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歌集「遠ざかる情景」

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目に見える情景の中には、時に胸を締め付け、そして、時に凍り付いた心を溶かしてくれる不思議な温かみを感じる何かがある。しかし、それは、これ見よがしに情味を見せたり、人情や温かみを押… もっと読む
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記事一覧

「遠ざかる情景」#7(解説)

清き水、飲めば裂かれし我が口を、また洗う朝で今日が始まる 寒い朝、顔を洗うのにも痛みを感…

roi
2年前
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歌集「遠ざかる情景」#7

頑張ろう、でも頑張れない。周りは、すぐに自分から遠ざかっていく。 そんなもどかしさを詠ん…

roi
2年前
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歌集 『遠ざかる情景』#6 解説

多少文章が、ガタガタです。すいません(笑) 我が子の爪、あの子の肌を裂く夕刻、謝ることか…

roi
2年前
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歌集 『遠ざかる情景』#6

やはり、テーマは日常である。しかし、そこにも、”何か”が、潜む。それは、暗く、黒い。 我…

roi
2年前
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歌集「遠ざかる情景」#5 解説

今回のテーマは日常だ。 日常と言っても、そんな日常を愛したり、愛おしく思い思わず微笑むと…

roi
2年前
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遠ざかる情景#5「人生の筋書き、安泰であってほしい」

日常、それはありがたく、もし愛おしき誰かがいるなら、彼らにそれを与えたい。 でも、結局、…

roi
2年前
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歌集「遠ざかる情景」#4

人生には、断片的に悲劇が転がっている。目を背けて生きようとも、人が感覚というものを頼って生きる限り、それは私たちの前に現れ、心をかき乱していく。突然降る雨のように心を濡らし、閉ざされた悲しみの世界に引きずり落とす。 生きるとは、幸福を感じながらも、その裏側にある残酷を乗り越えていかなければならない……。それが、人生なのか? 朝の市 仔を孕みたる 鮫の母 血を流したる コンクリの床 仔を孕み 膨れたる腹の 母鮫血流し 横たわる床 仔をなせど 網にかかりて 母ざめが コンクリの

歌集「遠ざかる情景」#4 解説(前編)

朝の市 仔を孕みたる 鮫の母 血を流したる コンクリの床 仔を孕み 膨れたる腹の 母鮫血…

roi
3年前
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歌集「遠ざかる情景」#3 解説(後編)

山越えて 征く馬者に乗る 若き人 幼心も 今は捨てたか 幼顔 残した子らを 乗せる馬車 …

roi
3年前
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歌集「遠ざかる情景」#3 解説(前編)

女(ひと)を裂き 血肉飛び散る 白き貌 一人泣き濡れる 容疑者の男(ひと) 血肉裂け 泣…

roi
3年前
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歌集「遠ざかる情景」#3

闇とは何か、誰もが有し、誰もが隣り合うそれ。しかし、どこかで、その秩序が壊れるとき……、…

roi
3年前
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歌集「遠ざかる情景」#2 解説(後編)

山河鳴く 碧空を飛ぶ 雲の陣 駆け行く風は ただ優しけり  山河鳴き 流れる雲の大軍勢 …

roi
3年前
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歌集「遠ざかる情景」#2 解説(前編)

1碧深い 遠い海には 靄なびく 朽ち壊れたる 日々と似た色 我が日々は 朽ち壊れたり そ…

roi
3年前
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歌集「遠ざかる情景」#2

 思い出……。もう、失ってしまった“それ“は、今も心の中に存在し、今の私の荒んだ心に冷たい水のような潤いを与える。その反面、それを失った悲しみは、私の貧弱な心臓を突き刺す。それは時に、胸に太い杭を打ち込まれていな痛みになって現れるのだ……。  目を閉じれば確かに存在している、緑あふれる田園や、夕陽の差す海辺の街並み。もし、それがなければ、あの苦しみや痛みはない。しかし、目に浮かび続ける“それ“を手放すことができない、私がいる。  引き出しから、薄汚れた宝石箱を開け、古くなり、