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SDGsを題材にした短い小説

課題の一環として書いたものです。きちんと理解することも向き合い方の一つかなと思ったので投稿してみました。最近はそこまで感じることは無くなったけれど、一時期は、何かにつけてSDGsだのサステナビリティだのと言われていたような気がします。

これを書いた当時は、よく聞くけど実際の内容とかはよく知らないなあという感覚で、調べつつ知識をつけようという軽い気持ちでした。ところがちゃんと調べてみたら一つ一つの内容はかなり「濃い」し、わりかし中身がてんこ盛りだったので、「これを2030年までに......?マジで......?」となった覚えがあります。

これを書いた時にTwitterの140文字小説にハマっていたため、雰囲気が似ているものがあるかと思います。1年以上前に書いたもので荒い部分も目立つのですが、まあ気に入っているのもあるしいいかな......という舐めた気持ちで投稿しました。


貧困

2日前に街へ行った。今朝は掃除をした。先ほど、弟と夕食を食べた。ぼんやり考えていると、ふと音がして、服を縫う母の手が止まった。父が帰ってきたのかと思ったが、よく聞けばそれは隙間から吹き込む風だった。母がランプをつけるようにと言っている。そろそろ灯油が切れてしまう。今月の残りの資金でどうやりくりをしようか、私はまた頭を巡らせていた。

飢餓

起きて、顔を洗って、鞄を持って通学路に着く。苦手な朝早くに起きるのは、どんなに急いでも自分の小さい体では学校に着くまでに二時間ほどかかるためだった。それに、変に急いでも余計にお腹が空くだけだった。ふと自分の腹が鳴った。まだ空はしらみ始めたばかりだと言うのに、今日の晩御飯のことばかり考えていた。

健康と福祉

最も近い病院まで徒歩で三日、車でも1日半かかるこの村で、「病気にならない」ということは当たり前の決まりだった。人々は「病は気から」と何度も口にした。特に小さい子供たちは体調が悪くなったらすぐ言うように教えられている。だが、彼らは五つになるまではあくまでも神の子供であり、仮に病気になった時には、大人は祈ることしかできないのだった。

教育

人気のない街を歩いていると、突然轟音が鳴り響いた。茶色い埃が舞った。こうなってしまうと、もう家に帰るしかない。けたたましいサイレンの音にも、もうすっかり慣れてしまった。新しくて強い、国を守るための武器が開発されたと言っても、全ての不安を拭えるものではなかった。学校に通えなくなってから、今日でちょうど三十日目になった。

ジェンダー平等

ある日、突然知らない男性、しかも自分よりずっと年上の人と結婚した彼女はまだたったの16歳だった。「小学校には3年も通えなかった。」悲しそうな顔をして、彼女はそう語る。家は大きく、食事には毎回いくつもの品が並ぶ。家族の仲はよく、子供にも恵まれている。だが、自分でいること以外の権利の全てを持っている彼女は、どうみても幸せそうには見えなかった。

安全な水とトイレ

一酸化二水素って知ってるか、と彼はいった。太陽の光を浴びて、額の汗が滴り落ちる様がよく見えた。それはひどく恐ろしいもので、時に人の命をも奪ったりするのだそうだ。それでも、と彼は続けた。そいつは自分たちの体の中にも流れていて、彼の言葉を借りるなら、「無くなっちまうと死んじまう」らしい。もうそろそろ50メートルも掘っただろうかというとき、突然飛沫が跳ね、それに呼応するように、地上の人々から歓喜の声があがった。

エネルギー

1日に3回、人々は手を繋ぐ。触れ合いによってエネルギーが生み出されることが発見されたのは、つい最近のことだ。この国はその発電方法をいち早く取り入れたことで話題になっていた。だが、その画期的なアイデアよりも目についたものは、街全体に溢れる一体感だった。というのも、首相へのインタビューによれば最も改善を見せたのは、電力でも二酸化炭素排出量でもなく、住民の幸福度だったと言っていたからだ。

経済成長

一説によると、ピラミッドの建設は、奴隷たちではなく、きちんと雇用された自由労働者たちによって完了されたものらしい。確かに、納得がいくといえば納得がいく。自分たちの国のトップの墓であったわけだし、言うなれば国家を挙げた一大プロジェクトだ。私は、自分の背丈ほどもある石を目の前にため息をつく。だからといって現代でも同じことができるわけでもあるまいに。遠くで聞こえてくる現場監督の声に呆れつつ、私はヘルメットに手をかけたのだった。

産業と技術革新の基盤

その国では、そこら中に整備された道路とパイプが生活を容易にしていた。だが、もはや辺境と呼べる場所がなくなるほど充実した国に人気はない。産業化を求め続けた人類がついに火星へと活動拠点を移したのは、今から82年ほど前のことだった。そして今はパイプたちだけが、誰もいない家で稼働している。

不平等をなくす

ずっと昔に福引をした記憶がある。子供心にドキドキしながら引いたものの、結局出たのは赤玉だった。そこからはずっと貧乏くじばかり引いている。そんな簡単なもので人の人生が決まって良いはずがないというのに、いくら回しても自分の抽選機から白玉が出ることはない。最期に赤玉を引いた妹の目が開くことも、もうない。回せるだけマシなのかもしれないとは思いたくなかった。

まちづくり

気圧の変化によって北から吹いてくる風を、人々は死の北風と呼んで恐れていた。木とトタンでできた家屋のようなものは、まともな風除けにすらならない。国に何度訴えても、辺境にわざわざ赴こうとする政治家などいなかった。そうして最後の住民が倒れた時、首相は高らかに笑い、スラム街のリゾート化計画にサインをしたのだった。

作る責任使う責任

地球が増えた。まるで突拍子のないことのように聞こえるが、これは第23地球においては、もはや珍しいことでもなかった。拡大し続ける人口と、それに比例して伸びる消費量に辟易した人類は、そういったものの処理や減少に努めるよりも、新しい惑星を作る方が楽だと考えた。つまり、人間は地球すらも消耗品にしてしまったのだ。

気候変動

その日、世界は絶望に満ちていた。もう一度だって気温が上昇すれば、この小さい島も水に飲み込まれてしまう。居間のテレビからは、気温の上昇と気候変動の影響が排出量の増大を止めても持続することを告げるニュースが流れている。「行動しても遅すぎることが、時にはあるんだよ」と言っていた祖父の言葉が、いやにはっきりと思い出された。

海の豊かさ

海面の上昇により海に沈んだ街に住み続ける男に会ったことがある。彼は古いショッピングモールの屋上で暮らしていた。日中は魚と泳ぎ、夜は星を眺める生活で、彼の生活は海を中心に回っていた。不便ではないのか、という私の問いに、「利用じゃない、共存がしたいんだよ」と彼が照れ臭そうに笑っていたことを今でも覚えている。

陸の豊かさ

深い森の奥で太古からの伝統を受け継ぐ部族出身の人と話す機会があった。「私たちは幸せでした」と彼は流暢な英語で語った。森が切り開かれ、帰る場所を失った彼らは近代文明への適応を余儀なくされた。もともと数十人にも満たなかった部族で、昔の暮らしや文化を覚えているものは、彼を含めて三人しかいない。もっとも、今では言葉はおろか、湖や木々といった彼らの生きた場所すら残っていない。

平和と公正

そこの村では、五つを迎えても出生届を出さないということが頻繁にあった。そういうわけで、村の人口は溢れかえり、ほぼスラムと化していた。生き残る秘訣はあるのか、と私が尋ねると住民は答えた。「ない。全ては天の導くままだ。」5人の子供たちのうちで、10年後に生き残っている子供は一人いれば良い方だ。些か割に合わないなと思ったが、その場で口に出すことなど、私にはできなかった。

パートナーシップ

「外交をしよう!」前触れもなく、聞き慣れない言葉が我が家に響いた。週末の昼下がり、大声を出した張本人の父以外は全員だいぶ引いている。また随分と突拍子もないことを言い出したな、とは思いつつも話を聞いてみると、「外交のように振る舞えば反抗期とか関係なしに話ができるのでは」と思ったらしい。とりあえず同調してみると、意外にも家族は乗り気な様子であった。そういうことで我が家には、「家族同盟」を結んだ独立国家が、現在四つ存在しているのである。

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