこんな感じのことをつぶやいてた。

「『清水くんとなら、どこまででも、なんでもできる気がする』と言われた。頑張るしかない」。

たぶん、この言葉を清水くんに言ったのは、ぼくだった。

TABIPPOのみなさん。

さあ、これからまた、たくさんの本を一緒につくろう。
旅人の声を紡ごう。
世界中の写真を紹介しよう。

もっともっとたくさんの人を、まだ見ぬ旅へ連れていこう。

『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』

コンセプトは「旅の大事典」。絶景、秘境、グルメ、 非日常etc..。
ページをめくるとこの世界の遊び方が2000個ズラリと並んでいます。

たとえば、次に訪れたい国がオーストラリアだったら。

「ウォンバットを膝に乗せて写真を撮るのはマストでしょ。コーヒーも飲み比べしたいし、エアーズ・ロックももうすぐ登れなくなっちゃう。知らなかったけどメルボルンにこんなおしゃれな図書館があったのか! 」と、この本一冊で旅の計画ができてしまいます。

この本を手に取った瞬間から死ぬまでに、あなたはどれだけのことをこの世界で叶えられるでしょうか。

1つだけ、質問があります。

「死ぬ前に後悔するのは、どちらだと思いますか?」
・あなたが「したこと」について
・あなたが「やらなかったこと」について

たった一度きりの人生、後悔は少ない方がいい。
じゃあ、まず最初にしなくちゃいけないことは?

それは、あなたが「死ぬまでにしたいこと」を具体的にすること。
この本はそのお手伝いをするためにつくられました。

11月9日(金)発売です。

p.s. 

素晴らしい著者と出会わせてくれたのは、こんなにも大切な関係をつくれたのは、前職で働いていたからこそです。改めて、働かせてくれたこと、独立させてくれたこと、本をつくらせてくれたことに、感謝します。


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ライツ社 航海日誌

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